金曜日の晩は訳もなく嬉しい

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突然夏がやって来た。つい最近まで冷たい風が吹いては上着の前を合わせるようにして歩いていたと言うのに。スカーフを首に巻き付けなければ夜風が冷た過ぎたと言うのに。喜怒哀楽の激しいここでの生活は、気候ですら極端である。そんなことにも慣れている筈だけど、しかし今年のこれは一体何なのだ。周囲のイタリア人たちもうんざりしているところを見ると、今年も気候は私に限らず、誰にとっても妙なものらしい。

夕方になっても涼しくならない。しかも風が無いときている。昼間の日差しを嫌と言う程吸収した、アスファルトの路面から熱気が湧き出るかのようだ。この調子だと、テラスの植物もさぞかし喉を乾かしているに違いない。でも、金曜日と言うのに寄り道もせずに家に帰って来たのは、別にそれが理由ではない。このところ体調が悪いからだ。私の意志とは関係ないところで、誰かが私の体調を操作しているかのようである。全く元気だと思っていたのに、急に具合が悪くなる。こうしたことが頻繁に起こると、見えないところで誰かが意地悪をしているのではないかと、疑いたくもなる。勿論そんなことがある筈もなく、単に疲れを貯めすぎただけだろう。それにしたって、こんなに健康には気を付けていると言うのに。

家に帰ると猫が項垂れていた。暑いのが苦手らしい。そう言えば昨年もそうだった。ひんやりとしているのだろう、床に体を横かえて動こうともしない。いつもならば帰ってきた家人を見ると、跳ねて喜ぶと言うのに。まるで一年振りの親友に会ったかのような喜びようで、相棒も私もそんな猫を見ては大袈裟だね、今朝も一緒だったの、と笑うのだけど。動くのが大儀なのか、何なのか、目だけこちらを向けて短く鳴く。にゃ。何と言っているのだろう。お帰りなさいと言っているのか、それとも暑いと訴えているのか。

20時を過ぎても鳴く蝉。ボローニャではよくあることだ。食事の準備をするにも暑いので、ちょっと腰を下ろして本を読んだ。もう何十回と読み返した本。でも好きな本は何度読んでも初めて読んだ時と同じくらい心に響くものだ。名作と呼ばれるものばかりが素晴らしい本ではない。自分の心を動かされたり、共感したりできるのなら、それは私にとって素晴らしい本なのだ。本ばかりではない。音楽にしろ絵画にしろ、同じことが言えるのだと思う。そのうちレースのカーテンが風にそよぎだし、気が付いたら空が暗くなり始めていた。こんな遅い夕食と、日本の家族が聞いたら驚くだろう。20年も前にローマに暮らしていた頃、そうだ、4人のイタリア人たちと一緒に共同生活していた頃、19時にひとりで夕食をとっていたら、後から帰って来た住人たちが、私を揶揄ったことがある。ローマでは夕食の時間が遅いらしく、まず20時前ってことは無い、とのことだった。特に良い季節ともなれば、19時なんていうのは食前酒を楽しむ時間帯らしい。それからこんなことも言った。こんなに早く夕食をとったら、ベッドに入るまでにもう一度夕食をとらなければならなくなる、とも。何となく説得力のある言葉だったと思ったことを覚えている。そんな訳で、私の夕食は20時以降になったが、あれから20年も経って、私の夏場の夕食は遅くなる一方だ。相棒にしたって、夏は暗くなるまで夕食は食べないよ、と言うではないか。それだからうちでは、暑い季節の夕食は空が暗くなってから、が決まりなのだ。

ごく普通の、ちょうどいい具合に冷えた爽やかな白ワインも、上等なグラスに注いで乾杯などすると、ちょっと素敵な感じがする。素適な感じがするのは其ればかりではない。暑かった昼間の余韻を残す晩に、他愛のない話をしながら食事をすることにしたって。金曜日の晩とはそういうものだ。




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コメント

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2016/06/25 (Sat) 12:15 | # | | 編集
Re: No title

