お洒落

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猫と一緒にテラスで風に吹かれていたら、上階の住人が自転車に乗って帰ってくるのが見えた。上階には4人家族が住んでいて、帰って来たのは家長のロベルトだった。年齢は不明。相棒と私がこの家に暮らすようになって2年が経つが、一度だってそれを訊ねたことが無いからだ。多分50代半ば、そんなところだろうか。初めは気難しそうに見えたけど、話しをしてみたら感じが良い人であることが分かって安心したのを覚えている。彼と私には、この建物に暮らしていることと猫を飼っていること以外に共通点は無い。だから顔を合わせても立ち話をすることは無く、挨拶に色が付いた程度の会話だけだ。例えば今日も暑いねとか、猫は今日も元気だとか、冬季ならばなかなか風邪が治らないとか。互いを詮索し合わない。互いに興味を持ちすぎない。冷たい関係ではないが適度の距離を保って暮らす、それがこのアパートメントの住人のポリシーなのかどうかは知らないが、今のところそんな関係を保っていて、よい感じなのである。それでロベルトだけど、全く大した洒落者である。今日はサーモンピンクのバミューダパンツ。足元は素足に白いモカシンシューズ。シャツは爽やかな青の麻素材で、長袖なので袖を少し巻き上げて、裾は中に入れずにひらひらさせて。白いものが沢山混じった肩までの巻き毛に、口髭。テラスに座っていた私と猫を見つけると、やあ、元気かい、と片手を上げて挨拶をするロベルト。こんにちは、私達は元気よ、と猫を持ち上げて見せながら返事をするが、本当はこんな言葉を返したかった。こんにちは、ロベルト、今日もセンスがいいわねえ、と。職場でも話題になっているに違いない。相棒だって脱帽なのだ。ロベルト、あいつは本当に市役所に勤めているのかな。どうしてあんなに洒落ているんだ、と。

イタリアに居ると目が肥える。別に街の人達が皆洒落ている訳ではないにしても、旧市街を歩いていると時々はっとするような人達を見つける。女性だったり、男性だったり。年配の人だったり若い人だったり。素適な人を見つけると、目が釘付けになってしまう。信号待ちの時によくあることだ。時々私の視線を気にして振り返ったりするから、そんな時には正直に言うのだ。あなたの装い、素敵ねえ。いい感じよ。 そんなことを言われて悪い気がする人などいる筈もなく、照れながら有難うと言って、やっと青になった信号を機に歩き出す。またね、なんて言いながら。
お洒落な年配の女性を見つけると嬉しくなる。若い時はそれだけで美しいものだけど、年をとっても美しくいようと努力をしている女性たちは、少なからずとも私に沢山の喜びをもたらす。私達はいつか必ず老いていくからだ。でも、老いても綺麗でいられるのだ、素敵でいられるのだ、と彼女たちを見ながら思う。慰めと言うよりは勇気、希望。ポジティブで力強い何か。私は彼女たちを私のお手本と呼んでいる。

それにしても蒸し暑い一日だった。山の方で雨が降っているのか、ひんやりした風が吹き始めたのは空が暗くなってからだ。しかし、残された大量の湿度。寝苦しい夜になりそうだ。




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コメント

こんにちは。
目がこえてみたいです。
審美眼があるのでしょうね。それと、どうどうと着てますね。
相棒さんの言葉がおもしろいです。

2016/07/07 (Thu) 14:18 | つばめ #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

つばめさんがロベルトを見たら、嬉しくなると思いますよ。本当に洒落ている。さりげなくシンプルに洒落ていて、朝、仕事の前にロベルトに会うと、悔しいほど洒落ていて、私ももう少し洒落た格好をして来ればよかったなあ、と思うのです。

2016/07/07 (Thu) 21:40 | yspringmind #- | URL | 編集

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