山の匂い、樹の匂い

静かな日曜日の朝。暑くて寝苦しかったのに、あまりに静かなので寝過ごしてしまった。静かな筈だ。近所の家という家が留守らしく、どの家も日除け戸をきっちり閉めていた。いつもなら周辺に停めてある車の姿も無い。此処連日の暑さに辟易して、どうやら朝早くに皆町を脱出したらしい。標高200mの丘の町ピアノーロですらこの暑さだ。ボローニャ市内は一体どんなことになっているやら。午後も3時を回った頃、空が急に暗くなった。と思うや否や風が吹き始め、多分雨が降るのだろうと思い、テラスに干してあった大よそ乾いた大量の洗濯物を急いで取り込んだ。さあ、準備は万端、いつでも降っていいですよ、と空に向って合図を送ったが一滴の雨も降らず全く残念だった。そのうち空はまた晴れ渡り、先程よりも更に蒸し暑くなった。夕方6時半を回った頃、相棒と家を出た。行き先はトスカーナ州との境方向で、しかし州境よりもおよそ20km手前のロイアーノの町の中心から離れたところに暮らす友人の家だ。昨夕、友人から電話を貰って久し振りに会うことになったのだ。友人が暮らす辺りはそれでなくとも標高800mなのでピアノーロとは比べようも無いくらい涼しいが、どうやら雨が降ったらしく驚くほど涼しかった。土が雨に湿って山の匂いや樹の匂いがした。久し振りにこの匂いを嗅いだ。吸い込んだ匂いと山の冷えた空気が疲れた体内に染み渡って行くのを感じた。友人は元気だったが今年の夏休みは例年の様に3週間ではなく、1週間少ない2週間でがっかりだと言った。2週間で何処へ行けというのだ、と友人が言うので、2週間あれば色んなところへいけるではないかと幾つかの提案をした。確かに纏まった休みは長いほうが嬉しいが、2週間だって捨てたものではないぞ、と。友人とは長年の付き合いだが、こんなに元気が無い姿を見たのは初めてだ。そんなに2週間の休みが残念なのか。それとも何か他に悩み事があるのかだろうか。空がようやく暗くなってきたので腰を上げた。時計を見ると9時半だった。近頃は闇がやって来るのが本当に遅い。おかげで楽しむ時間が長くなって、その分睡眠時間は短くなるばかりだ。もう少し暗くなれば蛍が見れるから、と友人は言うがもう家に帰らなくては。明日からまたいつもの生活が始まる。暗くなり始めた山道を車で走る。生い茂る樹の上にふくろうを見た。ふくろうは幸運のシンボル。良いことがあるのかもしれないね、と言いながら先へ進むと左手の草むらに灰色の猫を見つけた。何処の猫だろうか。それとも山猫だろうか。少し行った右手に広がる丘の斜面に一頭の大きな鹿がいるのを発見し、その直ぐ先では伸びやかに育った樹の枝を急ぎ足で歩く大きなリスを見た。どうやら動物達は人が少なくなったこの時間になると安心して外に出てくるらしい。もう少し暗くなるともっと沢山の動物がこの辺りを徘徊するのだろう。特別良い事があった訳ではないけれど、とても良い気分の晩だった。山の匂い、自然を楽しむ動物達。そうだ。それでは来週も行ってみることにしよう。

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コメント

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2010/07/05 (Mon) 12:51 | # | | 編集
No title

鍵コメさん、お久し振りです。日本が蒸し・・・というのは分かりますが、雨が降ると豪雨・・・ とは。きっと雨が降った後は一気に涼しくなって気持ちが良いのではないでしょうか。
お住まいの辺りにカワセミやキジが居るなんて驚きですね。都会だけど環境保護されているのでしょうか。ボローニャ郊外にもキジは沢山居るのですが今の季節はさっぱり見掛けません。一体何処に潜んでいるのでしょうね。

2010/07/05 (Mon) 22:50 | yspringmind #79D/WHSg | URL | 編集

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