雨降りのボローニャ

当然と言えば当然。何しろ数日前はクリスマスだったのだから。それにしてもカレンダーを見て12月も残りあと3日と知って驚いた。一年が終わるってちょっと感慨深い。それで今年はいったいどんなことをしたのだっけ。そう自問してみたら驚いたことに胸を張って私はこれをしたと言えるものが片手の指ほども無かった。いったい何をしていたのだろう。ぼんやりと過ごしてしまったことがとても悪いことに思えて、しょんぼりしてしまった。それにしても寒い。数日前の暖かいアフリカからの風は長く続かず、あっという間に真冬の風が戻ってきた。昼過ぎに客人たちが来た。最近こんな風に時々客人たちがやって来る。それは良いことではあるけれど、私は旧市街へ行きたかったのだ。何しろ冬休みに入ってから家にばかりいてうんざりしていたのだ。客人たちが去ったのは夕方4時を過ぎていた。それから雨も降り出した。いつもならこの段階で家から出るのが嫌になるところだ。しかし私の外出したい欲望は自分でも驚くくらい大きかったらしく、そうまでしても出掛けたいのかと相棒に言われながらボローニャ旧市街へと向った。ボローニャ旧市街につく頃にはもうすっかり暗くなっていた。雨降りも手伝って、人の姿も疎らだった。ボローニャの旧市街に師走の言葉は似合わない。慌しい様子はなく、閑散としていて寂しいと思った。勿論12月31日の晩にはPiazza Maggiore に驚くほどの人が集まり恒例のカウントダウンで賑わうことだろう。でも、少なくとも今日のボローニャは、ちょっぴり物悲しい雰囲気を漂わせていた。雨に濡れた町が橙色の街灯に照らされていた。確かに、こんな雨の日の夕方に私は何をしにきたのだろう、旧市街まで。誰に会うでもなく、何を見るでもなく、今日と言う今日は本当に何の目的も無くただただ彷徨うだけだった。ふと思い出して町の真ん中にある靴屋へ向った。いや、靴と鞄の店、と言った方が良いかもしれなかった。10日ほど前にもその店に行った。店は既に大幅割引をしていて、常連客と通りがかりの客で混み合っていた。私はこれまでにこの店の割引を利用して何度か買い物をした。この店の割引はごまかしが無いのでとてもお得だ、と思っている。それであの日、私は黒い上質の革で出来た丈の短いブーツを試したのだ。格好が良かった。ただ、強烈に欲しいと感じなかったので、ちょっと考えると言って店を出たのだ。私の買い物はいつもそうだ。これだ、と感じれば店の人も驚くほど直ぐに買うことを決めるが、感じるものがない時は幾ら素敵でも良いものでも買う決断に至らないのだ。なのにもう一度見たくなった。やはりあれはいいブーツだった、と、もう何日も考えていたからだった。ところが店の前に行くと驚いたことに店は閉店していた。閉店。完全なる閉店。つまり店が無くなっていた。大きなガラスのショウウィンドウには模造紙が張られて中が見えないようになっていたが、隙間から見える店内はもぬけの殻であった。そうか、冬のセールにしては早いと思っていたが閉店セールだったのか。気が付いた時にはもう遅い。ブーツどころか店ごと存在しなくなってしまったのだから。その現実を受け入れがたくていつまでも店の中を覗いていたら、背後で女性が声を上げた。え、閉店、閉店なの? 私は振り向いてゆっくり首を立てに振り、そう、閉店なのよ、と言った。私達は肩を並べて模造紙の隙間から暫く中を観察した。そしてどちらからともなく店の前から立ち去った。年末に店を閉めるのは寂しいなあ。そんなことを考えながら見た雨降りのボローニャの町は益々寂しそうに見えた。

コメント

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本当に寂しい感じのする雨降りの日ですね。
この一年、毎年同じ事ばかり言いますが、あっと言う間でした。
月日の経つのが早すぎて、時々悲しくなります。。
どうぞ、yspringmindさん、お元気で良いお年をお迎え下さいね。
新年のワインを開ける時、ボローニャの方に向かって乾杯しますからね!

2009/12/29 (Tue) 18:10 | camera-oscura #79D/WHSg | URL | 編集
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camera-oscuraさん、今日もまた雨降りでした。雨ってこんなに寂しい気分になったっけ? と思うほどしんみりした雨です。それにしても目に留まらぬ速さで月日が経っていきますね。この分だとあっという間におばあちゃんになってしまうかもしれません。でも新年から気分一新。お願いしますよ。新年のワインを開ける時、ボローニャの方に向かって乾杯しますのを忘れないで下さいね。

2009/12/30 (Wed) 00:29 | yspringmind #79D/WHSg | URL | 編集

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