ワインのある時間

この週末は色んなことをした。文字にして連ねたら大したことないことばかり、でも私にとってはどれも大切で意味あることだったように思う。週末になると天気が下り坂になる悪い習慣はどうやら直ったらしい。途中で雲行きが怪しくなったり夕方に湿度の高い雨の匂いのする風が吹いたが、それでいて一滴の雨も降らなかった。素晴らしいではないか。長い長い冬が終わった後の一瞬の春、そして初夏を迎えたボローニャ。寒がりの私ですら半袖を着ているのだから如何に好天気かが解かると言うものだ。初夏は良い。思わずスキップしたくなる。そうでなくても楽しい散策が更に楽しく感じる時期である。昨日の土曜日、珍しく早起きして家を出た。ちょっとした用事があったのだ。そう、全くのちょっとした用事。それは冬物をクリーニング店に持っていくという用事である。家の目と鼻の先に小さな店が一軒ある。それで昨年近いからという理由だけで色んなものを持っていったら80ユーロを超える大金となって開いた口がふさがらなかった。しかもである。引き取りは3ヵ月後なのである。それでもっとサービスが良くて手ごろな値段の店を探していた所、ようやく家から8kmの所に見つけた。何時見ても混んでいるのが玉に瑕。しかし混んでいるのは良い店の証拠ではないだろうか。と言うことで数々の冬の愛用品たちを車の後部席に積み込んでわざわざ8km先まで行った。案の定大変な混みようであった。私の前に12人もいる。私の番が来てやっと冬物を預けると、用事は終わり。これからは自由の時間だ。土曜日の楽しみのひとつの旧市街の散策に出掛けた。町は混んでいた。驚くほど混んでいた。しかしこれも良い季節の印しだと思えば悪い気はしない。広場にはジャズ音楽を奏でる若者達あり、人垣の真ん中に置いた小さな椅子の上に立って何かを論じる者あり、マリオネットを操る人あり。それらを少しずつ齧りながら広場を一周した後、人の居ない場所へ足を向けた。この辺りはもう何度も歩いている。何度も歩いているのにまた足が向くのは、私がここを大そう気に入っている証拠である。とてもボローニャらしい場所だと思う。特別なものはひとつも無いが、此処を歩いているとボローニャであることを深く感じる。壁の色もポルティコも。そんなことを感じるのは私が異国人だからだろうか。ボローニャに特別な思い入れのある異国人だからだろうか。ポルティコの下に連なる小さな店のショーウィンドウを覘きながら暫く歩いているうちに、お腹が空いていることに気がついた。時計を見ると、成る程、もうすぐ13時だった。さてどうしよう。そうだ、あそこへ行ってみよう。私が駆け込んだのはEnoteca Italiana だった。この店は有名で、ボローニャでワインというとこの店が真っ先に上がると言っても過言ではないと思う。ワインだけでなく、店の人の気さくなもてなしが人気の理由だろう。私が初めてこの店の名前を友人から聞いた時、友人は確かそんなことを言っていた。店には8人ほどの客が居た。この店には椅子がない。カウンターと小さな背の高い丸いテーブルが2,3個あるだけ。誰もが立ったままパニーノを頬張りワイングラスを傾ける。Buongiorno! と元気よく挨拶を交わした後、パニーノを作って貰った。柔らかいパンがいいの。生ハムは超薄切りにしてね。あ、チーズもね。好み通りに作って貰ったパニーノを受け取って爽やかなプロセッコを注文した。そんな私を、昼からワイン、しかもひとりで? と友人達は驚くけれど、大して珍しいことでも難しいことでもない。自分の欲望に正直に従う、それが健康というものだ。それに食事と共に頂くワインは食事を更に美味しくさせて消化を促す絶好の友である。ワインは良い。ワインがあると無いとでは人生の楽しみ方も違ってくるというものだ。まあ、これは全くの個人的解釈なのだけど。店の人や隣り合わせの見知らぬ人たちと話しながらの楽しい昼食となった。最後にカフェで締め括るとお喋り仲間に別れを告げて、また元気よく歩き始めた。

コメント

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おはよう~、
やっと時差ぼけが治りつつあります。(汗)
時差ぼけって歳と共に酷くなるんでしょうか?・・・・

