地図を持って歩く

旧市街のポルティコの下で地図を読んでいる若者ふたりを見つけた。地図を色んな方角にまわしながら、今自分達が居る場所を確認しているようだった。ボローニャは大きな町ではない。しかも彼らが居る場所はそれほど分かり難い場所でもなかったから、傍から見ていて可笑しく思った。そうして横を通り過ぎようとした時、若者のひとりが私に声を掛けた。すみません、今僕達は何処に居るんでしょうか。私は足を止めて、ここですよ、と指差して反対方向を向いていた地図をぐるりと回した。ここを真っ直ぐ行くと町の中心の二本の塔。そう説明を付け加えると、ふたりはそうかそうかと頷いてやっと謎が解けたと言わんばかりに嬉しそうな顔を上げた。ふたりは多分二十歳くらいのどこか別の町からやってきた学生風であった。彼らと別れてまた歩き始めた私は、自分がいつの間にかボローニャの散策に地図を持たなくなったことを考えていた。私は地図が好きだ。どの知らない町へ行くにも地図をポケットに入れて歩く。ガイドブックを携帯することは殆どなくて、広げてもあまり大きすぎない程度の地図を上手に畳んでポケットの中に潜めておく。元々方向感覚が良い。だから電車や車、飛行機の中で地図をじっくり睨んでいるうちに頭の中に地図のコピーが出来て大抵迷うことなく歩くことが出来るのだ。もっともローマに暮らした時は何週間も何ヶ月も地図を片手に歩いたものだ。あの町は広くて複雑。私の散策にはもってこいで、歩いても歩いても飽きることなく散策出来る町だった。ボローニャの町はと言えば、ローマほど広くも複雑でもない、しかし根を下ろして生活することで自分の足で自分の力で何処へでも行って何でもしなくてはならなかったから、私はいつも地図をポケットに入れていた。約束の時間に遅れないように、目的地に間違わずに辿り着けるように、と。ここで生活を始めた頃、色んな書類手続きや人と会う約束があった。相棒にいつまでもおんぶに抱っこが嫌だったから、自分で出来ることは自分でしたかったし、少なくとも自分にしか関係しないことで相棒を振り回すのも嫌だった。勿論ついてきて欲しいと言えば彼は喜んできてくれたに違いないが、生憎私はそういうお願い事をしない人間だったのである。それで一人歩きをするのだが、ボローニャの町はそれほど広くないくせに路地が沢山あって歩いているうちに分からなくなってしまうのである。何度通りすがりの人を呼び止めて、道を教えて貰っただろう。さっきのふたりのように地図を見当違いの方角にあわせている私に、親切な人たちが、ほら、こっち、と言って地図を正しい方角にあわせてくれりした。懐かしくて楽しい思い出だ。地図を見ないで歩ける便利さ。でも地図を見ながら町を探検する楽しさ、道に迷って得る親切な人々との出会いは便利さよりも大きい。いつの間にかボローニャ歩きに地図が要らなくなってしまった。道に迷っては地図を引っ張り出して立ち往生したあの日がひどく懐かしくなった。

コメント

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yspringmindさん、地図お好きなんですね。ブログ読んで思わずコメントを書いてしまいました。私も地図が三度の飯よりも好きで、初めての土地を歩く前、そして歩いた後、地図を頭の中に叩き込む、まさに自分の頭の中に地図のコピーが出来ると言うのは、すごくよく分かります。
なんだか読んでいてうれしくなりました。かえって、地図も見ずに知らない土地を人について、歩いていると、しまいに自分の中のジャイロが狂って気分が悪くなってしまうほどです。そう言えば、先日京都を旅した時に醍醐寺を探したのですが、地下鉄から上がってきたせいか、方向感覚がつかめず、お寺と反対方向に進み、地元のおじいさんに道を尋ねました。
道に迷うのも、また楽しいものでしょうか。色々な出会いもありますね。

