看板

ボローニャが面白いのは華やかな大きな広場や大通りではなく、ちょっと道を入った辺りの新旧が入り混じった様子だ、ということに気が付いたのは何年も前のことだ。ボローニャは中世の頃に商業で栄えた町。当時はその富を塔を建てて表したので、現在はそのごく一部しか残されていないにしても歩いていると、此処にも、あっちにも、と高低様々な塔を見つけることが出来る。残っている塔はB&B や予約制のアペリティーヴォの粋な空間として使われていたり、店が入っている所もあれば家屋に変身したのもある。どれも外見は無骨だが、私からすればそれが実にボローニャらしくてとても気に入っているのである。先日Via Clacatura を歩いていた。Piazza Maggiore を背にして少し行くと左手に籠やハンガーを売る未だによく理解できないがそれなりに繁盛しているらしい店、右手に高級食器店があり、その先には数年前に出来た衣服の店。この店はこの辺りでは大変現代風。何しろ道を挟んで向こう側には今は閉鎖された旧食料品市場があり、閉鎖された建物の前には小さな小屋、大人ひとりがやっと中にいられる程度の小屋があって、ボローニャ郊外の町で養蜂業を営むおじさんが自家製のプロポリスや蜂蜜、ロイヤルゼリーを販売している。そんな雰囲気の中でこの店は大きなガラス張りのショーウィンドウに流行の服を飾っている。だから初めてその様子を目にした時は何だか可笑しくて笑ってしまった。まあ、人間というのは見慣れてしまえば何とも思わなくなるもので、今では誰もそれを変だとも何とも思わなくなった。それが当たり前のようにすら思えるのだから本当に不思議だ。それで店の前を通り過ぎようと思ったその時、視界の隅っこに何かが入った。何だろう。立ち止まって見回すと、それは綺麗なショーウィンドウの上に残された昔の看板だった。昔、此処はA.BARALDI という名の牛肉(bovine) と羊肉(ovine) を扱う肉屋だったらしい。いったい何時の時代に存在したのか知らないが現在もちゃんと看板が残っていて、もし肉屋の主人や息子、家族親戚がこれを見たらきっと嬉しくなるに違いない。そしてこの今風の洒落た店の人達にしてもまた、この古い看板を店のチャームポイントの一つにも思っているに違いない。そうして気にしながら歩いてみると案外古い看板が新しい店の上に大事に残されていることが分かった。この気持ち。こういう考え方。多分、私がボローニャを好きになった理由のひとつだ。

人気ブログランキングへ

コメント

No title

イタリア語が読めない人にとってはお店の名前だと思うでしょうね。
ちなみに僕は「carni」で肉だとわかったので良かったですが・・・・。

それにしても旧看板を隠さずにショーウインドウを製作した店主や職人さんらの粋を感じました。あ、でも作った後に「ありゃ?」ってなことだったかも知れませんね(笑)

2010/04/27 (Tue) 04:41 | ひろぽん #79D/WHSg | URL | 編集
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2010/04/27 (Tue) 12:49 | # | | 編集
No title

ひろぽんさん、確かにイタリア語が読めなければ其処が昔何の店だったか分かりませんね。でも少なからずとも店の新しい雰囲気と看板の古さには目が行くかも知れません。ボローニャの旧市街にはこんな風に昔あった店の看板をそのまま残している場所が沢山あります。完全に取り壊したり塗りなおすことはあまり無く、多分そういうことを大切にしているのだろうと感じています。

2010/04/27 (Tue) 22:57 | yspringmind #79D/WHSg | URL | 編集
No title

かぎこめさん、嬉しい言葉、有難うございます。こういう一言って心の糧になりますね。
ボローニャは北イタリアに含まれますが、ミラノや周辺の町とはいろんな面で違いますね。古臭いとか、野暮ったいとか、そういう言葉で片付けて貰いたくない、温かい表情があると思っています。ボローニャにはなかなか来れない鍵コメさんや他の方たちの、私の視線が捉えたボローニャの普通を少しづつ報告したいと思います。

2010/04/27 (Tue) 23:06 | yspringmind #79D/WHSg | URL | 編集

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する