今、頭がクリアになって、いろいろ気がつく事があります。
ボローニャに着いて一番に感じた事、”意外と大きな都会じゃないの!”
でした。・・・・
でもそれは、こちらのブログのフォトで勝手に自分で作ったイメージだったんですね。
建物にしてもポルテコにしてもほとんど人が写ってないでしょう?
あんなに人がたくさん歩いてるのに、と思ったの。

でも今、自分が写したフォトを整理してみると、ほとんど人ごみは、写してないのがわかります。(笑)

それから、ボローニャだけじゃなく他の街でも全然日本食のレストラン見かけなかったんですが?
そうなのかしら?・・・・・・・とぼんやり思ってます。

2009/05/18 (Mon) 14:50 | mjmnomama #79D/WHSg | URL | 編集
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ひょっとしたら私たちの寄ったエノテカかも知れません。Via Indipendenza からちょっと入った・・・
隣で立ち飲みしていた女性と片言のイタリア語で話していたら、日本人と知ってことさらゆっくりと話してくれたその気持ちが嬉しくて、ワインをごちそうしたのを昨日のように覚えています。
「ワインのグラスが空になったとき、私の人生も空になる」 といみじくも言ったのは、実は私なんです。

2009/05/18 (Mon) 15:54 | september30 #79D/WHSg | URL | 編集
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mjmnomamaさん、こんばんは。時差ぼけは確かに年々きつくなる感じがします。おかげで長時間の飛行機が苦手になりました。(夏時間で1時間違うだけで1週間ほど辛いんですから。)
ボローニャは・・・え?大きな都会??? そんなことを聞いたらボローニャの人たちは鼻高々かもしれませんよ。確かに私が写す写真にはあまり人が写ってませんね。人の居ない時間帯や人通りの少ない路を好んで歩いているせいもあります。今はmjmnomamaさんがボローニャを訪れたときよりも更に賑わっています。信じられない話ですよ、人混みが苦手な私には。それでボローニャ、楽しめましたか。
日本のレストランは何軒か存在しますが街の中心の目立つ場所にはひとつもないというのがポイントです。ちょっと奥まった所に在るケースが多く、それでいてちゃんと人は入っているようですよ。

2009/05/19 (Tue) 19:18 | yspringmind #79D/WHSg | URL | 編集
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septemberさん、そうです、それはあなた方4人が確か何度も足を運んでしまったというエノテカです。店の人に、友人が店の窓を外から写したこと、それがとても美しかったことを話したら、とても喜んでいました。此処はとても居心地がいいですね。気取る必要もない、肩の力を抜いて楽しめる。ワインのグラスが空になったとき、私の人生も空になる・・・とは奥深いではないですか。脱帽。

2009/05/19 (Tue) 19:22 | yspringmind #79D/WHSg | URL | 編集
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はじめまして。今年3月末にボローニャに来ました。仕事でですが。一年間しか滞在できません。でも赴任先が火事でしばらく閉鎖だとか、大家さんがで電気代を払い忘れて停電だとか、上の階の改装工事で水道が使えないとか・・・いろいろあり、慣れない土地で右往左往していましたが、yspringmindさんのブログに出会って、その文章の美しさと何気ない内容の素晴らしさが、私に平穏と落ち着きと安心感を与えてくれました(今も与えてもらっています)。ありがとうございます。 旧市街で私が道に迷っているときに、もしかしたら近くを散策なさっているのかもしれませんね。

2009/05/20 (Wed) 07:26 | Via Valdossola #79D/WHSg | URL | 編集
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Via Valdossolaさん、初めまして、こんにちは。3月末にボローニャに来られたと言う事は連日の雨と春らしからぬ低温で閉口したのではないでしょうか。その上、着いて早々赴任先が火事だとか、大家さんが電気代を払い忘れて停電だとか、上の階の改装工事で水道が使えないとか、大変でしたね。そんなのはここに長く住んでいてもめったにあることではないんですよ。(あってはいけないといったほうが宜しいでしょうか。) 1年限定のボローニャ暮らしとのことですから、それにこれからが良い季節ですから思い存分満喫して貰えるといいなあと思います。小さな日本人が大きなカメラを持ってうろついていたら、しかもそこがひと気のない路地だったら、それは私です。声を掛けてくださいね。美味しいワインでもご馳走しますよ。

2009/05/20 (Wed) 14:45 | yspringmind #79D/WHSg | URL | 編集

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