夏の味

夕方家に帰ってきたらいい匂いがした。あ、この匂いは知っている。金木犀だ。と思いながら不思議に思った。はてな、まだそんな季節ではないけれど。そうして家の中を見回したところ、キッチンの隅っこに置き忘れた杏に目が留まった。置き忘れた、というのはこういうことだ。昨日八百屋の店の前を歩いていたら奇麗に色づいた杏を見つけて幾つか袋に入れて貰った。食べ頃のを頂戴ね。そう言って選んで貰った杏。冷蔵庫に入れて冷やしてから食べようと思っていたのに、うっかり忘れてしまった。それでなくとも食べ頃の杏が、一日中閉め切った家の中に置きっ放しだったものだから更に熟れてしまったようで、こんな風にぷんぷんといい匂いを放つことになった。しかし、知らなかったな。熟れた杏と金木犀の匂いがこんなに似ているなんて。ひとつ摘み上げ水道水で奇麗に洗い、両手で上手に半分に割った。美味しそうな果肉を確認して口の中に放り込んだ。うん、うん、美味しい。とびきりの夏の味がした。

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