靴が好き

DSC_0008 small


今日という日が嬉しいのは、金曜日だからだけではない。風邪を引いて熱が出掛けたのを上手く潜り抜けることが出来たことや、思うように進まなかった仕事が何とか片が付いたことや、近所の青果店の奥さんに美味しい林檎を選んで貰うことに成功したことや、それから、それから。それから仕事帰りに閉店ぎりぎりに駆け込んだ靴の修理屋さん。店主に頼んでおいた自分の靴を渡されて、見違えるように美しくなっていたのには感激した。もともと私は靴の手入れは良い方だけど、それにしても靴の底の修理を頼んだだけだったのに、8年も履き込んで多少なりとも傷んでいた黒のショートブーツが良く磨き上げられて戻ってきた。うわー、こんなに良くしてくれて、と思わず言葉が零れると、店主は照れながら頭を撫でて、必要だと思ったからだと言った。私が修理を繰り返しながら大切に履き続けているのが伝わったのだろうか。兎に角、此の一件は私を深く感動させた。ありがとう。ありがとう。料金を支払いながらいったい何度ありがとうを言ったことか。この店の存在を教えてくれた友人に感謝せねばならない。この店は大当たりだった。少なくとも10年は通うことになるだろう。

ボローニャの靴屋の多さと靴好きは有名で、80年代から90年代に売れた歌手、ルカ・カルボーニの歌にも出てくるほどだ。この歌を初めて聞いたのは私がアメリカに居た頃だが、何しろイタリア語が分からなかったから、そういう歌だと知ったのは私がボローニャに暮らし始めてからのこと、この歌を初めて聴いてから何年も経ってからのことだ。確かに当時のボローニャには沢山の靴屋があって、靴好きの私を歓喜させたものだ。中でも靴を注文に応じて作り上げる店については話を聞くだけでもわくわくしたが、その店が友人の叔父の店だと知った時は興味と関心と驚きが交差して笑いが止まらなかった。靴職人が身近な人の周囲に居るなんて。彼は何時も素敵な靴を履いていて、既製品ではない、彼の足に合わせて仕立てたものだと分かる靴を何足も持っていた。そのうちの一足は橙色の靴で、艶といい色合いといい、そして形といいより抜かれた素材としか言いようがなく、貴方は何時も素敵な靴を履いているが、今日の此れは飛びぬけて素晴らしいと褒めたところ、此れは僕の一番の気に入りなんだけど、僕の靴はどれも叔父の店で仕立てたものなんだよ、とのことだった。どういうことなのかと突っ込んで訊いてみると、旧市街にある小さな工房の、有名な店だとのこと。ボローニャに暮らし始めて5年も経った頃、一度興味があって店に入ったことがある。話を聞いてみたら一足を作るのに何か月も掛り、代金は私の手の届かないものであると知り、退散するしかなかった。成程、ならば分かる。しかしあの店はこんな素晴らしい靴を生み出すのかと、それ以来彼と会うたびに靴ばかりが気になって仕方がなかった。私の靴好きも、其処までは手が出ない。自分の足に合わせて靴を作るのは、母に連れられて自分の体に合わせて服を仕立てて貰っていた其れとは話が随分と違うと思った。自分の足に合わせて靴を仕立てるのは、私にとって手の届かない贅沢のひとつ。かと言って良い靴を諦める気はさらさらなく、大変微妙なのである。近年は既製品ではあるが手製の、柔らかい革を使ったものが好きだ。高価だが、しかし8年も履けるなら良い。足元は大切だから贅沢ではない。足が痛くては歩くこともできぬ。そうだ、足元は大切なのだ。

明日も天気になるらしい。旧市街に骨董品市はあるだろうか。アンティークのクリスマス・オーナメントを今年も幾つか購入したいと願っている。何か可愛いのを。毎年少し買い足すのが、この時期の楽しみだ。




人気ブログランキングへ 

Pagination

Comment

Post Your Comment

コメント:登録フォーム
公開設定

Utility

プロフィール

yspringmind

Author:yspringmind
ボローニャで考えたこと。

雑記帖の連絡先は
こちら。
ysmind@gmail.com 

フリーエリア

月別アーカイブ

QRコード

QR