気の早い人達

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窓の外に浮遊する綿毛たち。この時期はポプラの樹が放つ綿毛が舞飛んで、人々を脅かす。別に身体に悪いものではないけれど、これが目や鼻に入り込むと大変なことになる。特に私のような花粉症、鼻炎を持つ人にとっては、天敵というほどの存在なのだ。かと言って、気温が上がれば窓を閉め切りなどにはしていられないし、折角の良い天気の日に外を歩かないのも残念過ぎる。だから勇気を出して窓を開け、勇気を出して外に出掛けるのだけれど、相手はとても手強くて巧みに目や鼻の中に侵入してくる。マスクをしたらよいではないかと日本に居る家族、そして友人知人は言うけれど、このマスクをした姿は少なくともイタリアでは実に奇妙な姿に見えるらしく、例えば悪質な病気もち、近寄らない方がいいほどの、と言った感じである。実際、私がマスクをした人を街中で見かけようならば、やはり同じように思うから、避けたい行為なのである。鼻をかむ回数が異常に多いこの頃。家にも職場にもティシュの買い置きがある。有難いのはこの国では、勿論、時と場合にもよるけれど、人前で鼻をかむことをあまり失礼とはされていない。問題は自分自身が恥ずかしいかどうかぐらいで、知らないうちに私も人前で鼻を平気でかむようになった。色々あるけれどその辺りがイタリアの柔和なところだろうか。良いところあり悪いところあり。国も人間も、同じように良いところと悪いところを備えていると思えばそれなりに、どんな国でも生活できるし、どんな人とも付き合えるということだろう。

5月になると周囲がそわそわしだす。夏の休暇が目の前まで来ていると言ったら、気が早いと言って笑うだろうか。でも、クリスマス休暇以来、纏まった休みを取ることの無いイタリアでは、待ちに待った夏の休暇と言っても過言ではない。勿論、その合間に復活祭があり4月末から5月初めを連休にする人もいるにしても。それに私達がここで言う纏まった休みとは、2、3日の話ではなくて10日以上、2週間以上のことを指す。私がイタリアに暮らし始めた頃は、夏と冬の休暇以外にも頻繁に休みを取る習慣があったものだけれど、今は時代が変わり、自分のポジションを保つためになのか、昔ほど頻繁に纏まった休みを取らなくなった。時代が変わった、そうとしか表現のしようがない。兎に角夏の休暇の存在は私達に大きな勇気を与えてくれる。どんなに忙しくたって、どんなにしんどくたって、嫌なことがあるにしても、でも、もうすぐ休暇だからね、と。飛行機を予約して、ホテルを予約して、何をしよう、何処を訪ねよう、と人が数人集まればすぐに話に花が咲く。昨年の夏はヴィエンナへ行った。夏のヴィエンナは明るくて、賑やかで、夕方が気持ち良くて、ぷらぷらと何処までも歩いたものだ。好きになると幾度も足を運ぶのが私の癖で、例えばサンフランシスコへは6度足を運んで7度目には暮らすために飛んで行ったし、ブダペストへは友人が居ることもあったけれど酷く気に入って、もう何度訪れたのか分からない。ヴィエンナもそうした気に入りのひとつ。昨夏が3度目だったが恐らく初冬に再び地を踏むことになる。私にはあの街の雰囲気がたまらなく魅力的だ。カフェにしても、美術館にしても。幸運なことにこの街では買い物欲をあおられることはあまりなく、兎に角歩き、兎に角見て、兎に角カフェの時間を堪能する。写真展にも行きたいし、夕方の食前酒の時間も素敵だ。とても贅沢で、とても豊かな時間だ。と、そんなことを言っていたら、君は夏を飛び越して既に初冬の休暇のことを考えているのかい、と相棒に揶揄われた。あはは、本当だ。もう初冬の旅を考えている。気が早いのはイタリア人ではない、この私だ。でも、楽しいことはいくつあってもいい。そういうことが生活や仕事をするエネルギー源となるのならば。それにしても再びヴィエンナに行こうとしていることに我ながら驚いている。それほど私がこの街にいれこんでいるなんて、当の本人も知らなかったことだから。

家の前の栃ノ木の花もアカシアの樹の花も終盤を迎え、新緑が目に痛いくらいだ。これでポプラの樹の綿毛が終わりを告げたら、初夏。薄着で外に出掛けたくなる季節になる。




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