鹿たちへ

ボローニャは町からちょっと車で外に外に走って行くと驚くような自然に出会う。例えばボローニャ旧市街からVia Santo Stefano からVia Murri、そしてVia Toscana、 途中からVia Nazionaleと名前こそ変わるがトスカーナへと続く長い道を走っていくと空気の匂いも色もボローニャ市内とは全く違う場所に辿り着く。たかだか20km行っただけで標高は500メートルになり、最近はそんなところにも家が沢山建つようになったが動物達が少し前と同じように暮らす、そんな場所。夏は涼しくて夜になると沢山の蛍が飛び交い、秋には辺りが黄色く染まり、冬が町よりもひと足もふた足も早くやって来て、雪が降れば家の中に閉じこもるしかなくなるそんな場所。そんな場所に気が向いたら直ぐに行けるのがボローニャの良い点のひとつだとボローニャの人達も口を揃えて言う。私達は町の生活も好きだけど、自然とのふれあいも好きなのだ。晩秋の暗闇で大きな猪に遭遇するのは怖いけど、早朝の丘の斜面に鹿たちが草を食したり飛び跳ねている姿を見るのは心が和む。鹿。そうだ、私達は鹿が好きなのだ。それなのに。昨日のボローニャの新聞にこんなことが書かれていた。ボローニャ県には現在1000匹以上の鹿が存在するそうで、多くなり過ぎたので猟師達に鹿狩りを解禁する、そして半分に減らすと言う。そんなことってあるのだろうか。それでは人間はどうなのだろう。一体どれだけ沢山居ることか。こんな山の方にまで家を建て、車をぐんぐん乗り回して空気を汚して。ずっと先に住んでいた動物達を追い出して。例えば鹿たちがその辺りの家の倉庫にこっそり侵入して保存していたじゃがいもや茄子のオイル漬けを食べてしまったというならば困ったものだと思うけど、別にそういうわけでもない。鹿が急に出現して近所の老人や子供を驚かしたとかでもない。そんな話は聞いたこともない。大抵鹿は人から離れたところに居て、悠々と自分の生活を楽しんでいるのだ。私達は上手く共存している筈なのだ。それなのに。ああ、嫌になってしまうなあ。人間は何にも分かっていないんだから。今朝、通勤途中に丘の斜面を2匹の鹿が楽しそうに歩いているのを見かけた。鹿を見るのが私の朝の楽しみなのだ。鹿を見た朝は良い一日になりそうな気がするのだ。でも、もう姿を見せてくれなくてもいいよ。猟師に捕まらないようにもっと奥深い森の中に隠れていなくちゃね。窓を開けて鹿に声を掛けてみたけれど、私の声が遠くに居る彼らの耳に届くはずもない。私の声を聞いた丘の草木が鹿に伝えてくれればよいと思いながら彼らの姿を後にした。

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