女友達

DSC_0023 small


正午を待たずに雨が降りだした。予報通りとは言え、日曜日なのに、と多少の残念な気持ちを持ちながら、急に降りだした強い雨を窓辺で眺めた。果たしてこの雨は、ボローニャ全域で降っているのか。それとも私が住む界隈だけに限ったことなのか。何にしても、呑気に道を歩いていた人達は、雨に追いかけられるようにしてバールに駆け込み、やって来たバスに乗り込んで、あっという間に人の姿が消えた。残ったのは行き交う車と雨だけだ。
むせるような花の匂い。雨が止むなり花の匂いが辺り中に立ち込めて、ほんの少しだけ開けた窓から、花の匂いが忍び込む。階下の小さな庭に生えた大きな木の花だった。庭に生えた数本の大きく成長した木たちは、私の大変な気に入りで、春から秋にかけて周囲からの視線を遮るのに丁度よく、美しい声の小鳥がやって来るし、夏の晩に吹く風に枝が揺れる音が私を癒し、自分の庭の木でもないくせに、私の木達と呼ぶほどだ。木があるために、住宅街に暮らしていることを一瞬忘れることもある。何処かの郊外に暮らしているような。

夕方、女友達から電話を貰った。もう25年もの付き合いの、アメリカに暮らしていた頃からの仲だ。アメリカで知り合った人は沢山いるけれど、25年もの歳月を途中で絶つことなく続いている友人は一握りしかいない。彼女はそのひとりで、大切な存在と言って間違いない。初め彼女がアメリカを去って日本に帰り、数年後私がアメリカを去ってボローニャに来た。その数年後彼女が結婚を機に欧羅巴に暮らすようになって、パズルのように場所を替えながら私達は何となく近くに居るのだ。私達の話はいつも理由があるが、兎に角話題が良く変わる。ちょっとした言葉を鍵に別の話へと続いていく。実に他愛ない話ばかり。でも誰か第三者の噂話を話すことは無い。それが私達のお喋りのルールなのだ。彼女の相棒も私の相棒も、いつも目を丸くして眺めている。よくもそんなに話すことがあるなあ、と。でも気の合う女友達とのお喋りとは、大抵そんなものではないかと思う。結局2時間半も話してしまった。流石に2時間半も話すと喉が渇くもので、ああ、話し過ぎたね、と言いながら電話を切った。物陰から猫がじっとこちらを見ているのは、お腹が空いているからだろう。きっと猫も、なんて長電話なのだと、呆れているに違にない。それにしたってご機嫌だ。この夏、友人夫婦が遊びに来るらしい。ほんの数日間だけど、夏のボローニャを共有するために。何か美味しいものでも用意しようか。何か楽しいことでも企てようか。それともそんなことは必要なくて、いつもは遠くに居る互いの顔を見ながら話をするだけでも十分なのかもしれない。何にしたって、美味しいジェラートだけは用意しておこう。

やって来る一週間はどんなことが待っているだろう。忙しい生活の中に、小さな楽しみや喜び、幸せを探し当てることが出来ればいいと思う。




人気ブログランキングへ 

コメント

No title

よき友人が来られる。 それは楽しみなことですね~

どんなご馳走を用意されるのかしら  というより 
自分の街で、よき友人達と時間を共にすることが
これが格別に素晴しいことですよね !

実は、私たちは反対の立場で、隣国に住む友人夫婦に招かれ
会う日を心待ちにしているところなんです。 きっと いやぜったい
夫たちは放りっぱなし(元々は彼等が友人だった)で、
心が通う友と 日本語でお喋りに集中すると思います。
雨の日々に、素敵な記事を読ませて頂き嬉しさが膨らみました~ 

2016/06/14 (Tue) 13:27 | すぷーん #EQkw1b1A | URL | 編集

こんにちは。
木があるとしあわせですね。
気さくにしゃべれる友達いいですね。
私は友達ができても、遠くに行ったりして疎遠になると連絡をとることがなくなることがほとんどなのでうらやましいです。

2016/06/15 (Wed) 13:43 | つばめ #- | URL | 編集
Re: No title

すぷーんさん、こんにちは。肩の力を抜いて迎えることが出来る友は本当に貴重です。夏は美味しい素材が沢山ありますから、一緒に市場に出掛けてあれこれ買い込んで、一緒に料理するのもいいかもしれません。すぷーんさんも近々お友達のところに行くそうで、此れもまた楽しみ。招くのも招かれるのも、良い友達ならではの楽しみですね。恐らく私達も相棒たちをそっちのけにお喋りに夢中になることでしょう。相棒たちは、ふたりで近所のバールにでも出掛けるかもしれませんね。そういうのもありです。

2016/06/15 (Wed) 22:41 | yspringmind #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

つばめさん、こんにちは。木がある生活は気持ちが良いです。深呼吸しながら生活できるって感じでしょうか。
ところで私も友人が遠くへ行くと疎遠になることが多いのですが、一握りの友人たちは何処へ行っても繋がっている。宝物のような存在なのです。

2016/06/15 (Wed) 22:43 | yspringmind #- | URL | 編集

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する