何度目かの雪

この冬何度目かの雪が降っている。ボローニャに暮らすようになってこんなに雪が降る冬は初めてだ。初めは粉のようなか弱い降り方だった雪も夕方には辺りを白く包み込んで案の定町は渋滞に見舞われた。ボローニャは雪に弱い町だ。ちょっと積もっただけで町中が麻痺してしまう。降り続ける雪のなか、相棒が次から次へと文句を言いながら車を走らせる。そうだ、いい案がある。冬のオーストリアを旅していると思ってみたら良いのではないだろうか。そう提案してみたら、ついさっきまでしかめっ面で百も文句を並べていた相棒が、ああ、それはいいね、と言って急に機嫌よくなった。8年前の10月下旬のある日、私達は車でブダペストへ向った。オーストリアの南チロル地方を通過する所で雪に降られた。真正面から吹き付ける大きな雪片がフロントガラスにくっついてあっという間に視界が遮られた。これ以上先に行くのは無理だろう、そう言って途中の村で宿を取ることになった。それがGriffen という名の村であった。小さな、正直言って見所は何にもない村だ。だけど気持ちの良い宿と、気持ちの良い人々、それから美味しい黒パンを売るパン屋があって、私たちがブダペストへと車を走らせるときは少なくとも一泊はしたくなるのである。あの晩の雪は本当に凄かった。軽装だった私達はジャケットの襟をたてて車を降りると宿の中に駆け込んだけど、一瞬のうちに頭にも肩にも雪が積もっていた。宿と言っても地上階は居酒屋兼お食事処で、その上階が宿になっていた。大体小さな村で、友人達の誰に話してもそんな村は知らないというくらいマイナーな村なのだ。だから大抵部屋が空いているらしいが、その番に限っては隣の町で大切なサッカー戦があった為に部屋が一つしか残っていなかった。私達にとっては大変な幸運だった。そうでもなければあの雪の中を走り続けなければならなかったのだから。荷を降ろした後に勝利を祝う人々で賑わう店の隅っこにテーブルを確保して、温かい食事と店主が自信を持って薦めてくれた赤ワインにありつきながら予定外の雪が私たちをこの村に招いてくれたことを喜んだ。ボローニャに降る雪の中を走りながら、あのワインは美味しかったねえ、と独り言を言うと、うん、本当に美味しかったねえ、と返事が返ってきた。どうやら相棒もあの晩のことを思い出していたらしかった。雪の降る日はオーストリアを旅していると思えばよい。あと何度降るか知らないけれど、雪は嫌いだけど、寒くて堪らないけれど、そう思えば何とか乗り越えられそうな気がしてきた。

コメント

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2010/01/27 (Wed) 12:25 | # | | 編集
No title

鍵コメさん、冬の欧羅巴は思いのほか寒いのです。だから温かい食事は有難く、旅の途中ならそんなことですら良い思い出になるものです。いや、冬の寒さが厳しいから温かい食事が益々美味しく感じるのかもしれませんね。次のボローニャ訪問は家族全員で? 今から楽しみですねえ。

2010/01/27 (Wed) 23:43 | yspringmind #79D/WHSg | URL | 編集

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