笑顔

2月になって、気分はとても上向き。面白いものだ。数日前まで1月で、1月は嫌い、2月も嫌いと言っていたのに、夕方5時半を周っても空が真っ暗でないのを自分の目で確認したら、2月は案外良いかもしれないと思いだした。そう言ったら相棒はけらけらと楽しそうに笑ったので、笑われた私も妙に楽しくなった。ふたりして顔を見合わせながら笑っていたらひとりの女性のことを思い出した。女性と言ってもまだ24歳の年齢よりももっと若く見える女の子で、今まさに女性へと成長しかけている、そんな感じの人。彼女と私は友人関係ではなく、知人でもない。彼女は昨秋、Via Santo Stefanoに店を開けた下着屋さんの店主で、私はたまたま其処に立ち寄ったが為に顔見知りになった客だ。私はイタリアの小売店が好きで、そう言いながらも大型店はそれなりに便利なので足を運ぶものの、結局何かを購入するとなると品定めをしているうちに小売店に辿り着く。大型店は日本やアメリカのように自由に見て周れる気楽さがある。だからボローニャに暮し始めた当時はそんな店があまりないことを窮屈に思ったし、そういう習慣を嫌ったものだ。ところがボローニャの暮らしに慣れてきて、それなりに話せるようになってくると、実は小売店はなかなか見逃せないことが分かり始めた。確かに、店に入る時に必ず店の人と挨拶を交わさなくてはならない窮屈さがあるし、好奇心だけで店に入るにはふさわしくないけれど、探し物がある時は店の人と言葉を交わしたり、探しているものを説明すると店員が勘を働かせて探していたものを棚から引っ張り出してくれたりするのが堪らなく楽しくなってきた。それで下着屋さんだけど、ボローニャには面白いくらい下着屋さんなる店が沢山あって、一体幾つあるのか知らないけれど、多分、靴屋さんと薬屋さんの次くらいに多いのではないかと思う。彼女の下着屋さんは店の面積がとても狭く、店構えも若い彼女にしては地味で質素。こんなに若い彼女がどうして店主かといえば、少し離れた所に彼女の母親が同じように下着屋さんを営んでいて、そんなことが彼女に店を開かせた理由だったらしい。初めて店に入ったのは昨年の冬の初め。彼女はまだ客商売に慣れていないらしく接客はぎこちないし、装いも若い彼女らしくない地味なもので店の経営の行く先を私はひどく心配でならなかった。それでも私は彼女の一生懸命な様子がとても気に入ったので、ぴったり私の好みではなかったが彼女が薦めてくれたものを購入して、着装して気に入ったらまた戻ってくるからと言って店を出た。それから数ヶ月経って私は店に立ち寄った。例の彼女が薦めてくれたものがなかなか宜しかったからだ。それで店の扉を押し開けると予想通り彼女が笑顔で迎えてくれたのだけど、私が覚えていた彼女ではなかった。変身、だった。前回後ろで雑にひとつに纏められていた長い髪は色んな工夫が施されて素敵になり、服装も彼女の年齢らしい溌剌さと、可愛さに満ちていて彼女の魅力を十分引き出していた。そんなに私は驚いた表情をしたのだろうか。彼女は一瞬恥ずかしそうな様子を見せて、戻ってきてくれて有難う、みたいなことを言った。あなたが薦めてくれた例のあれ、とても着心地が良かったから、あれをまた欲しいのだけど。明るい声で私がそう言うと、気に入って貰えてよかった、シニョーラは確か肌が弱かったんでしたよね、と言いながら棚から同じものをいくつか引っ張り出した。あの日の私の心配は無用だったらしい。彼女は少しづつ色んなことを学んで、立派に店を営んでいるようだった。この様子なら、既に常連客も居ることだろう。こんなに可愛くて賢くて、感じが良いのだから。それにおいている品物もシンプルで素材が良いのだから、きっと繁盛するだろう。何よりも彼女の笑顔はとても素敵だもの。また会いましょう。そう言って店の扉を引くと、背後から声が聞えた。用がなくても立ち寄ってくださいね。楽しみにしていますから。多分彼女は飛び切りの笑顔で言っているに違いなかった。相棒と顔を見合わせて笑っていたら彼女の涼しげな笑顔が瞼に蘇り、笑顔っていいな、そんな言葉がふと心に浮かんだ。

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コメント

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こんにちは。
ボローニャには靴屋さんと下着屋さんがたくさんあるんですか。嬉しいっ!拝見していて、まずはそれでニヤッとしちゃいました。
この夏、ボローニャに行く予定にしています(まだ予定なのが悲しい)。
仕事で自信がついたのか、素敵に変身した彼女。言葉も話せないのに、その彼女のお店に行きたくなったワタクシでした。
ホント、暮らしを楽しんでいらっしゃいますね。

2011/02/03 (Thu) 04:12 | 大庭綺有 #79D/WHSg | URL | 編集
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yspringmindさん、こんにちは。
yspringmindさんと同様で私も2月に入り何故だか気分が上向きになってきました。1月正月辺りはまぁよかったのですが、その後は何かヤル気がでず、、勝手に寒さのせいなんかにして!1月は、なんとなく過ごしてしまいました。。

笑顔!は大事ですよね。ホントそう思います。怒った顔を見るより笑顔の人を見るほうが、ずっと気分もいいですし、自分も気がつくと笑顔が少ないかも、、なんて思う時もあるので、気をつけないと!と思います。
笑う門には福来たる!とも言いますしね。。

2011/02/04 (Fri) 11:12 | ca_fior #79D/WHSg | URL | 編集
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こんにちは。確かにいい天気になりつつありますね。ドイツ、ミュンヘンは今日は快晴で、ここぞとばかり皆がお出かけムードです。
思い込んでたことがぱっと晴れて考えが展開する瞬間ってうれしいですよね。。
よい週末を。

2011/02/06 (Sun) 11:45 | inei-reisan #79D/WHSg | URL | 編集
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大庭綺有さん、こんにちは。そうですよー、ボローニャには靴屋さんと下着屋さんがたくさんあるんです。こんな町っていいですよね。下着屋さんの彼女は、多分仕事に自信がついてきたのだと思います。生き生きと輝いていていました。私が思うに下着屋さんの店主はどの店の人もとても感じが良いです。たまに店主が男性のみせがあって入りにくいですが。この夏はボローニャですか。それはいいですね。宜しかったら旧市街の真ん中で夕方の食前酒など一緒にどうぞ。

2011/02/06 (Sun) 16:13 | yspringmind #79D/WHSg | URL | 編集
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ca_fiorさん、こんにちは。笑顔は本当に大切です。ニコニコしていると、晴れ晴れした顔をしていると幸運が近寄ってくるように思います。逆にしょんぼりした顔をしていると幸運は近寄りにくいのかもしれませんね。だから私も今年は心身ともに元気で沢山笑って晴れ晴れした気持ちで生活しようと思っています。笑う門には福来たる。これはほなかなか真髄な言葉だと思います。

2011/02/06 (Sun) 16:16 | yspringmind #79D/WHSg | URL | 編集
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inei-reisanさん、こんにちは。ミュンヘンも快晴ですか。快晴の威力って凄いと思いませんか。寒くても外に気持ちが向くのですから。12月には小動物と化して冬眠してしまいたかった私も、ここ数日は寒さにも負けず外出ですよ。もう直ぐ春。うん、きっともう直ぐ春になります。

2011/02/06 (Sun) 16:19 | yspringmind #79D/WHSg | URL | 編集

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