5時間

雨になるだろうか、雪になるだろうか。そう、心配していたが今朝起きてみると意外に明るい空が広がっていた。薄曇り、そう呼ぶのがぴったりの空だった。そして1時間も経たないうちに眩しいほどの青空が広がった。今日は予定のない土曜日。そうだ、旧市街へ行こう。大急ぎで仕度をして、土曜日には30分おきにしかないボローニャ旧市街行きのバスに乗るべく家を出た。旧市街をこうしてゆっくり歩くのは久しぶりだった。何時も時間に追われての、いつもも時計を見ながらあまり遠くへ行かないように気をつけての散策ばかりだったから、何時に何処へ行く必要のない今日は思い存分歩くのだ、と心の中で何度も笑った。心の中で笑っていると顔も自然に笑うらしい。通り過ぎる人達が私の顔を見ては笑い返してくれた。土曜日と快晴とクリスマス前ということもあって街はとんでもない混雑だった。いつもなら人の居ないところへと逃避するところだが、今日はなぜかその混雑が、雑踏が楽しい。そんな事もたまにはあるのだな、とこの心境の変化に驚きながらpiazza maggiore へと向かった。piazza maggiore ではこんなものが催されていた。よく分からないが、こういうことだ。イタリアには沢山の研究者たちがいる、しかし研究する場が与えられない、研究費が少な過ぎる。ヨーロッパ中を見回してもそんな国はイタリアだけだ、イタリアは遅れをとっているぞ。とそんな感じの話である。デモ行進をするでもない。広場一面に研究者たちの顔写真を張って広場の隅っこで小さな演説がある。ところどころで風船の無料サービスがあったり温かいチョコレートが売られていたり。このちょっと風変わりな催しは快晴の土曜日に相応しく、誰もが広場に貼り付けられた顔写真をひとつひとつ眺めて楽しんでいた。ひとしきり写真を見て歩いた後、急に体力の残りが少ないことに気が付いて散策にピリオドを打った。それにしても、いくら楽しかったからといえ5時間も歩くことはないだろう。おかげで今夜はくたくただ。くたくただけど満足感があり、満足感があけどくたくただ。疲労で椅子から立ち上がれない。もう一歩だって歩けないよう。そう言ってはあれを持って来てくれ、これを其処に置いてくれと相棒に言いつける。最悪だ。そう言って相棒は先程から狸寝入り作戦に入った。

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