この場所

雨の降らない週末。でも朝晩霧が出て街中が湿っている、そんな感じのボローニャだ。この時期特有の気候。もっとも、この時期と言ってもこれから冬が終わるまでしばしばこんな風なのだから、溜息のひとつもついてしまう。まだアメリカに居た頃、ボローニャへ引っ越すことに決めた頃、雑誌のページにこんな天気のイタリアの写真を見てちょっと郷愁が漂っていていい感じだと思ったのは何故だったのだろう。郷愁なんて感じないし、ましてやいい感じでもなんでもない。やはり空はからりと晴れ上がっていたほうが良いに決まっているのである。多分、私はそんな風に思い込んでしまったのだ。多分、古いイタリア映画の影響だ。さて、昨日はそんな中を歩き回って疲れてしまったらしい。たった2時間だけなのに。案外私の身体は自分が気がつかないだけで、休養を欲しているのかもしれなかった。夕方、観念してベッドに潜り込んだ。まだ夕食もとっていないのに。目を閉じたら直ぐに眠りの渦に巻き込まれた。夢の中で私はその日歩いた道を歩いていた。歩きながら考えたことを夢の中でも考えていた。ここを歩くのは二回目だ。17年前相棒と歩いたことがある。あの時私はここでどんなことを感じたのだろう。幾ら考えても思い出せないけれど、今こうして眺めてみると案外悪くないものだ。そんなことを。17年前にここに来た時は、まさかいつかこの町に暮らすとは思ってもみなかった。何年かに一度、家族を訪ねに来ることはあるとしても。人生とは自分が思ってもいない方向にいくことが多々あるらしい。私の人生がそのいい例である。それとも私が知らないだけでそういう計画が私の人生にはちゃんと組み込まれていたのだろうか。考えても答えは出ないが、答えが出ないこともあってもよい。夢の中で私は路地を歩き、気に入りの靴屋の店先を眺め、本屋で写真集を手に取り、カフェに立ち寄ってカップチーノを頂いてからバスに乗って家に帰ってきた。少しすると疲れがどっと出て椅子に座ってられなくなってベッドに潜り込んだ。そんな夢。私は懇々と17時間も眠っていたらしい。目を覚ますと日曜日になっていて、霧の向うにうっすらと太陽の姿が見えた。

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