2月になって

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2月である。昨晩は、栄養をつけるために腕を振るった。特別な材料を買うことは無く、冷蔵庫の中にあるものを使っての料理。あの材料でこの食事、と相棒が喜んでくれたのが嬉しかった。ふふん。私だってその気になればこのくらいの料理が出来るんだから。そう言って胸を張ってえばって見せたが、さて、おかげで冷蔵庫の中にはあまり大したものが残らず、今晩は大変な粗食になる予感。ピッツァでも注文しようか。

昨晩夕食時に相棒がふいに思いだした。ボローニャに暮らして初めて迎えた2月に、私がローマに居たこと。私にとっては運よく、彼にとっては運悪く、私はローマに仕事を得て1月早々ひとりローマに移り住んだ。ボローニャから逃げ出すようにして。街中の小さな教会の横に在る職場で、私は知らない人ばかりの中で不安だった。ただ、兎に角若かった。それが大きな助けになった。イタリア語はあまりわからなかった。けれど分からないと言いたくなかったのは、これから此処で彼らと同等に仕事をして行きたいと思ったからだ。知っている言葉を駆使して話し、人が話している時は聞き耳を立てて学んだ。少し経つと職場に時々顔を出す、同じ年頃の日本人女性が私に本を持ってきてくれた。彼女がイタリアに来た時に使ったイタリア語の教本だった。もう必要ないからあなたにどうかと思って。余計なおせっかいかもしれないけれど、と。彼女はそれまで何も言わなかったけれど、実は私が言葉で大変苦労していることに気付いていたらしい。本はかなり使い込んであり、彼女が真面目に勉強したことが窺えた。事実彼女は暮らして数年しか経っていないというのに大した語学力で、周囲のイタリア人達に少しの引けも取らなかった。此れをしっかり勉強すれば、いつか彼女のようになれるのかも。私は安易に思いこんで、有難く本を頂いたものだ。ある日は他の職場に長年勤めているという、年配の日本人女性が差し入れを持ってきてくれた。あなた、何時も頑張っているわねえ、と言って。誰からか私がボローニャから仕事をしたいが為に独りで飛び出してきたこと、ローマには友人らしい友人が居ないことを聞いたらしく、ちょっとそこまで来たからと言って、実は私の為に作ってくれたお弁当だった。此れには頭が下がった。話したことも会ったことも一度しかない彼女が、此処までしてくれたことに。それを見ていた同僚たちが、どうして彼女はあなたにこれほど親切なのかと驚いたのは、世間では気難しがり屋で多少なりとも敬遠されている人だったからだ。どれもこれも2月の話だ。新しい土地で、新しい職場で、大変な緊張と孤独感で一杯だった2月だったが、何時も何処かで誰かが見守っていてくれた。弱音を吐かずに済んだのは、こうした人達が居たおかげだ。24年も経った今頃、相棒にそんな話をしてみたところ、世の中にはそんなうまい話ばかりじゃない、優しい人達に囲まれて君は随分運が良かった、と相棒が言ったのが心に沁みた。当時のことを思いだせば小さな愚痴を言いたいこともあった筈だが、もう覚えていない。其れよりも感謝の言葉ばかりが思い浮かぶ。あれから私はあの本を使って独学したが、遂に彼女のレベルには到達できなかった。器の違いということか。それとも努力の度合いが違ったのか。どちらにしても彼女のおかげで今に至る。とりあえず仕事や人間関係で困ることはない。気難しかった年配の彼女は、どうしているだろう。随分な高齢になっている筈だけど、今もローマで元気にしているのだろうか。今も目を瞑れば、ちょっとそこまで来たからと言って其処の扉から入ってきそうな気がする。
ローマ、ローマ。私はローマが好きだ。あの頃無理をしてでもローマに行って良かったと、私は今も思っている。

ところで、この冬は雪が降らない。雨もあまり降らぬ。雨も雪も苦手な私にとっては嬉しいことではあるけれど、ちょっと待って、これでいいの? と頭の中を横切る。例えば冬に雪が降らないと昨夏の蚊が生き延びて次の夏は大量の蚊に悩まされる。例えば雨が降らないと塵が舞飛んで多くの病気をおびき寄せる。私の鼻のアレルギーもそうしたことから生まれたもの。その証拠に雨が降った日や翌日は調子が良い。其れから雨が降らねば植物や動物も困るだろう。近年の異常気象には驚いている。降る時には異常に降り続いて災害を呼び起こすほどなのに、降らなければ何時までも降らぬ。昔はこんなではなかったのに。自然が怒っているのだろうか。兎に角雨は嫌いだけれど、半日くらい降ってくれると有難い。窓の前に枝を広げる栃ノ木もそう願っているに違いないのだから。




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