狭い家

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今日も雨降り。月曜日に雨降り、これが一番苦手なパターンである。昨晩外の雨が気になって良く眠れなかったせいもある。起き抜けの濃いカッフェを飲んだのに、一向に目が覚めず、頭もさえなかった。こんな時、人はどんな風にするのだろう。と想像しながら、冷たい水で顔をざぶざぶ洗ってみたり、柔軟運動をしてみたが、やはり眠気が覚めず、眠気とぼんやりした頭を引き連れて仕事に行かねばならなかった。

3年前のちょうど今頃、私達は今住んでいる家を見に来た。私は広いアパートメントを探していた。たったの二人暮らしなくせに、私は広いスペースが欲しかった。相棒は、そんな私を夢見ているのではないかと窘めてばかりいたけれど、それでいて彼だって広いアパートメントを見に行った日は、私に全く同感だった。私がネットで酷く狭いけれど、この近くに良い物件がある、と言ったのを、相棒は鼻にも掛けなかったくせに、知り合いの不動産業者から見に行ってみてはどうかと勧められた物件があるから今度の土曜日に行ってみよう、と私を誘って行ってみたら、それが私が言っていた、”酷く狭いけれど良い”だった。私達は二番目の訪問者だった。先に見に来た訪問者は若い、結婚したばかりの夫婦者だった。妻の母親がスポンサーらしく、とても狭いけれどなかなかいい、専門業者に頼んで内装を変えたら良くなる、と不動産業者と別れ際に話しているのが聞こえた。其れを耳にして、成程、やはり狭いのか、と思ったものだ。さて、中に入ってみたら、本当に狭く見えた。そうだろうとは思っていたけれど、こんなに狭いとは。はーっ、とあまりの窮屈さにため息が出てしまった私に、不動産業者が其れを補うように言った。実際この家は狭いこと。それにむやみに壁に備え付けられた木材が、更に狭く見せていること。それから家具が多すぎること。何しろ老夫婦が暮らしていたら。そんなことを言いながら彼が雨戸をひとつ、そしてもうひとつ、そして・・・合計6個開けたところ、驚くほど明るくて、天井が高いこと、四方八方に樹があることが分かったのだ。面白いのは、相棒が狭い狭いと文句を言って、あれほど狭いのが嫌だった私が、この家が好きだと思ったことだ。この家にしよう、と言ったのは私だった。不動産業者と別れて家に帰ってきてすぐのことだったから、相棒はもう少しよく考えた方が良い、君は狭い家が嫌いじゃないか、と私を窘めたけれど、結局すぐに彼を不動産業者に送って、オファーした。今度は不動産業者の方が驚いて、もう少し考えたほうが良いのではないか、何しろ君の奥さんは広い家を探していたんだから、と言ったらしいが、其の僕の奥さんがこの家がいいと言ったのだというと、奥さんの大きな心変わりにもう一度驚いたらしい。家主のいい値より低く手に入れた。まさかこんな狭い家を手に入れるとは思っていなかった、というのが3年経った今も私達の笑い話。今でも時々思い出しては笑う。初めて見に来た時のショックは大きかったね、と。でも丁度いい。私達のような家族にはちょうどいい。シンプルに暮らすに丁度いい。私は時々思う。拘りも大切、でも柔軟な心も大切。時にはなる様になってみるのもいい。それから、風に吹かれてみたり、水の流れに流されてみたり。そうすることで見えないことが見えたりすること、聞こえなかったことが聞こえたりすることを、私はこの年齢になって気が付いた。昔の、激しくて、拘りが強い自分ではなく、今の、何でもありの自分が好きだ。肩の力を抜いて生活することの楽しさを、やっと知ることが出来た。

夕方、バスの乗り換えの時に、停留所の背後にある食料品店でオレンジを購入した。パキスタン人が経営するこの店に入ったのはこれが初めてだ。熟れて甘くて美味しいオレンジが欲しいというと、此れがいい、此れが絶対にいい、と勧めるので、薦められたのを6つ購入した。家に帰って袋から取り出してみたら、シチリアの、カターニャ産のオレンジだった。小振りだが、熟れていて、いい匂いがした。我慢できず皮を剝いて、そのひとつを口の中に放り込んだら、驚くほど美味しかった。わあ、美味しい、と独り言を言ってしまう程。明日、また店に寄ってみよう。また美味しいのを今度は10個ほど選んで貰おうと思って。




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コメント

こんにちは、yspringmindさん。
なるほど。

2017/02/08 (Wed) 13:47 | つばめ #- | URL | 編集

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