ボローニャの冬

私が初めて迎えたイタリアの冬はとても寒かった。もっともその途中で私はボローニャからローマに移り住んだので、初めての冬の経験はたったの半分と言ってよかった。ボローニャで迎えた冬の寒さといったら無かった。友人知人がこぞって、あなた、もっと暖かい装いをしないといけないわよ、と私に注意を促したものだ。私はそれまで冬でも太陽と青空に恵まれることの多い、ボローニャに比べたら格段に過ごしやすい町に暮らしていたから、ボローニャの冬への準備が全く出来ていなかったのだ。それで大急ぎで暖かいウールのコートを入手して、やっと周囲の人々を安心させることに成功した。初めてのボローニャの冬の印象は、少し寂しいものだった。いや、私が寂しかったからかもしれない。私にはまだ心を開いて話せる友達が、この町には居なかったから。私には相棒が居たが、相棒ひとりだけだった。ある冬の日、私はバスに乗って旧市街へ行った。当時私は田舎に暮らしていたので、旧市街へ行くのもひと苦労だった。何しろ家から停留所まで徒歩でゆうに30分かかったし、其処から旧市街へも小一時間掛かったからだ。吹きっさらしの中でバスを待つのは辛かった。でも、そうまでしてもバスに乗って出掛けたかった。そうでも無ければ私は此処に埋もれてしまうような気がしたからだった。平日の旧市街は思いのほか人が居なかった。同じ平日でも春や夏、秋には賑やかな人の声が聞えてきたのに。ポルティコの下を歩く人達は皆無口で、コツン、コツンと靴の踵の音が聞えるだけだった。冷たい音が響き渡る、静かな冬の平日。私の寂しい気持ちと混ざってとても寂しい風景に見えた。今は少し違う。誰も話をしてなくても、靴の踵の音だけが鳴り響いても、あの頃とは違うものを感じる。皆それぞれが色んなことを思い、色んなことに直面しながら生活している、地に足をつけて。私も彼女も、彼も。そういうことに私が慣れたせいなのか、私が強くなったからなのか、それは私には分からないけど。
近いうちに雪が降るのかもしれない。雪が其処まで来ている予感、雪の匂いがするような。

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コメント

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2010/11/26 (Fri) 00:35 | # | | 編集
No title

鍵コメさん、初めまして。過去の記事も読破してくださったとは。ありがとうございます。まだボローニャを知らないそうですが、この場を通じて一緒に散策して貰えたらと思います。歩くのは身体に良いばかりでなく、色んなものが目の中に飛び込んできて私達に刺激と発見を与えてくれると思うのです。しかも見る人によって感じ方が違う。これって面白いと思いませんか。
リンク、有難うございました。これからもお付き合いお願いします。

2010/11/27 (Sat) 17:59 | yspringmind #79D/WHSg | URL | 編集

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