鍵コメさん、こんにちは。そうそう、冬場にはあまり頂かない、冷えた白ワインが美味しい季節にあんりましたね。急に暑くなったので体調を崩す人がとても多いようですが、私のこれは少し前から始まったことで、そうしたこととうまく付き合っていかなくてはいけないと腹をくくったところです。運動をすることを強く勧められていますが、何か手軽にできることは無いかと探しているところでもあります。
今年は8月に日本に帰省します。あまり長くは居られません。メインは老いた母と話をして喜ばせることと、姉との時間を楽しむことでしょうか。その合間に少し散歩などを楽しみたいと思っていますが、何だか猛暑の予報が出ているそうで…。2,3年に一度の帰省ですから満喫したいところですけれど。
さて、今年も夏の終わりにイタリアに来るそうで。VERONAは素敵な街です。緑の濃い、豊かな街とも言えます。9月と言う月は夏の名残が強く、まだまだ暑いですが、北の位置するこの街は、少し過ごし易いかもしれませんよ。お薦めです。他にお薦めは・・・考えておきます。旅の予定が決まりましたら、是非声を掛けてください。時間が合うようでしたら、ぜひお喋りをご一緒に。お誘い楽しみにしています。
ボローニャはいま、李とチェリーが沢山。美味しい桃は、もう少し待たねばならないでしょう。これからは次から次へと美味しいものが店先に並ぶ、良い季節なのです。

2016/06/25 (Sat) 17:07 | yspringmind #- | URL | 編集

こんにちは。
そちらは今年は暑そうですね。
アスファルトはほんとうに暑い。
こちらは梅雨です。
降ったり止んだり。
ねこちゃん、かわいいですね。そんなに大喜びなんですね。
そして、晩御飯はヨーロッパの方々はおしゃべりしながらゆっくり時間をかけて食べると聞いていましたが、食べ始める時間がおそいんですね。こちらは、からすの行水や早く食べる人が仕事ができるとか早い方がいいみたいにいわれがちですが。からすの行水は意味が違いましたね。
暗くなるまで待ってたらお腹がすかないかな。時間をゆっくり過ごす余裕があるのでしょうね。

2016/06/26 (Sun) 16:32 | つばめ #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

つばめさん、こんにちは。暑いです。昨夏も暑かったはずですが、今年は我慢できないくらい暑く感じます。
イタリアでは如何にゆっくりと楽しむかが、楽しむことを知っているかが大切なように思います。あっと言う間に食べ終えてしまうのはつまらない。どうしてもっと堪能しないの?と言う感じで。日本では確かに、早いことが良いとされているようですね。それが良いかどうかは、私には分かりません。

2016/06/26 (Sun) 21:35 | yspringmind #- | URL | 編集
No title

こんばんは。
早いですね!もはや6月も最終週間もなく半年が過ぎてゆくのですから。


今年の夏はご家族や友人との再会、楽しみ事が多いから待ち遠しいですね。昨年のブログで昔お暑い時はうなぎを食べたお話思い出しました♪
帰省が実現して良かったですね。
猛暑にならない事を願ってます。

そうそう、運動する事勧められてるのですか。沢山歩くお散歩だけでは足りないのですね・・・日頃から運動が苦手な私にとっては何から始めたら良いか耳が痛いです。旅行に行くと沢山歩くから体力付けておかなければなりません。
でも好きな街に訪れると不思議な元気が溢れ出てくるのですよ。
スペシャルな栄養剤の感じかしら。

また予定が決まればお知らせします。
2度目になるボローニャもとても楽しみですし嬉しいです。
よろしくお願いします。




2016/06/28 (Tue) 13:17 | sumire #GYxcADzc | URL | 編集
Re: No title

sumireさん、こんばんは。そうでしたね、6月が終わるばかりではなく、一年の半分が終わるんですね。驚きです。私は一体何をしていたかなこの半年間、と頭をひねってしまいます。
この夏日本は猛暑だという噂だそうですが、こんな暑い夏は鰻。鰻があるから大丈夫。ああ、鰻に山椒。今から全く楽しみです。
ところで運動不足な私は、散策でさえ、疲れるようになってしまいました。これは困った!と、本当に散策を楽しめなくなってしまわないように、毎日少しづつですが歩く努力をしています。面白いことに、旅先ではあまり疲れることがない。と言うことは、心労が大きく関係しているのかもしれませんね。
9月、楽しみにしています。夏の休暇が終わって街が賑やかになって、イタリアを訪れるには最適の時期かもしれませんね。

2016/06/28 (Tue) 23:07 | yspringmind #- | URL | 編集

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