花冷え

今朝テレビでボローニャ辺りは午後から雨が降ると言ったから、小さな折り畳みの傘を鞄に突っ込んで家を出た。決して寒くは無いけど何となく寒いような気がする朝。今日は何度も日本のことを思い出した。寒いような気がする日。確か日本にもそんな天気があった筈だ。新学期が始まってまだクラスに完全に馴染めないような、それとも馴染めたような感じの今頃。雨が降るでもなく陽が照るでもなく、しんしんと近寄るような肌寒い日。一番覚えているのはもう私が高校生か卒業した頃に行った遠足だ。私は特別何かに恵まれていたわけではなかったけれど多分両親からの愛情だけは充分あった、と大人になって随分経つ今頃になってそう思うようになった。何かにつけて私達家族は一緒に楽しむ時間を作った。私達家族は電車で隣町へ行った。駅前にはバス停があり其処からバスに乗ることも出来たくせに、両親は歩こうと私達姉妹を促した。歩いても歩いても目的地に着かなかったが、私達以外にも沢山の人達が歩いていたから、歩くのが当たり前のような気さえした。そうして一時間か二時間も歩くと大きな国立公園に辿り着いた。この時期の公園はつつじの花が満開でそれは子供の目に大変美しく映った。もしかしたら私達はこのつつじの花を見に来たのかもしれない、と思う程、長いこと観賞した。それにしても5月前にしては肌寒い日で、格好つけて薄着をしてきた私は何度も後悔した。歩いていた時には気が付かなかったが、こうして花を観賞していると4月の終わりにしては寒すぎると思って肩をつぼめて腕を摩った。今日は花冷えする。そう言ったのは母だったのか、父だったのか。花冷えという言葉がとても美しく響き、花冷え、と私は心の小さな手帳に小さな字で刻み込んだ。私達はそれから広い公園を歩き回り、静かで眺めの良い場所に腰を下ろして昼食を楽しみ、また花を観賞してから公園を後にした。帰り道はまた歩きだった。歩くのは好きな上に得意だったがそれでも辛かった。私は幾度もう歩けないと音を上げただろう。その都度意志の強い残り三人に戒められた。おかげで身体は温まったが、駅で電車を待つ間にまた寒さを感じだ。しかし今度はもう寒いとは言わずに、花冷えだからね、と大人ぶったことを言って家族を笑わせた。丁度今朝のような日だった。ボローニャに遂に雨は降らず、午後から太陽が顔を出した。人々は半袖姿。花冷えはもう終わりらしい。

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