春野菜がいい

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近所の庭に花が咲いた。咲いたのはプラムの花で、毎年この花がこの界隈の住人に春を運んできてくれる。大窓のガラス越しに眺めながらプラムの花とはなんと可憐なのだろうと思う。葉のつかぬ黒く細い枝に、うっすらと色のついた花を咲かせる様子は近所の人達に何かしらの感情を沸かせているに違いない。ふと視線をずらしてみれば、向こうのテラスにも花を眺める人がひとり。姿を見せぬ観客もいるはずだ。私のように窓ガラス越しに眺めている人達。

先日旧市街を歩いていたら、自然と足が食料品市場界隈へと向かうことに苦笑してしまった。冬が終わって明るい色の春物で飾られた美しいショーウィンドウではなく、いつも新しいものが無いかと楽しみにしている本屋でもなく、様々な種類の花が肩を寄せ合って並んでいる花屋でもなく、魚屋やパン屋、青果店が並ぶ食料品市場界隈である。まだ苺は早いらしく、店先に並んでいるのはスペイン産だ。スペイン産の苺はヨーロッパ中に出回るらしく、13年ほど前の春先にブダペストへ行った時にも見かけた。美味しそうな苺なので購入しようと手を出そうとしたところ、スペイン産なんだよ、と友人が言ったのを覚えている。友人はこのスペイン産という事実の裏に、国産じゃない、ということを含めて言ったのだと今は思う。ヨーロッパの人達は国産品に拘ることが多い。イタリアでは特にありがちなことで、苺にしてもさくらんぼにしても、オリーブオイルにしても。もう少し範囲を狭めれば、地元産、を好む傾向がある。地元の苺、地元のさくらんぼ。もっとも地元のオレンジと言うのはボローニャではありえないから、オレンジはシチリア産が良い、と言うことになる。イタリアは、まったく恵まれた国だと思う。何処へ行っても必ず美味しいものがある。私はアメリカで相棒に出会ってイタリアに来てしまったことを、この22年の間に幾度も後悔したけれど、考えてみれば食事のことで文句を言ったことはない。毎日イタリアの食事でも文句が出ない。その点から言えば、うっかり辿り着いた先がイタリアで幸運だったと言うことになる。それに素材を求めて買い物をする楽しさ。青果店でトマトひとつ買い物するだけだって色んな言葉が飛び交う。此れは甘みがあってジューシーで、これはサラダにすると良くて、これは煮込んだりオーブンで焼くと良くて。兎に角種類が豊富なのだ。私のように一目で外国人と分かる客が質問すると、喜んで色んなことを教えてくれる。食べるだけではなく、買い物をする楽しみがある。それが美しい靴屋ドレスではなく、野菜や果物。時には魚や肉。生活の手頃なところにこんな楽しみがある。そういう楽しみがあるイタリアは、とても私好みなのだ。もっとも、ボローニャに暮らし始めた頃の私がそう思っていたといえば、そうじゃない。此れは話を楽しめるようになってから得たものである。

春。春の野菜を食べよう、と、うちでは今、ちょっとしたキャンペーンが始まっている。冬の間に弱った身体を春の野菜で元気にしようという趣旨である。週末は結局寝込んでしまった。身体も気持ちも弱くなっている私は、春野菜に賭けているのだ。




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コメント

豆ごはん

今日 えんどう豆を見かけたので 今晩は豆ごはんです・ もうすぐ ソラマメも 大きくなって おいしくなるでしょう・
スペインの苺は 大きいけれど 美味しくありません・ わたしも 地物が出るのを 待っています・

2017/03/08 (Wed) 15:33 | kimilon #036/uE16 | URL | 編集
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2017/03/10 (Fri) 15:04 | # | | 編集
Re: 豆ごはん

kimilonさん、こんにちは。早々、えんどう豆が店に出る季節になりましたね。豆ご飯とは美味しそうですね。私はファンタジーが無く、さっと茹でたえんどう豆とベーコンをオリーブオイルでソテーしました。旬のものはそんな単純な料理でも、飛び切り美味しいですね。ところでkimilonさんもそう思いますか。スペイン産の苺はは赤くて大振りでおいしそうなのですが、味が無いと言うか、何というか。大味、と言うのかもしれませんね。イタリア産の、特にこのあたりで収穫される苺は、見かけはそれ程・・・なのですが、甘酸っぱくてとても美味しいのです。と、さりげなく自慢してみました。

2017/03/10 (Fri) 23:19 | yspringmind #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

鍵コメさん、こんにちは。何事もいつかは通過して、そんなことがあった、と淡々とした気持ちで思えるようになると思います。私が母親と会いたいと思ったとき、ですか。うーん、そうですねえ。分かりません。私の母はとても自信家で頑固者です。でも、私もその血を受け継いでいるので頑固者。ただ、違うのは自信など欠片もない、と言うことでしょうか。兎に角頑固者同志ですから、行き違いが会って10年会わなかったことがあります。つまり、私が10年日本に帰らなかったと言うことです。今は、分かりました。人間関係と言うものは歩み寄りが無ければ、どんな人間関係も上手くいかないと言うことです。血がつながる親子であっても同じことです。時に私たちは親子でありながら、私が日本を離れて26年になりますから、意思の疎通は普通の家族よりも難しいです。母親は私に話を聞いてほしい、聞いてくれる相手であってほしいことが最近分かりました。だから今はとても上手くいっていますよ。長く離れていた分だけ、私にとって家族はとても大切です。話がそれてしまいましたね。私は鍵コメさんの近くに居たら、色んなことをお話できるのに。

2017/03/10 (Fri) 23:35 | yspringmind #- | URL | 編集
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2017/03/11 (Sat) 06:24 | # | | 編集
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2017/03/13 (Mon) 18:56 | # | | 編集

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