ラッテリアのこと

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新しい年。一年の始まりの朝は、何となく嬉しいのは、これを機会に気持ちをリセットできるからかもしれない。ゼロからの出発。そんな大げさなものではないにしても、今年はこんなことをしようとか、こんな風に生活してみようとか、それから昨年上手くいかなかったことは忘れて、気持ち新たにチャレンジしてみようとか。もしかしたら今日でなくても、そんな気持ちのリセットは出来るのかもしれないけれど、新年を機に心新たにするのは良いことだと思っている。
昨夜の花火の凄かったこと。零時を迎えてシャンパンの栓を抜いて祝い、遠くの方に上がる花火を鑑賞していたら、家の背後で驚くような爆音がした。何事かと慌てて反対側の窓へと飛んで行ったところ、大変近い空に大きな打ち上げ花火が。どうやら直ぐ其処の丘で誰かが花火を上げているらしかった。この界隈に暮らして何年かが経つが、直ぐ其処の丘で打ち上げ花火が行われたのは初めてのこと。きっと近所の人達も驚いたことだろう。ところで猫はこの花火の音が怖いらしい。奥に隠れて出てこない。昨年もこんなに怖がっていただろうか。

数日前、クリーニング屋さんに洗濯物を持ち込んで話をしている時に思いだした。今朝、牛乳が終わってしまったことを。近所の小売店は閉まってたに違いない時間だった。さて、どうしよう。それでクリーニング屋さんの女主人に訊いてみた。其処のバールで牛乳を売ってくれか、どうか。女主人は、うーん、と考えて多分駄目だと思うけど、訊いてみる価値はあると言った。そんな話をしているうちに、思い出したことがある。
ローマに暮らしていた時のことだ。一番初めに借りていたヴィットリオ広場近くのアパートメントをひと月で引き払い、ヴァティカン近くのプラティと呼ばれる界隈に住み始めた。ローマに住んで数か月経つが、私はまだこの街のやり方に慣れていなかった。ローマは同じイタリアであるにしても、色んなことでボローニャと違っていたからだ。今度のアパートメントは若いイタリア人達との共同生活だったから、情報のるつぼだったと言っても良かった。前に住んでいたところは家主である80歳を過ぎた老女と、間借りしていたポーランド人女性しかいなかったから、どうしても情報が偏りがちだったのだ。ポーランド人女性はもう何年もイタリアに住んでいるようだったが、カラーブリアに長く住んでいたらしくローマのことはあまりしないようだった。これを探しているんだけれど何処へ行けばいいかと訊けば、こちらの方が教えて欲しいくらいだわ、と言われてしまった。老女はここ何年も外に出ずに、必要なものは同じ建物に暮らす息子が調達してくるから、情報などある筈もなかった。いや、彼女は情報を持っていると思っていたに違いない。ただ、それらの情報ときたら20年も前のこと、それからずっと遡って戦争直後のことだったりして、私は途方に暮れるばかりだったのである。それで、プラティ界隈のアパートメントに暮らし始めて直ぐの頃、明日の朝の牛乳が無いことに気が付いた。ずっと向こうのスーパーマーケットに行かねばならないだろうか、面倒くさいなあ、と思っていたら、同居人が向かい側にあるバールへ行けばいいと言った。バール?バールで牛乳を買うの? 驚いている私に同居人はまるで老全だと言わんばかりに頷いた。そうよ、バールで買えばいい。聞き間違えかもしれないと思いながら、試しに行ってみた。牛乳下さい。するとバールのおじさんがカウンターの下の冷蔵庫から牛乳を取り出した。スーパーマーケットには名選んでいない銘柄の牛乳だった。翌朝、カフェラッテにしてみたら、大変美味しいので驚いた。この牛乳は美味しい。感嘆している私に後から起きてきた同居人は、当然さ、ラッテリアの牛乳なんだから、と言った。ラッテリア。一体なんだろうと調べてみたら、牛乳や乳製品を販売する店のことと分かった。前にあるバールがバール兼ラッテリアであることが分かったのは、そんなことがきっかけだった。それから私は牛乳を前のバールで買い求めるようになった。スーパーマーケットより高かったにも拘らず。ラッテリアだからチーズも置いていたのかもしれないけれど、その点の記憶はすっぽり抜けている。あの頃の私はチーズに今ほど執着がなかったからだろう。兎に角、前のバールがラッテリアを兼ねていたのは、本当に幸運だった。あのアパートメントに暮らしている間、私は美味しい牛乳を毎日頂くことが出来たのだから。牛乳、牛乳と言うが、子供時代は牛乳難い嫌いだった。毎朝牛乳屋さんが家に届けてくれる新鮮な牛乳を恨めしく眺めたものだった。両親が姉と私の為にと、とってくれたのに。今考えれば、有難いことだったのに。

それで、クリーニング屋さんの女主人が言うように、向かい側にあるいつものバールに行って訊いてみた。牛乳ひとつ、売って貰えないかなあ。店の青年は一瞬驚いて、え、牛乳? と訊きなおしたが、そう、牛乳なの、と頷く私に、切らしちゃったのかい? と笑いながら牛乳を出してくれた。このバールはやはりバールらしい。あのローマの店のようなバール兼ラッテリアではないらしい。
牛乳のことで久しぶりにこんなことを思い出して、急にローマが恋しくなった。そして私がローマの生活を好きだったことも思い出した。ボローニャに比べたら随分と広すぎる、何かがあると直ぐに道を塞いでしまって住民を困らせたローマ。街中が混雑していて、埃っぽくて、初めは私好みではないと思ったのに。

希望と喜び溢れる一年になりますように。今年もお付き合いお願いいたします。




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コメント

あけましておめでとうございます。
つばめです。
yspringmindさん。
ちょっと酔っ払いですが、決めました。
今年、会いに行きます。
yspringmindささんが、ご存知の絵について教えてくださいね。
娘も連れていきます。
いろいろ教えてくださいね。

2017/01/02 (Mon) 12:00 | つばめ #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

つばめさん、あけましておめでとうございます。今日は酔っ払いですか。お正月ですからね、ゆっくりして美味しいお酒を頂くのは良いことですよ。
今年はボローニャに来ますか、お嬢さんを連れて。私の絵の知識は大したことが無いのです。自分が絵を描いていただけなのですよ。だからこの絵が良いとか何とか、人の絵を評価することもできません。絵を描いている人は皆真剣なので、むやみに評価などするものではないと思っているのです。ただ、好きかどうかは言えますけれど。どんなお話が出来るでしょうか、こんな私に。でも、私に会いに来てくれるなんて、嬉しいですねえ。楽しみにしています。

2017/01/03 (Tue) 01:05 | yspringmind #- | URL | 編集
No title

明けましておめでとうございます!

いつも心から楽しみに拝読させて頂きながらも
めったにコメントしなくてごめんなさい。

新しい一年がyspringmindさんと相方様、そして愛猫ちゃんにとって
穏やかでお幸せな年となりますように!

どうかご自愛されて健康面でも快調な毎日を楽しまれますように!

今年もyspringmindさんの大好きなブログを楽しみにしています。
よいお年を!

2017/01/03 (Tue) 02:36 | るみこ #- | URL | 編集
Re: No title

るみこさん、あけましておめでとうございます。新しい年になって、気分爽快。ゼロからの出発を試みます。相棒、猫、私も健康第一をベースに、色んなことをしてみます。ブログは随分怠りがちですが、これからも時々立ち寄ってくださいね。今年も一年お付き合いお願いします。

2017/01/03 (Tue) 20:34 | yspringmind #- | URL | 編集

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