開放的な夕方

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ここ数日、菩提樹の花が満開で、花の匂いに満ちている。それは家のテラスの目の前であり、職場からバスの停留所へと向かう道である。いい匂いだが、こうも満開で、こうも沢山咲き揃うと、匂いがきつくて堪らない。すっかり治ったと思っていた花粉症再発。また暫くの間、鼻がむずむずして困ることだろう。

今日は金曜日。そして明日の土曜日は祝日。ふと思いついて、仕事帰りに旧市街に立ち寄った。このところ、仕事を終えると家に直行ばかりしている。乗り換えの停留所で、家に直行するバスが旧市街に行くバスよりも先に来るからと言ったら、人は笑うだろうか。しかし事実そんなことが理由なのだから、仕方がない。今日は金曜日で明日は祝日。多少なりとも開放的な気分になって、案の定先に来た家に直行するバスを見送り、旧市街行きのバスに乗った。今日は雨が降らないらしい。こんな素敵な日に雨を降らせるなんて、そんな無粋なことは流石の私だってしませんよ、と快晴の夕方の明るい空が言っているかのようだった。いつもより少し手前でバスを下車して、ポルティコの下を歩いた。人々の装いはもう夏のようで、剥き出しになった若い女性の肩が眩しかった。2本の塔の下に腰を下ろす人々。数日前に通り掛かった時は予想外の雨に歩く人すらも居なかったというのに。何時も歩く道に面した数軒の店が、早くも割引をしていた。夏のサルディにはまだ早過ぎる。少しでも売り上げをだそう、少しでも多く客を得ようと必死なのかもしれない。ならば、と気に入りの店の前に行ってみたが、そんな張り紙はなく、やはり夏物の買い物は、まだひと月ほど待たねばならないようだ。それにしても、あとひと月で、そんな時期になるのだから驚きだ。まだまだ先に思える夏の休暇も、案外あっという間にやって来るのかもしれない。そんなことを考えながら少し散策して、散策の締めくくりにフランス屋へ行った。久しぶりのことである。店主は不在で、いつもの店の女性がいた。とても感じの良い人だ、彼女は。何時もならば赤ワインを注文するが、こんなに気候が良いと、赤ワインに手が出ない。そうだ、ロゼにしよう、と注文すると彼女は良いロゼがあるのだと言ってグラスに注いだ。ロゼというワインにはあまり馴染がない。しかし、こんな初夏の夕方にはロゼが似合う。薔薇色のワイン。昔、まだ私が幼かった頃、父と母がこんな色のワインを頂いていたのを不意に思いだして懐かしく思った。父と母は夕食にほんの少しワインを頂く習慣があった。今、私と相棒がそんな習慣があるように。気持ちの良い金曜日の夕方は、何時まで経っても暗くならない。路上に設けられたテラス席は満席で、店の上階でワインを楽しみたい人は、今日に限ってはあまりいないらしい。忙しくなり始めた彼女に美味しいロゼの礼を言って店を出た。また来週。そう、また来週。

今夜の月は卵に黄身のよう色をしている。低い位置に停滞して、窓の外から書き物をしている私をじっと監視しているかのよう。いや、そうではない。見守ってくれているのかもしれない。あの月は、若くして逝った私の大切な友人なのかもしれない。それとも私の優しかった父。そうだったら、どんなに嬉しいことだろう。




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