良い変化

今日は土曜日。早起きした。平日ならばもう朝食を済ませている時間だが、いつもの土曜日ならまだ夢の中に居る頃だ。何か用があった訳ではないが9時前にはすっかり準備を整えて家を出た。ボローニャ旧市街へ行く96番のバスはがら空きだった。学生が乗る時間ではないし、普通の人は大抵まだ家でゆっくりしている時間帯だからだった。空いているバスに乗るのは気分が良い。そう思っていたところ、私が乗車した停留所から幾つか先で目と鼻の先にあるホテルの客と見受けられる人達が乗り込んだ。ざっと数えて20人は居るようだった。皆大人で年齢の幅が広い。イタリア人でないことが顔を見て直ぐに分かったが、果たして何処から来た人達なのか。耳を澄ますと聞いたことの無い外国語だった。恐らくバスに乗っていた人たち誰もが大きな好奇心に包まれていたに違いない。誰もが彼らが何処から来た人たちなのかを知りたくて堪らなかったに違いない。と、後部席から老いた男性の声が聞こえた。貴方達はどちらから来られたのでしょうか。その言い方がとても丁寧でかしこまっていて、しかも堂々とイタリア語だったので、あちらこちらから小さな笑い声が聞えてきた。案の定彼らはイタリア語が分からなかった。彼らは顔を見合わせて、どうする、どうする、とでも言うような表情をした。するとまた後部席から、しかし今度は年配の女性の声がした。同じ質問をしたが、今度は片言の英語だった。するとやっと答えが返ってきた。チェコです。プラハから来ました。バスの中に居た好奇心に膨れ上がっていた誰もが満足に満たされたのが分かった。面白いものだ。こういう気持ちは伝わるものでバスに乗り込んできた旅行者達の緊張が解けたらしく、どちらからとも無く話し始めた。もっとも言葉はてんで通じていないけれど、老人が老人同士、年配の女性が同じ年頃の女性と言葉を交わしているのを傍らから見ていて、ああ、こういう感じが好きなのだ。ボローニャは随分と変わった。私が来た頃みたいに外国人を警戒してじろじろ見ることも無くなった。今はこんな風に話しかける人も居る。多分イタリアがユーロ圏に入ったことで目に見えていた国境も目には見えなかった国境も取り除くことが出来たのだろう。ユーロ圏に入ってから貨幣がリラからユーロに替わり、おかげで大変な物価高でリラの頃は良かったなあと思うことが多いけれど、私達の心の中で小さな良い変化が生じたのだろう。バスが旧市街に入り、私はバスを降りた。ポルティコの下からバスの中を眺めると例の老人達が仲良く話しているのを見えた。良い土曜日の始まりだった。

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