骨董象牙色

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                      昨年の今頃、私達は普通の生活をしていた。旧市街にて。


風が吹いている。其れは夕方か、それとも晩に雨が降るぞとの予告のような風。テラスには昨夕ペンキを塗った4枚の板が立てかけられている。其れなりの厚みも幅も長さもある板だから、そうそうの風で飛ばされたり倒れる心配はない。寧ろこの風は早く乾かすために好ましいくらいなのだが、それも雨が降り始めたら元の木阿弥。そういう訳で私は朝から外の様子が気になって仕方がない。

この家に暮らすようになって5年が経つが、未だに居間が完了していない。生活に困ることはないが、未だに二角が空いたままで殺風景。好みの家具に遭遇できず、かと言ってその場しのぎの家具を置くようなことはしたくない。何しろエレベーターが無いので、運び入れるのも運びだすのも体力と時間、そして誰かの助けが必要なのだ。それで未完了。5年も経っているのにである。以前の住まいで使っていたものの多くは、売ってしまった。良い買い手が付いたからというのもあるけれど、気分一新したかったのが一番の理由だった。ひとつの角には棚を、もうひとつの角には1800年代終わりくらいの骨董箪笥を置きたい。自分達が気に入るものを時間をかけて探す、そういうつもりだった。5年間、その空間が気にならなかったわけではない。幾度か此れはどうかというものに遭遇したが、結局決められないまま時間が経ってしまった。
数日前、外出禁止で有り余る時間に辟易したのだろう、相棒が地下倉庫から引っ張り出して来た。渋く光るステンレス製のとても重たい太い円柱が2本。棚の柱になる部分で、板を支える腕もついていた。見て直ぐわかる時代物だ。私はそれに歓喜した。遂に棚を取り付けるのか。訊けば随分前に古い店が閉まるにあたり、譲って貰ったものだという。70年代のステンレス製。かなり好みのものだった。置きたい場所に建ててみたら居間の印象がぐっと良くなった。骨董家具は大好きだが、其ればかりだと息が詰まる。だから照明器具とか棚とか、そういうもので息抜きするのがいいと思っている。板は、板はどうする。しかし、板は無いという。相棒がもう一度地下倉庫に潜り、探し出してきた4枚の板。同じ厚みで同じ幅の木材だが、色も違えば長さも違う。それで長さを切り揃えて、ペンキを塗ることになった。今はどの店も閉まっているから、あるもので済ませる、ということで再度地下倉庫へ行って見つけたのが一缶の骨董象牙色で、昨夕ペンキを塗ったという訳である。たまたま見つけた残りのペンキとはいえ、塗りあがった板は居間のレースのカーテンとの相性がとても良い。一歩前進。明日は棚を組み立てて、ずっと部屋の隅っこで待機していたレコードや本を整理したいと思う。
こういうことにエネルギーや思考を使って外出禁止によるストレス解消していれば、そのうち再び外の生活を楽しめるようになるだろう。

窓の外の菩提樹の枝にようやく美しい緑の芽が付いた。この枝に葉が茂ったら、隣の敷地の建物も見えなくなり、早い初夏の到来だ。風が薫る5月に胸を膨らませて、誰もが辛い今の時期を乗り切ろうと思っている。




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