2010/02/17 (Wed) 13:13 | may-green #79D/WHSg | URL | 編集
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おはようございます・・・・・
私は、地図みるのが苦手。というか方向音痴(まったくだめですねぇ)
反対に主人は、地図大好きですねぇ(笑)
まったく正反対。
もうまったく彼まかせです。
この頃は、細かい字をみるのもつらいし、運転中にナビも出来ません。(汗)・・・・・道を間違えても、寄り道しても楽しい発見があったりするから、それはそれでいいじゃないかと・・・・いい加減な私です。(笑)

2010/02/17 (Wed) 14:47 | mjmnomama #79D/WHSg | URL | 編集
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私も地図が苦手です。だから、迷った時は誰かに助けを求めるという他力本願力を発揮します。なぜか地図を読み解く力ではなく、いかに迷惑にならずスムーズに人に道を尋ねることができるかを研究しています。目的地の道筋だけならず、ついでに見どころやら何やら地元ならではの情報を聞き出そうという魂胆です。笑
ただ、道に迷うとすごくアドレナリンが出ている気がしてスキです。

2010/02/18 (Thu) 05:17 | ゆきーな #79D/WHSg | URL | 編集
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地図、、私も大好きでボロボロになった地図でもなかなか捨てられないんですよね、、、我々の部屋には地理の授業で使うような多きな地図が(アジア、オセアーニアとヨーロッパ全土が載っている)壁にでかでかと、、、

 将来はトムトム、ガーミンなんかが主体になっていくのでしょうね、、携帯電話に全て入って、、でも地図を開いて自分で探すあの楽しみをこれからも味わいたいです、、散策したいなあ、、、知らない街を、、

2010/02/18 (Thu) 20:34 | レオナルド #79D/WHSg | URL | 編集
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may-green さんも地図が好きですか。私の地図好きは子供の頃に始まってこれからも衰えることは無いようですよ。知らない町を知人友人にくっついて歩くと頭がおかしくなってしまいそうなので、まずは頭に地図を叩き込みます。そうすると単にくっついて歩いていても今時分がどの辺りを歩いているのかが分かって気分がよいのですよ。多分may-green さんもそうなのではないでしょうか。それでいて迷うのも楽しい。土地の人の親切はそんな時に感じるものですからね。

2010/02/19 (Fri) 23:56 | yspringmind #79D/WHSg | URL | 編集
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mjmnomama さん、こんばんは。地図駄目ですか。え、方向音痴ですか。私は方向にはかなり強いですがそれでも時々道に迷います。でも、面白いのは道は必ず繋がっていてちゃんと目的地に辿り着けることです。今のところ書き込まれた小さな字を読むことに問題は無いですが、そのうち地図みたいな細かい字を読むのが大変になるんでしょうねえ。今のうちに地図を堪能しておかなくては。ところで私、運転のナビは全然駄目なんです。

2010/02/20 (Sat) 00:06 | yspringmind #79D/WHSg | URL | 編集
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ゆきーなさんも地図が苦手ですって? だからいかにスムーズに人に道を尋ねることができるかを研究しているなんて、成る程、そういう考え方もあったのね、と感心しました。私は道を尋ねることはあまりありませんが、通り掛った人を呼び止めて色んな情報を引き出すのが好きです。特に旅先。リスボンへ行ったときは色んな人達と立ち話をしました。美味しい店を紹介してくれたり眺めの良い場所を教えてくれたり。親切な人が多いようです、あの町には。だから私はボローニャを歩いていて質問されると、あの時リスボンの人たちが親切にしてくれた恩返しに知ってることは喜んで提供するんですよ。

2010/02/20 (Sat) 00:15 | yspringmind #79D/WHSg | URL | 編集
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レオナルドさんが地図を好きであろうことは薄々感づいていました。私の本棚にも折りたたんだ部分が擦り切れて分解寸前の古い地図が幾つかあります。ぼろぼろだけど捨てられませんよ、私も。それからアメリカにいた頃、私も部屋の一面に大きな地図を貼っていました。時々前に立って地図を眺めては地図の上で旅行した気分になったりして。私はまだまだ紙の地図で頑張りますよ。A-2, B-1... なんて言いながら道を探すのが好きなんです。
私も知らない町を散策したくなってきました。

2010/02/20 (Sat) 00:21 | yspringmind #79D/WHSg | URL | 編集

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