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台風一過。運よく直撃をまぬかれた東京とその周辺。台風ってどんなだっただろうかと昨晩考えてみたが、台風が来ると両親が家中の雨戸を閉めたくらいしか思い出せなかった。直撃しなくて良かったのに、何故か肩すかしをくった気分。

浅草の話の続き。扇子屋だの履物屋だの染物屋だの、そうした店先を眺めては喜ぶ私に姉も嬉しそうだったが、姉がふと足を止めた。小さな、風変わりな店先の前で。風変わりに感じたのは、浅草らしくなかったからだ。何か昭和の、レトロな感じ。洋物が日本に流れ込んできた頃の雰囲気を持つ、優しい印象の店だった。店の前の小さな庭のようなところに置かれた女物の衣類を見て、どうやら洋服屋さんであることが分かった。いい感じだったので、中に入ってみることにした。
中にはすらりと背の高い、髪の長い若い女性がいた。感じが良くも悪くもなく、何か話しかけてくるでもなかった。狭い店内にはアンティーク家具が置かれていて、吊るされてあるものは一様に仕立てよく、特に縫製が丁寧で美しかった。素材は自然素材のもので、上質の、肌に気持ちの良いものばかりが使われていた。どれも面白いデザインで、まったく感心だったけど、特に姉はこの店のものが気に入ったようだった。そのうちのひとつは白ともグレーともベージュとも言えそうな、木綿のブラウスだった。長袖の、此れから大活躍しそうなもので、首元にはたっぷりとした生地が添えられていて、それを結ぶと実に華やかで洒落ていた。ブラウスを手にして私たちがあれこれ話をしているところに、それまで別に隠れていたわけではないけれど、ひっそりと椅子に腰をかけていた店主と思われる女性が私たちの前に現れた。年の頃は60歳以上。上背があって、グレーになった髪をふんわりと結っていた。レンガ色のボーダーシャツに、レンガ色のロングスカートを身につけた彼女は、その昔、ひょっとしたら何かの雑誌でモデルなどの仕事をしていたのではないかと思わせるような雰囲気を持っていた。見せる技を知っていると言うのか。兎に角姉は彼女の勧めでブラウスを試着することになった。ブラウスは姉に実に合っていて、姉は大変機嫌が良かった。姉は、着て老けてしまうような服は嫌いだといった。そして、この店は実に趣味が良いと褒めると、彼女がこんな風に言葉を返した。おばさんにならない服、そういう服を置いています。此れには驚いた。姉も私も世間では既におばさんと言われるような年齢なのだが、やはり何時までも若々しくいたい訳で、若すぎない、しかし粋なお洒落を目指している。ぴったりではないか。そう思ったのは姉も同じらしい。色々手に取ってみたけれど、やはりあのブラウスを購入することに決めたようだった。
おばさんと言う言葉はあまり好きではない。多分女性なら誰でもそうだろう。幾つになっても、女性。綺麗でいたい、綺麗にしようと思う気持ちを忘れたくないと思っている。その気持ちって大切。ええ、大切ですね。姉と彼女と私は、そんな言葉を交わし、店を出た。いつか彼女の年齢になった時、私が彼女のようでいられるかどうかは分からない。でも、いつまでも綺麗でいる努力をしたい。彼女のお洒落への姿勢を見習いたいと思った。そういえば彼女は言っていたっけ。店は35年続いていると。もともとは彼女の母親が始めた店なのだろうか。それとも彼女が若くして店を開いたのだろうか。

今夜はうっかりカッフェなどを飲んでしまい、おかげで目が冴えてならない。眠らなくては、と思えば思うほど目が冴える。さあ、困った。明日も朝から楽しい遠足が予定されていると言うのに。




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コメント

浅草

一時帰国を楽しまれている様子が柔らかな文面から
私の心に染み込むように伝わってきます。

特に浅草のお話には引き込まれています(笑
というのも、浅草が気に入り、昨年に続きこの10月の一時帰国でも
浅草のホテルを予約しており、yspringmindさん同様ゆっくりと
浅草散策をするのを楽しみにしています。

ブログに書かれてるお店・・・・ひょっこり発見出来るかな?と
また楽しみが一つ増えました。
もしかして写真の暖簾が目印となるかしら?

あとどれぐらい日本でしょうか?
夏の日本をそしてお姉さまとのひと時を存分に楽しまれていますように!

2016/08/17 (Wed) 23:17 | るみこ #- | URL | 編集

こんにちは。
粋なのれんですね。
さすが、東京浅草。
お姉さんがいていいなあ。私は長女なので甘えてみたいです。

2016/08/18 (Thu) 07:22 | つばめ #- | URL | 編集
Re: 浅草

るみこさん、こんにちは。愉しい毎日は飛ぶように過ぎていくものですね。今日が何日なのか、何曜日なのか、考えることも無くストレスフリー。それに加えて家族と一緒ですから、文句のひとつもありません。
るみこさんは10月に一時帰国ですか。それは素敵。私も何時の日か、10月か11月に休暇をとって日本に帰ってきたいと願っています。美しい時期だと思います。
その時期の浅くさ、どんなでしょうか。浅草は、何をするでもなく、ただ歩いているだけで愉しいですね。音を聞くだけでも恐ろしい花やしきのローラーコースター。あれはいつか崩壊するのではないかと睨んでいますがどうでしょうか。思い残すことがひとつありまして、今回は舟和に立ち寄ることが出来ませんでした。くくー。好物の芋羊羹。次の楽しみにしましょう。
ところでこの暖簾は、この話の店とは関係が無いのです。ごめんなさい。これは、たぶん、唐辛子の店か何かの暖簾です。話の店はそうですねえ、目印になるものはありませんが、金の山羊と言う名前でした。無知な私が“金の山ひつじ”と読んで、同行の姉をひどく落胆させました。
残り数日です。愉しい毎日もこの辺で終わらせるのが丁度良い。そんなタイミングです。

2016/08/19 (Fri) 06:56 | yspringmind #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

つばめさん、こんにちは。粋な暖簾でしょう?此れ、話に出てくる店の暖簾ではないのですが、兎に角粋だったのでカメラに収めておきました。浅草はいいですよ。何度いってもまだ見るものがある。全部制覇は無理。まあ、制覇する必要も無いんですけど。
姉はしっかり者。両親の期待を一身に受けて育って大変だったようです。次女の私は夢子さん。両親もあまり力をいれずに育てたようで、幾つになっても地に足が着きませんよ。ははは。

2016/08/19 (Fri) 07:03 | yspringmind #- | URL | 編集

すっと「おばさんにならない服」と表現する。 そこがおもしろいですね。
此方でよくのぞく店だと どうでしょう
多分、セクシーだとか新鮮とか そういう表現になりそう かも  笑

夏の日本は苦手で避けていましたが  浅草の記事を読ませて頂いて 
風鈴の音とか聞いてみたい気になりました  残りの日々を楽しんで下さ~い

2016/08/19 (Fri) 13:47 | すぷーん #EQkw1b1A | URL | 編集
Re: タイトルなし

すぷーんさん、こんにちは。私もそう思いました。おばさんにならない服。色んな服が在るけれど、こんな風に表現する服もあるのだなあ、と感心しました。
ところで私も日本の夏が苦手です。ただ、選択肢が無いので夏に返ります。希望は秋の、10,11月頃ですが仕事の都合がつきません。でも、夏もいいものです。蝉の声すら違って聞こえますよ

2016/08/19 (Fri) 16:40 | yspringmind #- | URL | 編集

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