近所のバールも悪くない

急に春めいたボローニャ。昨日まで風が冷たくて、ああ、冬がまだ居座っているのだな、と思っていたというのに。朝、大窓を開けたら、近所の人たちが軽装で歩いているのが見えた。彼らの姿を眺めながら、ようやく本当の春がやってきたのかもしれないと思った。数日前から身体がひどく痛む。どうしたものだろう。体調が悪いわけでもないのに。季節の変わり目のせいかもしれない。私はそういうのにとても弱いから。

昨夕、仕事帰りに近所のバールに立ち寄った。週末を迎える儀式というのかなんというのか、ちょっと食前酒を頂きたくなったからだ。少し前まではこういうことを旧市街のワインの店でしていたけれど、最近少し億劫で、足が遠のいている。かと言って家にまっすぐ帰るのが勿体ないような気もして、家のすぐ近くのバールに立ち寄ったというわけだ。店には数人の顔見知りがいて、軽い挨拶とお喋りを交わしながら、これまたのど越しに軽い白ワインを頂いた。ふと気配がして振り向いてみると、見慣れた顔があった。いつも犬を連れている彼女。ずいぶん前に彼女に頼まれてしていた土曜日の日本語のお喋り会を辞めてから、お顔を合わせることがなかった。別に避けていたわけじゃない。彼女と私の生活時間が交わらないからだった。それに私が近所のバールに立ち寄ることも少ないのも理由のひとつだっただろう。彼女の明るい表情にほっとした。彼女も私の明るい表情にほっとしたに違いない。土曜日の日本語のお喋りを辞めたころ、私たちは互いにいろんなことがうまくいかなくて思い悩んでいたから。彼女の犬、カテリーナは久しぶりに私を見て嬉しいようだった。幾度も私の足に絡み付いて、ねえねえ、元気だったの、と問うような顔で私の顔を覗き込んでいた。今度ピッツァを一緒に食べに行こう、と提案したのは彼女だった。彼女のことを内気で奥手だと思っていた。彼女は長いトンネルを抜け出したのかもしれない、そう思ったらなんだか肩の荷が下りたというか、心が軽くなったというか。たぶん私は、ずっと彼女のことを心配していたのだろう。私に頬を寄せて、またねと言って歩き出した彼女。後姿を眺めながら、よかったと思った。近所のバールも悪くない。たまには立ち寄ることにしよう。

暖房をつける必要のない夜。月の白い明かりが美しい。最近いいことがないと思っていたけれど、いいことは案外たくさんある。自分の気持ち次第なのだ。肩の力を抜いて、心をゆったりさせたら、いろんなことを感じることができることを最近知った。これも、いいことのひとつ。




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