2本の電話

数日前から体調が宜しくない。原因ははっきりしないが自分なりに分析してみたところ、多分風邪と春先のアレルギーと疲れとストレスが微妙に絡み合ってのことであろうことが分かった。おかげで折角の土曜日に寝込んでしまった。同じ週末にベッドに居るのも眠くてもう少しもう少しと言いながら眠るのと、体がぐったりして言うことを聞かないから寝込むのでは、天地ほど差がある。前者は甘くて心地よく夢のような気分だが、後者の方は何しろ思考がネガティブになりがちだから次から次へと悪夢を見る。実際大変な悪夢を見た。軟体動物に絡みつかれる恐ろしい夢だ。こんな夢は見たことがなかったので目が覚めた時は、助かった、と思った。出来ればもう二度と見たくないタイプの夢だ。1日半寝込んで今日の昼前にやっと起きた。体力はあまりないが毒気が抜けたような感じがして、またしても助かったと思った。外は曇り空。しかし外気は決して冷たくなく、もう冬は終わったのだろうと思わせるような空気が漂っていた。午後4時を過ぎた頃、電話が鳴った。うちで電話が鳴るのは珍しいことだ。いや、鳴っているのかも知れないが大抵外に出ているし、家に居る時もインターネットを使っていると電話が鳴らないのだ。ADSLをつけていないからだ。だからうちに電話を掛けて繋がるということは、かなり幸運と言っても良かった。それで電話の主は遠方に暮らす友人だった。時々こんな風に電話を掛けてきては長話をする。特別な話題はなくてまるでいつも会っている友人同士みたいな他愛のない話をする。久し振りなのだからもっと気の利いた話題は無かったのだろうかと電話を切った後にいつも思う。でも多分こんな風だから私達は友人なのだとも思う。互いの存在が大き過ぎず小さ過ぎず、丁度いい関係といった感じだ。病み上がりに友人からの電話は嬉しい、それが例え単なる偶然だとしても。まるで花を持って見舞いに来てくれたような気分、そんな感じ。ちょっと気分が良くなって溜めていた仕事を片付けた。そうして夕食の準備をしているところにまた電話が鳴った。さあ、今度はいったい誰だ。電話に出てみると、私の親戚の叔父さん的存在のアメリカの友人だった。この友人との付き合いは面白い。私とは20歳ほど離れているが色んなことに共感できて色んなことに同感できる同世代の友人見たいな存在で、時には私の知らないことを教えてくれたり忘れていたことを思い出させてくれる年上の友人で、私達はいつだって仲間なのだ。私が年をとることに躊躇した2年前の誕生日に、年をとるのではなくて年輪を増やすのだ、と教えてくれたのがこの友人だ。なかなかいいことを言うのだ。大抵は政治の話が好きなロマンチシズムとは無縁な山が好きな大男なのに、時には詩人みたいなことを口走る。何週間か前にも電話してきたが、丁度私も相棒も酷く悲観に暮れていたので、さあ、友人達は元気にしているのかな、と気になって電話をしてくれたようだ。ほんの少し最近体調が宜しくないことを話した。すると、そうそう、だから元気な時はちょっと位のことは目を瞑って、あはは、と笑い飛ばすといいんだよ。元気なんだからそれ以上素晴らしいことは無いじゃないか。そう友人は言った。暫く話して電話を切った後、ふと思い出した。週の初めのある晩、相棒が急にピッツァを作ると言い出した。相棒は料理が好きで、またちょっと真似できないほど料理の腕が良い。だから作って貰うのは嬉しいけれど、ピッツァでしょ。キッチンが粉だらけになるであろうことは嫌でも想像できた。しかし本人がこれほど張り切っているのだから、反論することも無いだろう。缶詰だけどサルデーニャ産の味の濃いトマトとナポリの水牛のモッツァレッラ、特上のオリーブオイル、それから冷蔵庫にあった生ハムの残りを載せて、テラスから捥ぎ取ってきたオレガノを上から散らしてオーブンで焼いた。そして出来上がったピッツァは本当に美味しかった。美味しい美味しいと言いながら食べたくせに、食べ終えた後の片付けにはうんざりした。調理台も床も小麦粉が散らばっていて、思いがけず床の拭き掃除まですることになった。ああ、だから嫌だ。ピッツァなんか作らなければ良かったのに、と文句を言いながら床を掃除した。相棒は笑いながらも大変恐縮した様子だった。そうだ、あの晩の夕食はとても美味しくて楽しかったのに、どうして文句を言ったかな。確かに後片付けは大変だったけど、あはは、と笑い飛ばせば良かったな。元気なんだからそれ以上素晴らしことなんか無いのにね。本日の2本の電話はどうやら今の私に必要だったらしい。繋がった電話が運が良かったと言うよりも電話を取ることが出来た自分自身が幸運だった。

