贅沢なこと

DSC_0017 small


毎日夕方に雨が降る。それも私が職場を出る時間をめがけて雨が降る。何故だ。と空に問うが返事はない。明日もこんなならば折角の金曜日の夕方が台無しだ、と空に文句を言っておいたから、多分大丈夫だろう。そうであって欲しいと思う。

相棒と出会ったのはサンフランシスコ。私は一生この街に暮らしたいと思っていたというのに、相棒に遭遇したことで人生の方向が変わってしまった。それが良いか悪いかは、私には分からない。ずっとあの街に居たかったことは確かだけど、今思えばボローニャと言う違う世界を覗くことが出来たのは案外幸運だったのかもしれないと思う。
相棒との時間は楽しかったけれど、しかし一番楽しかったのは、そして忘れようにも忘れられないのは、私がまだシングルで、生きることに夢中だった頃のことだ。27年前ほどのこと。私はそれを私の遅い青春時代と呼んでいるのだけど。何でも自分でしなければ先に進まなかった。一握りの友人と一握りの知人が居て、しかし誰に助けを求めるでもなく、ぎりぎりまで自分ですべてをしたかった。そう言う私に周囲の人達は、もっと人に頼ってもよいのだよと助言してくれたけれど、私は若くて元気だったから、何処までも突っ張って、何時も自分を奮い立たせていた。自分の力を過信していたのかもしれないと今は思う。そのために酷い貧乏生活もしたり、過労で倒れたりもしたけれど、そういうことまでもが楽しくて尊くて堪らなかった。生きている実感。多分そんな風に感じていた筈だ。相棒と結婚しても、私はやはり私だったから、今までのように生きることに夢中で居られなくなったことを少し残念に思ったことがある。それが互いを尊重しあうこと、共に歩むことのパズルのひとつみたいなものだと自分で気付くことが出来た私は、運が良かったのかもしれない。もし他人にそれを示唆されていたら、私は結婚というものを疎ましく思って、早いうちに放棄してしまったかもしれないから。
イタリアに来ると相棒は変わった。以前のように互いが外国人の立場では無くなり、相棒だけが水を得た魚のように自由に泳ぎだした。そんなことはないと彼は言ったけれど、少なくとも私にはそんな風に見えた。それを私は少し不公平だと長いこと思っていたけれど、実は本当に自由に泳いでいたのは私の方で、彼は家族のしきたりやら自国の風習に括り付けられて、身動きが出来なかったのかもしれない。それに気づいたのは、実につい最近のことだ。あなたは自由でいいわね、と人から言われて。そんなことはない、私はいつも窮屈な箱の中に詰め込まれているようなもので、と言い返そうと思ったところ、いいや、そんなことは一度だってなかった、私にはいつも選択肢があって、何時も自由に選ぶことが出来たのだ、と気付いたのだ。自分で感じていたよりも私は幸せだったのだろう。ただ、私がそれに気づけなかっただけで。それでいてシングルだった頃のことが眩しく思えるのだから、自分の贅沢加減に溜息が出る。

氷色と言うのが存在する。私の好きな色のひとつだ。クローゼットの中にある、夏場の薄手のコットンパンツは氷色。素材が涼しいばかりでなく、色も見ているだけで涼しくなる。今年の夏は暑くなるそうだから、涼しげなシャツを新調したい。氷色のパンツに良く似合うような。麻か綿の白いシャツを。




人気ブログランキングへ 

Pagination

Comment

moonriver

こんにちわ。
yspringmindさんの書く文章って好きです。エッセイストのよう!

ボローニャ、雨が多そうですね。

またサンフランシスコにも住んでいた、いろんなyspringmindさんが垣間見えてミステリアスですね(^_-)-☆
氷色がお好きなのですね、ちょっとめずらしい?ような気もしますね。個性的でいいとおもいます。私は赤とピンクが好きです。


  • URL
  • 2018/05/19 16:05
  • Edit

このコメントは管理人のみ閲覧できます
  • 2018/05/19 16:19

yspringmind

moonriverさん、こんにちは。今年のボローニャは、と言っても実を言えば昨年のことなど覚えていないので信憑性なしの発言ですが、雨が頻繁に降る5月です。毎日夕方になると雨が降り、何だか癖になってしまったかのようです。
ところで氷色と言うのはイタリアでは結構ある色でして、これは夏場にはなかなか魅力的な色と思う人も多いようですよ。氷色なんて、日本語にするとちょっと面白い響きですけど。それから好きなのは緑とレモン色。それでいてそれらの色は難しくてなかなか身に着けることがありません。赤やピンクは華やかでいいですね。そういう色を着こなすことが出来るのは素敵なことですよ。
  • URL
  • 2018/05/19 17:13

yspringmind

鍵コメさん、こんにちは。実は私若い頃は結婚してみたいと思ったことはなく、恋人どまりがいいなあと思っていました。人間は変わりますね。しかし私達の結婚、夫婦のスタイルは世間一般と少々異なっていまして、それだから今も続いているのかもしれません。人生はギャンブルがつきもの、とアメリカに居た頃私はそう思っていましたが、そのひとつが私達の結婚だったのかもしれません。
自分が見てきた世界から一歩外へ出る機会、その言葉が大変気に入りました。教えてくださってありがとう。
  • URL
  • 2018/05/19 17:24

Post Your Comment

コメント:登録フォーム
公開設定

Utility

プロフィール

yspringmind

Author:yspringmind
ボローニャで考えたこと。

雑記帖の連絡先は
こちら。
ysmind@gmail.com 

フリーエリア

月別アーカイブ

QRコード

QR