友人と猫

冬の晴天は気持ちが良い。久し振りに空が晴れ渡っていると、ああ、空とはこんなに高いものだったのかとか、こんなに奇麗な青だったのかとか、春になって連日晴れの日が続くと忘れてしまうようなことを改めて実感しては感激する。今日の晴天はまさにそんな風だった。いつの間にか日が延びたらしく夕方5時を回っても空が明るかったので、相棒と山の方へ出掛けた。別に何をするでもなく、カップチーノを頂く目的でもなく。単に空がまだ明るいからという理由でだ。まるでシベリアに暮らす人達のようだ。太陽の光は宝物で、空が明るい時間は無駄なく満喫するという彼らのようだ、と思った。最近私たちはシベリアとウクライナ通だ。身近な所からそれらの情報が入ってくるのである。そればかりではない。週に一度の割合で夕食にウクライナ料理のボルシチも食することが出来るのだ。これは良い。特に寒い冬には寒い国の人たちが頂く野菜や肉、豆を5時間も煮込んだ温かいスープが嬉しい。それで、まるでシベリアに暮らす人達のようだと思いながら山へ向い、ふと思いついて山の友人を訪ねることにした。友人は元気だったが、金曜日の番に暖房が壊れてしまったそうでひどく着込んで膨らんでいた。そうでなくても気温の低い、先週の雪がまだ消えない山の中に暮らしているのに、暖房が壊れたなんて恐ろしい話である。何しろイタリアなのである。日曜日は勿論のこと、土曜日に修理に来る人など居る筈がなく、友人は月曜日に修理屋が来てくれることをただ祈るばかりなのだそうだ。何しろ寒いので私たちもジャケットを脱ぐでもなく、手袋も帽子も外さない。じっとしていると寒い。いったい何度あるのだろう。そう考えていると友人が赤ワインを頂こうと提案した。それは良い。赤ワインは血の巡りが良くなって体がぽっと温かくなる。グラスになみなみと注いで乾杯した。ところでマザニエーロはどうしたの、ちっとも姿を見せないけれど。マザニエーロとは友人が長いこと一緒にいる黒猫で、私とは特に仲が良い。長年の友と言って良かった。いつもなら私が来ると何処からともなく現れて、ちょっと、元気だったの? と足元にすりすりと寄ってくるのに、さて、どうしたのだろうか。すると友人が悔しそうに言った。暖房が壊れた晩からマザニエーロは家出した。でも分かっているんだよ。近所の家に居候しているってことは。自分だけいい思いをして。そう怒りながら笑った。ひとしきり話して、さて、そろそろ帰ろうかと外に出た。マザニエーロの姿はない。しかしどうやら私がここに来ていることは知っているらしい。私たちの車のボンネットからフロントガラス、車の屋根に向って泥んこの足で歩いたマザニエーロの小さな足跡がくっきりとついていた。凄い泥んこの足だったらしいね、と笑いながら暫くこのままにしておこうと決めた。友人の家の暖房が直ったら帰っておいでよ、と見えない姿のマザニエーロに声を掛けて山を後にした。

コメント

No title

yspringmindさん、こんにちは。
以前、黒猫を飼っていたので、黒猫の話には敏感な私です(笑)
童謡の「雪」でも「猫は炬燵で丸くなる・・・」とありますが、猫は寒さが苦手なのだと思います。でも好奇心旺盛なので、yspringmindさんの声や車の音が気になって、挨拶に来たのかもしれません。お友達の暖房が直って、マザニエーロちゃんが戻ってこられるといいですね。
ばけねこ

2010/02/09 (Tue) 01:51 | bake-cat #79D/WHSg | URL | 編集
No title

ばけねこさん、こんにちは。そうそう、そうでしたね。ばけねこさんは以前、黒猫を飼っていましたっけ。イタリアの迷信上では黒猫は不吉なもののひとつでありますが、私にとっては全然不吉どころか可愛くて仕方がありません。マザニエーロは長生き猫なんです。私が知る限り14年は既に生きていて、まだまだ衰える様子はありません。でもそんな年ですから暖房無しの山の生活は身にこたえるのかもしれませんね。もうそろそろ帰ってきたのではないか、と思っているところです。

2010/02/09 (Tue) 22:32 | yspringmind #79D/WHSg | URL | 編集

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する