6月最後の日曜日

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風にあたり過ぎたらしい。昨夜から関節が酷く痛む。昔からこういうことがよくあって、気を付けなければいけないことのひとつになっているというのに、うっかりしてしまった。恐らく昨日の散策の時の、あの気持ちの良い風のせいだ。ああ、気持ちがいい風、などと言って街をふらついているうちに、すっかり身体が冷えてしまったに違いない。失敗したなあ、と言いながら家で過ごす日曜日。

25年前の、6月最後の日曜日に、呼び鈴が鳴った。まだアメリカに暮らしていた頃のことで、機嫌のいい界隈のフラットに住んでいた頃のことだ。当時、うちには様々な人が出入りしていた。出入りというよりは、ちょっと遊びに来ると言った方が正しいかもしれない。特に夕食時。19時を回る頃になると、大抵誰かがやって来た。それを私達は嫌だと思ったことはなく、むしろ愉快なことだと思っていた。それで日曜日の呼び鈴は昼前の訪問で、日曜日の此の時間に来るような友人とは、と首をひねりながら扉を開けると私の女友達が立っていた。私より幾つも年上でしっかり者の彼女。家は随分離れたところにあるので、ちょっと立ち寄ったのではなく、何か理由があって来たに違いなかった。それも電話では済まないような用事。どうしたのだろうかと思えば、彼女は私を心配して立ち寄ったのだと言う。何を心配したのかといえば、3日後の水曜日に控えた私と相棒の結婚。華やかなセレモニーはなく、市役所での簡単な誓いと手続きだけの結婚式だ。何しろ平日の変な時間なので出席者は後には私の親友にもなる、証人をしてくれる相棒の親友だけ。出席できない彼女は、準備がきちんと進んでいるのか、それが心配でうちに来たのだそうだ。大丈夫。なにも準備することなんてないのだから。時間に遅れないように市役所に行って、間違えないように、笑いださないように、誓いを立てて、サインをして、指輪を交換するだけなのだから。私がそんな風に応えると、彼女は、あなたは全く分かっていないと言うように首を大きく左右に振った。ドレスは、白いドレスは準備したの? えっ、白いドレス? それはもう喜劇のような会話で、未だに頭にこびりついている。白いドレスはないが、いつもは着ることの無い丈の長いワンピースを着るのだと言うと、彼女はそれでいいのか、というように私の顔を覗き込んだ。自分のクローゼットにあったという白い丈の長いドレスを持ってきたから着てみなさいと言う。彼女の言葉を有難く受け取って着てみたけれど、生憎長さもサイズも合わなかった。丈を詰めましょう、幅を詰めましょうと彼女は言うけれど、それでは次にあなたが着ることが出来なくなってしまうからと遠慮して、私は感謝をこめて彼女を抱いた。彼女のその気持ちだけで充分だった。折角の結婚式なのにと彼女は残念だったようだけど、私達の結婚は実にチャレンジのような軽い気持ちだったし、多くの好みが相違するふたりが果たして夫婦としてうまくいくのかどうかの疑問もあったから、白いドレスがなくても、参加者が居なくても、少しも悲しくはなかった。だいたい周囲の友人達の多くは、最後の最後まで、君たちが結婚するなんて・・・本気なのかい? と言っていたくらいの結婚だった。その度に私達は、あははと大笑いして、ホントにねえ、不思議ねえ、と言って周囲の笑いを誘ったものだった。そんな結婚も、もうじき25年を迎える。数年前に久しぶりに会った友人が、私達が今も夫婦だと知って、えっ、本当? と訊き返したけれど、本当のところを言えば当の本人たちが一番驚いている。こんなに続くなんて、正直思っていなかったから。6月最後の日曜日を迎えて、彼女のことや、白いドレスのこと、何時までも私達の結婚を信じなかった友人達のことを思いだした。ああ、可笑しい。人生なんて本当に分からない。

ところで日本代表チームがセネガルのゲームは好戦だった。体格と体力の違いで殆ど無理だと思っていたのに。頑張っているな、日本代表。私だって負けてはいられない。明日からの一週間も頑張るんだから。




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micio

こんにちは。
セレモニーに特に思い入れを持たないというところはyspringmindさんらしいと言いましょうか。
私は形式張った冠婚葬祭は、吹き出してしまいそうで怖いのですよ。

東京は蒸し風呂状態のようになってきました。ボローニャ大学の解剖室の涼しさと心地よさを思い出して、早くも冬の旅行に思いを馳せています。笑

yspringmindさんもお身体に気をつけて、元気に夏を乗り切ってください。
  • URL
  • 2018/06/27 14:26
  • Edit

yspringmind

micioさん、こんにちは。返事が遅くなってごめんなさい。
もともと私は結婚にあまり関心がなかったのではないかと思います。だから、結婚式にもあまり思い入れがなく、家族も自分の夢を追いかけてばかりいて結婚に関心のなかった娘が結婚すると言うことだけで充分だったと言って間違えありません。そういう訳で白いドレスも、友人が話を持ち出すまで、思いもよらなかった、という訳なのですよ。でも、あれが私達らしい結婚の形だったと思います。だからこんなに長く続いたのかもしれません。

ボローニャ暑いです。昨日から35度です。これから坂道を上るようにぐんぐん上がることでしょう。冬のボローニャも寒くてなんですが、しかし私はここ数年の間に冬のボローニャが好きになりましたよ。此の開放的な夏を差し置いで。今から再会できる日を楽しみにしています。
  • URL
  • 2018/07/01 12:18

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