コメント

No title

こんにちは。
コメントを書いたのはもう1年以上前になってしまったでしょうか…
yspringmindさんの19日のブログを見て「今年に限ってはそれよりも何処かへ行きたい気持ちが圧勝だ。」と気分も晴れやかそうでしたし、モカシンシューズが大好きなお便りにもほっこりさせていただいたところでした。
私も昨年からそして今年になってから益々どこかへ行きたい気持ちが募っています。
私の場合は日本の日常から離れ少なくとも1カ月以上はゆったりと、ぼーっと?でも異文化の刺激に触れたい、外国の人々と話してみたい(語学はまるで出来ないですが…笑)などと心底思っています。
年単位の長期滞在もいつか、まだ健康なうちに実行したいです(願望)
yspringmindさん、今日のブログではお身体の具合が良くなかったとのこと。眠りで少しは回復されたのでしょうか?

日本もいよいよ春の光で満ちてきました。

yspringmindさんのブログからもいろんな光を頂いています。
私もyspringmindさんが元気になるように小さな光を送りますね。ビーーッ(笑)

2010/03/22 (Mon) 05:33 | やまももの木の上で #79D/WHSg | URL | 編集
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2010/03/22 (Mon) 06:43 | # | | 編集
No title

yspringmindさん、おかげんはいかがですか?
早く雨がやんで、明るい太陽の光がさしますように。


2010/03/22 (Mon) 14:17 | topotopi #79D/WHSg | URL | 編集
No title

イタリアにいた時、ヒマを持て余している時間によく手紙を書いていました。それは、日本やほかの国に留学した友達や家族に。たまたま届いた手紙の時期が、その人の支えになれたと知った時とてもうれしかったことを覚えています。必要なものは必要なときにそうでなければならないかのように訪れるのかもしれません。私からもちっちゃい元気玉をボローニャに向けて送りますね♪

2010/03/23 (Tue) 08:37 | ゆきーな #79D/WHSg | URL | 編集
No title

やまももの木の上で さん、こんにちは。人生山あり谷あり。今のところ平地には縁が無いらしく、色んなことがup and down ですが、そんなときこそ気分転換に何処かへ行きたいですね。暮らしを離れて1ヶ月以上異文化の刺激に触れたい、というのには全く私も同様で、イタリアの外のどこかにちょっと暮らすように滞在したい気分です。健康なうちに色んな所を訪れて、刺激を受けたり発見したり、共感したりしたいです。
元気になる光、届きました。有難うございます。これからも時々思い出して送ってくださいね。

2010/03/23 (Tue) 23:54 | yspringmind #79D/WHSg | URL | 編集
No title

鍵コメさん、こんにちは。ご心配かけましたが、体調は奇跡の回復。回復が早いのはまだまだ若い証拠です。昨日より今日はもっと元気になりました。外も確実に春に向っているようで、丘は目に痛いような鮮やかな緑の草が生えています。
肉をミキサーでミンチしてハンバーグを作るなんてやりますね。確かに手間はかかりますが、美味しいのが出来たことでしょう。ミキサーを洗うことを考えると、うーん、頭が痛いけど美味しいものを作るって面倒臭い後片付けとセットなんですよね。それで明日はなに作るんですかー。(興味深々)
鍵コメさんも健康には気をつけてくださいね。

2010/03/24 (Wed) 00:02 | yspringmind #79D/WHSg | URL | 編集
No title

topotopi さん、こんばんは。元気になりましたよ。でも調子に乗ってまたダウンしないようにしなくては。雨が降る度に春に近づく・・・そんな感じのボローニャです。そんな情緒はいいから、もう一気に明るくて温かい春になって欲しいですね、正直な話。

2010/03/24 (Wed) 00:05 | yspringmind #79D/WHSg | URL | 編集
No title

ゆきーなさん、こんにちは。そうですね、ゆきーなさんが言うように必要なものってちゃんと必要なときに訪れるのかもしれません。最近の私は本当にツキから見放されている上に体調まで崩してしまい、やれやれ、と思っていたところなのですよ。ゆきーなさんからのちっちゃい元気玉、届きましたよ。有難う! これからもたまに送ってくださいね。

2010/03/24 (Wed) 00:12 | yspringmind #79D/WHSg | URL | 編集

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する