白いブラウス見つけた

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今週は、強い雨が何度か降って、急に空気が冷たくなった。雨で空気が清められたらしく、日差しが強い。澄んだ日射しは肌に痛く、アスファルトの照り返しですら目に痛い。昨晩は夜風が冷たく、眠る時こそいつだって窓を閉めてはいたけれど、食事時ですら窓を閉め切らずにはいられなかった。まるで山のよう。山の夜風は冷たくて、外を歩く時は夏だってコットンのセーターやジャケットが必要だし、家の窓は閉めておかねばうっかり風にあたって風邪を引くか神経痛になってしまう。そういえば、山の友人達のところに足を運ばなくなって久しくなるが、どうしているだろう。急にやって来た冷たい空気に、驚いてはいだろうか。

先週のある夕方、旧市街に立ち寄った。何をするでもなく、ちょっと散歩を楽しむために。最近は夕方ともなると夕立になって散歩どころではないから、雨のない夕方は無性に散歩したくなる。それに、この明るい夕方を楽しまない手はない、という訳だ。背中に汗が一筋走るような、そんな暑い日だった。ふと思いついて通りがかりの店に入った。この店には一頃よく足を運んだものだが、いつの頃かから遠のいてしまったのは何故だっただろう。女性向け衣料品を扱う、小さくて、感じの良い華奢な女主人の居る店だ。初めて店に足を踏み入れたのは、多分12年前のこと。私は友人と一緒だった。寒い冬の仕事帰りに旧市街で待ち合わせをして、少しウィンドウショッピングを楽しんでから食前酒、または夕食を楽しむプランだった。友人は私よりずいぶん若くて、若いお嬢さんと言った雰囲気。お洒落が好きで、何時も女性的な装いをしていた。私は正反対のタイプで、お洒落は好きだがドライでシンプルが好きだった。それらは互いの性格に反映していて、だから私達が何故友人なのか不思議に思うことも時にはあったけれど、私達が互いに母国を離れて暮らす外国人の立場で、自分の足で立って生活したい女性で、そして美しいものが好きだという共通点があるだけで充分だったのかもしれない。さて、店に入ろうと言いだしたのは友人だった。小さな店内には、他の店には置いていないようなものが沢山あって面白かった。どうやらイタリア国内外から女主人が自分の好みで集めたものを置いているらしく、ベルギーやフランス、デンマークなどと言ったところの品札がついていた。勿論イタリアのものもあったけれど、へえぇ、こんなブランドがあるのかと驚かされたものである。そしてハンドメイドのアクセサリー。帽子であったりネックレスであったり。これらは女主人と交流のある職人たちの作品らしかった。私達は狭い店の中をぐるりと見せて貰い、礼を言って外に出た。何も購入しなかったが、そんな店が存在することを知っただけでも収穫に思えた。冬が終わり春になって初夏を迎えた頃、私は店を再訪した。この時期にはどんなものがあるのだろうと興味があってのことだった。するとなかなか良いブラウスやシャツがあって、それらを試着してみたら涼しくて素敵だった。素材にこだわっているのだろう、どの衣類もよい素材のものばかりだった。それで私はブラウスとシャツを購入した。それから夏と冬のサルディに、そして季節が入れ替わる頃に、店に立ち寄るようになった。見るだけの時が断然多い。しかし嫌な顔一つしない女主人とは、そのうちお喋りを楽しむようになって、店の外で偶然すれ違ったりすると、女主人が声を掛けてくれるようになった。私は目があまりよくないが普段は眼鏡を掛けていないために、向こうからやって来る人を認識することが出来なくて、声をかけて貰わねば素通りしてしまうことが多い。だからこの様に向こうから声をかけて貰えるのは、有難い話であった。さて、そんな風にしてこの店には年に数回通っていたが、パタリと足が遠のいたのは特にこれと言った理由はない。久しぶりに店に来た私に女主人は喜んでくれて、暫く顔を見せなかった間どうしていたのかと訊くから、元気だったけれど忙しくてと、当たり障りのない言い訳をして、お喋りをしながら店の中を見せて貰った。店には先客はふたりいて、どちらも常連客らしい。数枚のドレスを試着室に持ち込んで、試着するたびに外に出て、どうかしら、と店主に意見を求めるから、その度に私達の会話は中断せねばならなかったけれど。この店のドレスはとても独特。客がそれらを試着する度に、私は感嘆せねばならなかった。いつか私もこんなドレスを着こなせるようになるのだろうか。いいや、恐らくそんな日は来るまい。そんなことを考えながら手に取った白いブラウス。薄手のコットンでボタンもなければファスナーもない。被るタイプのそのブラウスは大変美しいシルエットで、美しいデザインだった。ようやく空いた試着室で着てみたら、涼しくて、そして素敵だった。居合わせた先客のひとりが、大変良く似合う、と褒めてくれたのは嬉しかったし、事実大変気に入ったが、じゃあ、と言ってすぐに手が出せるような値段ではなかった。それを見透かしたように、高価なブラウス、でも、それなりに理由があっての値段だと思う、と女主人が言った。うん、そうだと思う。でも少し考える時間が必要。そう言って、ブラウスをもとの位置に戻した。こんな時、人はどうするのだろう。一点ものだから、無くなってしまう前にと購入するのか。私は後20日もすれば始まるサルディまで待とうと思う。その日までブラウスが売れていなかったら運命のブラウスとして購入するとしよう。既に無くなっていたら、それも運命、縁がなかったということにしよう。何でも安易に手に入り過ぎると有難味がない。数年前にそんなことを経験して以来、そんな風に考えるようになった。さて、あのブラウス。私を待っていてくれるだろうか。

多忙な毎日。忙しいのは好みではないけれど、忙しい生活について行けると言うことは元気な証拠。私的にはかなり嬉しい。けれども今日は土曜日だから、ゆっくりのんびり。心身ともに癒されて、次の週を元気に迎えられたらいいと思う。




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HKmonkey

久しぶりに立ち寄ってみました。yspringmindさんの言葉を借りれば、元気だったけど忙しくて。いいですね。こういった小さなお店の主人と何気ない会話。機械的な大きなお店で買い物するのに慣れている私にとっては、なんとも心の中が暖かな気持ちになります。
  • URL
  • 2018/06/17 07:21
  • Edit

moonriver

白いブラウスって、おしゃれ感もあるし、素敵ですよね。

人との出会いと同じように洋服に限らず、モノを手に入れる時もご縁ですよね。

私は、きっとそのブラウス・・待っていてくれると思います!(^_-)-☆


さて、写真いいですね!気に入りました。光と影のコントラストが良い感じです。

  • URL
  • 2018/06/17 09:15

yspringmind

HKmonkeyさん、こんにちは。忙しい生活が出来るのは元気な証拠。お元気そうでよかったです。
私はイタリアに暮らすようになってから、小さい店で買い物をするのが好きになりました。店の人との会話を楽し目るからかもしれません。イタリア語が話せるようになって得た楽しみのひとつでもありまます。そう言えば、大きな店にはとんと足が向いていませんよ。
  • URL
  • 2018/06/17 20:22

yspringmind

moonriverさん、こんにちは。白いブラウス、好きなんですよ。白いブラウスは素材やデザインが勝負で、これだ!というのに出会うのは稀なのですが、それがこのブラウスでした。恐らく、あと10日ほどでサルディが始まると予想しておりまして、手に入ることを願っていますが、さて、どうでしょう。
今は日差しが強くて、写真を撮るのが楽しい季節です。
  • URL
  • 2018/06/17 20:25

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