蝉が鳴く、風が吹く。

DSC_0072 small


7月最後の週末。土曜日と言うのに辺りが静かなのは、随分多くの人達が休暇に出掛けてしまったからである。近所のバールでさえも常連客達は休暇らしく、見せる顔は半分ほどだ。残っているのは、まだ休暇に入っていない人達と、既に休暇から戻ってきた人達と、この夏もボローニャで夏を楽しむと腹を決めた老人たち。後者の老人たちは、何処へ行く必要もない、毎日が休暇だからいいんだよと、言って笑う。そうかもしれない。夏は何処へ行っても人が一杯だし、値段も跳ね上がっているから。それよりもひと気の引いた時期に、ぶらりと旅が出来るのが、仕事から引退した人達の特権なのかもしれない。それでいて、こんなに暑いボローニャにごろごろしているのは身体に悪くないのか、涼しい山へ逃避したほうが良いのではないかと思うのは、お節介というものであろうか。

外にはしきりに鳴く蝉。蝉の命は短いから、命ある限り鳴き続けるらしい。そう思えば、暑苦しい蝉の声も不快には感じない。一生懸命な蝉に限らず、一生懸命な人が好きだ。私がそうしたタイプの人間ではないからかもしれない。私は淡々としているから。そんな私も何かに一生懸命だった頃がある。もう随分と前のことで、記憶の小箱の蓋を閉めて、更に紐でしっかりと結わいてしまったから、そうそう簡単には復活することは無い。あれは情熱だったのだろうか。それとも夢。そう言う訳で、今の私は自分が一生懸命でない分、一生懸命な人が好きだ。そんなことを考えながら、風に膨らむレースのカーテンを眺める。

私は文通なんて今では存在しないかもしれないことが流行っていた時代に育った。初めて文通を始めたのは10歳くらいの頃で、どんな形でそんな相手を得たのかは、いくら考えても思い出せない。見知らぬ相手から時々届く手紙。そして、自分が考えていることや身の回りで起きたことを書き綴って郵便ポストに手紙を投げ込む自分。それは不思議な体験で、手紙を書く楽しみを覚えた。そのうち私は夏に知り合った遠方に暮らす人達と手紙を交わすようになった。夏だけに会える友達。また会いたい、そんなことを胸に、私達は手紙を幾度も交わしたものだ。そのうち範囲が広がって、海の向こうの人達とも手紙を交わすようになった。英語の音が好きだけど、手紙を書くのは全く苦手だった。その証拠に英語の成績はさっぱりだったが、それでいて私はそうしたにととの交流にはとても積極的だったようだ。アメリカの東側、ペンシルヴァニアに暮らす少女。少女と言っても私達はもう16歳になっていて、気持ちだけは立派な大人だと思っていたけれど。リタと言う名前だった。彼女が紙に書きつける文字は大変読みにくくて、いや、とても丁寧に書いているのだが字体に癖があったから解読が難しく、時々学校の、英語の先生に読んでもらわねばならなかった。英語の成績はさっぱりなくせに、こんなことをしている私に先生は好意的で、時々海の向こうのことを話してくれた。成績なんて気にすることなどない。型に嵌められる必要もない。先生は確かこんなことも言っていたっけ。冷たい感じであまり人気は無かったけれど、私は先生の本当の部分を見たような気がして嬉しかった。リタとの文通は3年ほど続いたが、互いに成長していくうちに忙しくなって疎遠になった。今日、私が彼女を思い出したように、彼女もそんなことを思い出すことはあるのだろうか。海の向こう側に住んでいた思春期だった頃の文通友達。

昼下がりは静か。恐らく皆、昼寝をしているのだろう。それともソファに体を横たえているのか、眠れないにしても。昼寝は良い習慣、とても健康的だと思うけれど、それでも私は昼寝が苦手。今に始まったことではない。子供の頃からずっとそうだ。猫も相棒も昼寝中に、そんな私だけがあれこれ考えながら机に向かっている。




人気ブログランキングへ 

コメント

こんにちは。
暑いですね。暑いと言いたくなくても、自然と暑いと口をついて出てきます。
ジェラートは、暑いときよく食べられますか。
暑いとラテンの人達ってこんな感じかなと思います。多少のことは、どうでもいいとおおざっぱになります。
夏の昼寝は、風が吹くと気持ちよいでしょうね。バカンスに行ってきますと、言ってみたいな。

2016/07/31 (Sun) 16:59 | つばめ #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

つばめさん、こんにちは。年々暑さが苦手になっています。暑い日は、弱いガス入りの水がいいですね。ジェラートは本当に暑い日には食べたくなくなるものなのです。もっと喉越しがすっとするもの。というと、やはり弱いガス入りの水がいい。それではジェラートはどんな時に食べたくなるかと言うと、30度を超えないくらいの時。寒い時でもいいんですよ。要は暑すぎない時がいい。
欧羅巴の人達は休暇なしでは生きていけない、と言ったら大袈裟でしょうか。いつの間にか私も、そんな習慣が身についてしまいました。休暇、万歳。

2016/08/02 (Tue) 23:43 | yspringmind #- | URL | 編集

ガス入りの水っていえば、たしかサンベネでしたっけ。つばめか、鳥のマークの水色のペットボトルだったような。ちがうかな。

2016/08/03 (Wed) 13:42 | つばめ #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

あら、びっくり、つばめさん。サン・ベネデッタをご存知ですか。私はあれを燕のマークと見ましたよ。

2016/08/03 (Wed) 22:11 | yspringmind #- | URL | 編集

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する