十字路の角

今週末は雨。そんな予報がもう何日も前から出ていたから、誰も期待などしていなかったのだ。第一、ここ数日の涼しさといったら驚くほどで、家中の窓を閉め切らなければならなかったほどだ。足首をさらして歩いていたら体中の節々が痛くなった。そう言ったら皆に笑われたけど、この天気の急変を馬鹿にすると大変なことになりそう、そんな気がする。それで今週末は雨だと聞かされていたから週末は家の中で過ごそうと考えていた。降ればいいさ。たまにはそんな土曜日も良い。そんな風に思っていたところ、昼が近づくにつれて空が明るくなり、濡れていた地面が乾き始めた。と言う訳で、明るい空に誘われて家を出て、ボローニャ行き96番のバスに乗った。旧市街を歩き始めているうちにこんな所に来た。Via delle Moline。ひょっとしたら前にも歩いているのかもしれない。でも初めてのような気もする。少なくとも私の記憶からすっぽり抜けている、そんな場所だった。長さにして僅か200メートルほどの短い通り。初めて歩く外国の町のようにわくわくした。いつもと同じボローニャの色、ボローニャの空気なのに。少し行くとVia del Borgo di San pietro に交わった。通常私達がBorgo San Pietro と呼んでいる道がこんな所まで続いていたのか、と改めて驚く。しかし十字路の角にあるカフェのせいでその驚きは直ぐにかき消された。La stanze と言う名のカフェだった。建物を外から見る限り、古くてしかもあまり手が入っていない、この界隈によくありがちな建物だった。しかし開放された窓や扉の外から美しいフレスコ画と彫刻が施された天井や壁が見えた。色彩で言えばかなり抑えた、かなり古いものであることがわかった。古いお屋敷であることは確かであるが、またもすると礼拝堂にも見えた。天井はとても高く6メートルはありそうだった。そんなカフェに入るのは足がすくむ。ひょっとしたら食前酒や食事を楽しむだけの場所なのかもしれない。その辺のちょっと気軽にカッフェ一杯、の場所とは違うのかもしれない。外のテーブルについてお喋りしている女性たちが居るにしても。そう思案していたところ中から店の女性がタバコを吸う為に出てきたので入り口の所で声を掛けた。すみません、このお店はカッフェ一杯でもいいのかしら。すると彼女は一瞬不思議そうな顔をして、そしてぱっと顔を明るくしたと思ったら鈴のような声で、勿論よ、お水一杯だっていいのよ! と言って私を中に招き入れた。別にカッフェを頂きたかった訳ではなかった。中をじっくり見たかっただけだ。ついでに店の人からこの建物が何だったのかを聞きだせるのではないかと思ったのだ。カウンター越しに若い女の子と話をしていた男性にカッフェを注文した。女の子はどうやら男性の恋人らしく、日曜日はどうする? でも、イタリアの試合があるじゃないか、と話をしているところだった。彼らの話に区切りがついたところでこの建物について訊いてみた。するとこの建物はPalazzo Bentivoglio と呼ばれていてBentivoglio 家のものだったこと、店に当たる部分は家族のために設けられた礼拝堂だったことを教えてくれた。Bentivoglio 家のことは何かで読んだことがある。イタリアの歴史にか欠かせない名家だ。そしてその礼拝堂のことも何かで読んだことがある。確か500年ほど前に作られたのではなかっただろうか。そこにこの店があるのか。そう思ったら今と昔、驚きと不思議が交差した。これは良い。こんな素敵な建物の中でカッフェを頂くもよし、夕方に友人と一緒に爽やかなスパークリングワインを頂くのもよし。また来る約束をして、親切に答えてくれたことに礼を言って店を出た。外に出ると夏らしい空が広がっていたが、6月とは思えぬような涼しい空気が立ち込めていた。

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コメント

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2010/06/20 (Sun) 11:51 | # | | 編集
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yspringmindさん、こんにちは。
ここ数日の涼しさ、というか寒さは尋常じゃないですね。パリは一気に冬になったような気がしますが「大陸の気候とはこういうもの」と、実感しました。北極から冷たい風がくるのでしょうか。今日は縮こまって家でサッカーの観戦でした。イタリアを応援していました。(リッピ監督が好きなので..)今日は惜しかったですが、まだまだ!応援しています。

2010/06/20 (Sun) 18:48 | TSUBOI #79D/WHSg | URL | 編集
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鍵コメさん、こんにちは。La stanze、ご存知でしたか。あの内部の素晴らしさを共有できて嬉しいです。あんな所でアペリティヴォするのは本当に素敵だと思いませんか。あのフレスコ画や彫刻、内部のすべてが模造でなくて本物であること、それはイタリアではごく普通の顔してあることですが、よく考えると凄いことだと思うのですよ。何しろ500年ほど前のもので、しかもそれが飲食店になっているなんて! Bentivoglio さんもびっくりと言うものですよ。と言うことで雨が止んだら是非お茶しましょう。連絡しますので待っててくださいね。

2010/06/20 (Sun) 22:27 | yspringmind #79D/WHSg | URL | 編集
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TSUBOI さん、こんにちは。今日は本当に涼しくて長袖の上にジャケットまで着て外にでました。そうでもしなかったら、あっという間に風邪を引いてしまいます。そちらパリも寒いようですね。しかし、大陸の気候とはこういうもの、とはなかなかうまいことを言うなあ、と思いました。それにしても酷いですね、今年の気候ときたらいつまで経ってもこんなで。とても損しているような気がするのですが如何でしょうか。サッカーはですねえ、今日のゲームには参りました。ゲーム終了後の静けさといったら、ちょっと怖いくらいでしたよ。

2010/06/20 (Sun) 22:34 | yspringmind #79D/WHSg | URL | 編集
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2010/06/21 (Mon) 13:22 | # | | 編集
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鍵コメさん、こんにちは。そうでしょう?こういう場所が飲食店になってしまう所がイタリアの面白いところです。普通の生活に驚くべき価値あるものが普通に存在して皆普通に受け止めている。そういう環境に居ることは一種の幸運だと思うのです。しかし礼拝堂ですからね。脱帽でした。

2010/06/21 (Mon) 23:03 | yspringmind #79D/WHSg | URL | 編集

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