階段のある街

ようやくオペラ座の前に辿り着いた。此処からが旧市街。先ほど歩いていた辺りとは大違い。人の密度も急に濃くなり此処が観光の町ウィーンであることを改めて実感した。華麗な外装のオペラ座を横目で眺めながら地図を片手に歩き出した大通りのKärntner Str. 。しかし賑やかさに驚いて直ぐに脇道へとそれた。土地勘がない分だけ迷ったら手に負えない、そんな気がした。何しろ広いのだ、此処はボローニャとは訳が違うのだ。しかしそんな不安は直ぐにかき消され、立ち並ぶ骨董品店、古書店に吸い込まれていった。ボローニャにも沢山あるけれどウィーンは比較にならぬほどその手の店が多いようだ。足を止めては店を覗いてまた歩く。何時まで経っても先に進まないことにひとり苦笑しながら、しかしまた足を止める。もし私がこの街に暮らしていたら、飽きることがないに違いない。暇ですることがない日なんて存在しないだろう。何しろこんなに面白い店が連立しているのだから。と、そんなことを大通りから外れて10分と経たぬうちに呟いていた。gasse からgasse へ。路地から路地へ。ウィーンは不思議なことにちょっと小道に入り込むとひと気がなくひっそりとしていて、ここが観光の町ウィーンであることを一瞬忘れてしまう。多いのは骨董品店、古書店ばかりではない。教会とカフェと居酒屋も負けずに多く、そのどれもが印象的なのに心をときめかせた。そうしているうちに私はこんな所に紛れ込んだ。建物と建物の間に存在する階段。其処を日常的に利用する街の人々。ボローニャには決して無いその様子が珍しくて吸い込まれるようにして眺めていると、通行人に声を掛けられた。道に迷ってますか? そう訊かれて声の方向に顔を向けると学生らしいすんなりと背の高いなめし革のジャケットを着た女性が立っていた。どうやらこの街は雨が降って気温が下がるとこんな風に着込むのが常らしい。確かに今自分が居る場所は確かではないけれど、決して道に迷っている訳ではないのです。ほら。私はあの階段の具合がとても気に入ったのです。そういって指で示すと、彼女はウィーン旧市街にはそんな小さな階段が幾つも存在するのだと言った。彼女はどうやらウィーン育ちらしい。私にウィーンを好きかと訊くので、ついさっき着いたばかりでよく分からないけど凄く好きになる予感がすると答えると、ぱっと顔を明るくして良い旅行をと言って立ち去っていった。旅先の散策でこんな風に声を掛けられるのは嬉しいものだ。特に一人旅の場合は嬉しさの感じ方も一際大きい。私の中でウィーンの存在がどんどん膨れ上がっていくのを感じながら小さな階段を上がっていった。

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コメント

No title

いいなあ~、私もそこにいたい。こういう細い階段を見るとつい上らないではいられないのです。ところで英語はウィーンではどこでも通じるのですか?

2010/08/16 (Mon) 17:36 | september30 #79D/WHSg | URL | 編集
No title

september さん、私もこんな階段を見つけると上らずに入られません。ウィーン滞在中にこんな狭くて小さな階段を幾つも発見しました。ウィーンへは沢山の期待を寄せずに訪れましたが、この夏の旅先の選択は大正解だったと思うのです。

2010/08/17 (Tue) 10:58 | yspringmind #79D/WHSg | URL | 編集

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