静かに週末

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今日も快晴。暑さには辟易しているが、しかし快晴は有難いことである。朝からテラスの植物に水をくべて、今日も一日頑張れと声を掛ける。思うに植物も人間同様、暑さに参っているのではあるまいか。その中で抜群の元気を放っているのが赤いゼラニウムの花。昔、ゼラニウムがどんな植物か知らなかった頃、フランスの作家が書いた本に母が植えた庭のゼラニウムの花が、とのくだりに異国の匂いを感じ取ったものだ。その後、これがゼラニウムの花だと知ると、昔読んだフランスの作家と何かを共有できたような気がして嬉しくなったものである。うちには庭がないからテラス。テラスに沢山ゼラニウムの花を置いているのは、別にそれが理由ではないけれど。あの本を読んだのはまだ10代前半の頃で、夏休みで家に居た私は読みたいと思っていた本を片っ端から読む毎日だった。父が購入した本。私が購入した本。姉が購入した本。図書館で見つけた本。午後の暑い時間に、体が冷えるからやめなさいと促す母の言葉に逆らうように、私は無造作に床に寝転がって、本を読んだ。時折吹くぬるい風がレースのカーテンを膨らませると、まるでヨットの帆のようだと思った。当時の私は姉が家に持ち込んだ外国の音楽に夢中だったが、それでいて、父が昔から家に浸透させていた本を読むという静かな行為も大好きだった。

今日の様な週末に家で静かにしていると、色んなことを思いだす。人と異なることが好きだった10代の頃。だから、あなたは変わっているという言葉は、何よりもの褒め言葉だった。悪い娘ではなかったけれど両親からしたら、そして学校の教師たちからも扱いにくい存在だったに違いない。20代前半は世の中というものが分かりだして、急に大人になったように錯覚した。日本は急成長している時期で、もしかしたら誰もが錯覚していたのかもしれない。私は人並みに職に就き、お給料をもらって、ひとり暮らしもして、かと言って自立と言うには及ばず、毎週末両親のところへ行って良くして貰って、また立派な大人のような顔をして独り暮らしの生活に戻ると言った具合だった。今思えば実に甘い。大人気取りだったがひとりでは何もできなかった自分に、少々腹が立つほどだ。しかしそんな様子を母は見ていたらしく、アメリカへ行くことを決めたと報告した時に、今のあなたなら大丈夫だろうと言って背中を押してくれた。子供を自分の手元から旅立たせるのは、どれほど心配だっただろう。しかしそんなことは一言も零さずに、言いかえれば冷たすぎるほど私を突き放してくれた。戻るところがあると前に進めない娘のことをよく分かっていたのだろう、母は。今頃になってその有難さに気が付いた。もう28年前のことだが、そうしたことを思いだすたびに、私は冷たいふりして遠くから見守っていた家族に感謝が絶えない。そんな風にして行ったアメリカなのに、たったの4年で其処からボローニャに来てしまった。此れには沢山の悔やみに属する感情があるのだが、今思えば、なるようにして来たのだろう、遅かれ早かれ、この街に暮らす運命だったと思えばいい。ただ、此処に執着なるものは無い。自分で選んで住み着いた街でない分、実に淡白な感情といえばよいだろうか。確かにボローニャは暮らしやすいけれど。人生を旅に例える人が居る。ならば私の旅はまだ続くということだ。何かを求めてさ迷い歩くのもよし。何かを求めて別の地を目指すもよし。その時相棒が傍らに居たら嬉しいと思う。明日以降のことは分からないから、楽しいことから先にしておこうと思うようになったのは、一体何時からのことだろう。

目が痛くて仕方がない。私の目は光に弱く、特に太陽の光が目に負担が掛るようだ。幾度か検査をしたけれど、此れといった異常はない。ただ、目を守るために外出する時は夏冬問わずサングラスの着用を薦められた。医者に言われずとも夏場はサングラスを欠かせないが、それにしてもイタリアの日射しの何と強いこと。そして海へも行っていないというのに、何と肌が焼けたこと。さ、昼食を終えたら、今日は昼寝でもしてみよう。




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micio

こんにちは、yspringmindさん。
この写真のLe Stanzeは憧れのBarで、前回行こうと思っていて、なかなか時間が取れずに行けませんでした。
やはり、またボローニャに行かないと。

それにしても、なぜRoomsという名前なのでしょうね?
  • URL
  • 2019/07/08 04:20
  • Edit

yspringmind

micioさん、こんにちは。Le Stanzeは憧れのBarですか。え、まだ行かれてない?それはまた是非ボローニャに来て、立ち寄って頂きたいですね。で、名前ですが恐らく店の中に大小様々な幾つもの部屋が存在するからだと思いますよ。とても味のある店です。
  • URL
  • 2019/07/08 21:34

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