美味しいのを一粒

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寒い一日だった。昼間とてあまり気温が上がらなかった。仕事を終えて外に出ると、まだ17時半だと言うのに空はまるで夜のように黒く、街灯が寒々しくアスファルトの路面を照らしていた。気温は1度。寒いけれど、それでもまだ氷点下ではないと自分に言い聞かせて歩いた。帽子を目深に被り、革の手袋をはめているのに、首にはスカーフを巻き付けて膝程の長い外套を着ていると言うのに、それでも充分じゃないよと冷たい外気が耳元で囁いていた。旧市街で用事を済ませてバスを待っていたが、いくら待っても来なかった。そのうち痺れを切らして歩き始めた。バスが来ないのなら、歩いてしまおうと思ったのだ。歩いていなければ凍り付いてしまいそうだった。いつもより早歩きだったのは、少しでも体温を上げたいと思ったからだ。いつもならバスで通り過ぎてしまう道。歩いていると色んなものが目に飛び込んでくる。と、目に留まった店。10年程前に一度ジェラートを求めて入ったけれど、私には少しばかり甘すぎて、もう一度店の中に入ることは無かった。なのに気になっているのは、店はジェラートばかりでなく、チョコレートもあるからだ。私のチョコレート好きは今に始まったことではない。もう子供の頃から。でも、其れに火が点いたのは中学生の頃だ。ベルギーのチョコレートを食べてから、この美味しい世界から抜け出せなくなった。アメリカに居た時代、チョコレートに心を奪われることが無かったのは、これという美味しいものが周囲になかったからだった。沢山食べる必要はない。私は美味しいのを一粒頂ければ満足なのだ。チョコレート屋さんに並んでいる小粒の美味しそうなのを箱に幾つか詰めて貰って、午後に一粒堪能する。そういうのが好きなのだ。其れでボローニャにも当然気に入りの店があって、時々立ち寄っては箱に詰めて貰う。こんな私を相棒は、贅沢者と呼ぶけれど、私は少しもそうは思わない。ほんの一粒で満足できるチョコレートなのだから。それで、ジェラートは甘すぎて好みではなかったけれど、チョコレートはどうだろう。ガラス越しに見るチョコレートは、少し苦みがあるように見え、そのシンプルさが実に私好みだけど。美しい化粧箱に様々なチョコレートをつめて貰っている女性客。私は外から眺めながら、一度購入してみようと思う。ところでこの女性客は、こんなに沢山のチョコレートを一体どちらに持っていくのだろう。そんなことを気にしながら、店の前を離れた。

チョコレート。チョコレートは魔法。疲れている人を癒し、人々に笑みを浮かべさせる。冬の仲良しさん。明日にでも店に立ち寄ろう。楽しい週末の為に。




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コメント

こんにちは。
あったかそうな明かりのお店ですね。カーテン、ディスプレイの箱、ジャムの瓶、ぜんぶ無駄がない美しいディスプレイに思えます。
あたたかい明かりに、あたたかい人の接客、甘いこくのあるチョコレート。そうですね、寒い冬にそんな幸せがあってもいいですよね。
私なんて、スーパーにあった4粒か5粒が200円のリンツチョコレートを食べて、なんて美味しいんだと、これなら高いと思わず、たまに買ってみれば良かったと、今まで買いしぶっていたのを少し後悔していたところです。
ほんとうに自分の口にあった美味しいものを食べたとき、しあわせですもんね。

2016/12/15 (Thu) 01:57 | つばめ #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

つばめさん、こんにちは。この店、私からするとボローニャによくあるタイプの店ですが、そういえば日本にはないタイプかもしれません。日本の店はどれも近代的。日本に帰る度に思うのですよ。ボローニャの小売店は大抵こんな感じの、家庭的な感じと言ったらよいでしょうか。住んでいる人達の好みの違いなのかもしれませんね。
思うのですが、美味しいものは、ほんの少し奮発するだけで手に入るものなのですよね。そして美味しいものを堪能して幸せならば、こんな安いことはありません。今日は旧市街のいつも行く店にチョコレートを求めて行きましたが、残念、昼休の為に閉まっていました。

2016/12/17 (Sat) 17:27 | yspringmind #- | URL | 編集

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