良い一日

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9月がこんなに忙しいとは、誰が想像しただろうか。3週間の休暇中に溜った仕事が、波のように押し寄せた一週間だった。折角の素敵な9月を堪能する暇もなく週末を迎えた。しかし其れもまた、病気にもならずに週末を迎えることが出来たのだから、感謝すべき事だろう。
眠い目を擦りながら起きてみたら、もう随分な時間になっていた。しまった。鳴った筈の目覚ましのアラーム。知らぬ間に止めて、再び眠りに落ちてしまったらしい。猫は空腹を通り越して、うんざり顔になっていた。手早く朝食を終えて、簡単に家のことを済ませて家を出た。外には爽やかな風。こんな日は外に出るのがいい。

塔の下で人と待ち合わせをしていた。そして向かった先は、昔からあるオステリア。オステリアを日本語に直訳すれば居酒屋。昔はリストランテ、トラットリア、オステリア、そしてタヴェルナなどの名前でカテゴリーを分けていたが、今はあまり関係が無くなったように思える。例えばリストランテと言いながら呆れるような食事と驚くほど安っぽい雰囲気とサービスの店もある。オステリアと言いながら、雰囲気も料理もサービスも一流の店もある。そして一流の店が、あえてオステリアという名前を使いたがることも良くある話なのである。私が向かったオステリアは1400年代に建てられた古い歴史的建物の地下にある、昔はワインを貯蔵した場所。1600年代には店になって、詩人や芸術家たちが美味しいワインと食事を求めて集まるようになった場所。だから、オステリアという名前はその頃の名残であろう。昔の様子を上手に残した内装は、店に足を踏み込ませた人達を、一瞬戸惑わせるのだ。そもそも入り口自体が目立たないから、その場所を知っている人しか中に入ってこない。此処に知った顔で人を連れてきたが、実は私が此処に足を踏み込んだのはたったの二回目。それも一番初めはもう18年も前のことだった。本当に偶然その店に入ることになったのだ。人に頼まれて、其の店の場所まで連れて行ってあげただけだ。しかし行ってみたら、なかなか趣があった。それに金髪の巻き毛が美しい店の奥さんが親切だった。店の中を見せてくれて、ワインを一杯ご馳走しましょうなどとも言ってくれたが、急いでいたのでワインは丁重に辞退して、改めて食事に来ることを約束して店を出たのだ。その後、人に訊かれるとこの店の存在を教えたものだけど、私が店に食事に行くことはついになかった。店に足を運んだ知人達は、皆喜んでいたから良い店であろうことは想像出来たというのに。其の店に今日になっていってみようと思ったのは、本当に思いつきだった。何処かボローニャらしい場所。そう考えたら思い出したのだ、この店の存在を。美味しい食事は給仕の感じの良さと店の雰囲気で益々味わい深くなる。この店はその典型なのかもしれない。勿論人には好みというものがあって、この雰囲気が嫌いという人だっているかもしれないけれど。私にはちょうどいいい。ちょっと贅沢にひとりで食事をする時にもちょうどいい。一番客として入っておきながら、店が閉まった後まで食事とお喋りにふけっていた私と知人を追い出すこともない。そんなところも、この店らしいと思った。近いうちにまた来ますから。そう約束して店を後にした。

美しく焼けた肌を見せびらかすような人々。9月のボローニャはそんな人達で一杯だ。いつもの生活に戻ると忘れてしまいがちな愉しかった休暇のこと。まだ冷めない焼けた肌を眺めながら、楽しかった8月を思い出す。とんぼが飛んでいた。旧市街の真ん中に。秋は、案外直ぐ其処まで来ているのかもしれない。

良い1日だった。




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