Strada Maggiore

DSC_0029 small


朝から快晴。数日前から急に気温が上昇して、昼間は半袖で過ごせるようになった。気持ちの良い初夏のような気候を一跨ぎして、夏になってしまったかのようだ。日差しの強いこと、湿度の高いこと。少し動くと汗ばんで、不快といえば不快、しかし快活な季節と言えば全くその通りだと思う。テラスに続く大窓を開放してレースのカーテンを引くと、風に膨らんだり萎んだりして楽しそう。そんな様子を眺めていると必ず子供の頃を思い出す。子供心にも気怠いと感じた夏の昼下がり。昼寝をしなさいと母に言われて寝転がってみるも、うとうとすることすら無い。ぼんやりと、レースのカーテンが膨らんだり萎んだりする様子を1時間も眺めていた。時には蝉が狂ったように鳴いていて、うんざりすることもあったけれど。子供の頃を思い出すとき一番初めに思い浮かぶのが、そんなことだ。

こんな暑い日の散策は、早い時間に家を出るに限る。そうと分かっていながら、あれもこれもと欲張って家のことをしていたら、昼前になってしまった。どうしよう。外に出るのをやめようか。一瞬迷ったけれども、思い切って家を出た。そのうち本当の夏がやって来て、暑くて外を歩き回るのが大変になるかもしれないから。この夏は恐ろしく暑くなる、というのが巷の噂だ。私がボローニャに引っ越して来た夏に43度を体験したが、そんな暑さになるのかもしれない。

旧市街は驚くほどの人だった。何か特別なことがある様子はないけれど、皆、にこにこして嬉しそう。手を繋いで歩く男女。これは若い人ばかりでなく年上の夫婦者も同じ。そうした様子を眺めていると、此処はイタリアなのだともう一度思う。そうした様子を眺めていると、心がぽっと温かくなる。旧市街の真ん中の2本の塔の横に走る、環状道路へと続く道、Strada Maggiore。この通りに私は案外沢山の思い入れがあって、時間を見つけては歩いている。環状道路へ向かって歩いていると古い古い教会に出る。古い教会ならば幾らでも存在するけれど、私はこの教会が好きだ。中も良いけれど教会の横に備わる幅の広いポルティコが飛び切り良い。ところどころにフレスコ画が残っていて、新しく塗り替えるのではなく丁寧に修復して、元々あった古いものを大切にする心が伝わってくる。ここを行き交う人々だって、そんな風に思っているに違いない。冬になると、ポルティコの下にクリスマスの市がたち、駄菓子やクリスマスに必要なものや、贈り物類を売る店が並ぶ。何を買うでもない、そうだ、今まで一度だって何かを買い求めたことは無いけれど、人の波に揺られながらその雰囲気を楽しむために一度は足を運ぶ。私の大好きな友人も、もう随分と会っていないけれど、冬になるとこの市場を冷かしながら歩くのが好きだった。彼女はこの教会を、私の教会、と呼んで、私にちょっとした感動を与えたことがあった。そんな風に呼ぶ人に今まで出会ったことが無かったからかもしれない。アメリカの生活を閉じてボローニャに暮らし始めた頃、この道を数え切れぬほど歩いた。相棒の両親が暮らす家はこの道をずっとずっと行ったところに在ったからで、勿論バスを使わねばならぬほどの距離だったけれど、この通りはバスで通過してしまうにはあまりにも惜しかったから、そして教会の少し先には小さな自転車屋と骨董品屋があって、それらは相棒の若い時代の友人たちの店だったから、たまに立ち寄るためにも、相棒とふたりで肩を並べて歩いた。暑い夏も、このポルティコの下はひんやりしていて、何時も此処で足を止めたものだ。此処の様子はあの当時と一寸とも違わない。道の向こうにある建物も、ポルティコも、教会も。変わったのは私達で、通り過ぎる車の色や型で、スカートの裾をひらひらさせながら自転車で疾走していくスタイルの良い若い女性で、ポルティコの柱に寄りかかって携帯電話を操作する学生だ。

帰りのバスに小さな男の子を連れた若い母親がいた。今週の木曜日で学校は終わりよ。母親が男の子に語り掛けたのを聞いて、はっとした。そうか、もうそんな時期なのか。学校が終わって長い夏休みに入る時期。あと数日で5月も終わってしまう、そんな時期に辿り着いた。




人気ブログランキングへ 

コメント

夢ってかないますか。

2016/05/29 (Sun) 08:46 | つばめ #- | URL | 編集

すみません。つばめです。
酔っぱらいの戯言と聞き流してください。
この世は夢がかないますか。。
私は相棒と幼稚園の娘がいます。
この世は天国だとずっと思って育ってきました。
そして、20代のころから、仕事に打ちのめされ痛い目にいいました。そして、なんてこの世にはひどい人もいるもんだと傷つきました。娘を中年にして持つことができ、感謝すると同時に世の中がこわくなりました。希望を持って夢のような子供の頃は終わったのはわかっています。子供に同じような、社会人としての卑しさや苦しさを味わってほしくない。それを、相棒にいうのですが、わかってもらえません。
yspringmindさんと少しばかりにています。京都が合わなくて実家にかえりました。子供をつれて、相棒は来てくれます、よく。
私の田舎は本当に田舎。これからの社会を生きていくには、それ相応に町でないと。
本当に先がわからないのは分かっています。
でも、私は感じるのです。子供を持った責任、この田舎では草にうもれるだけ。
なんだか、少しやけになってきたりします。
丁寧にいきたい。
すみません。yspringmindさんに会いたいです。世界はひろい。夢を持ち続けていた子供の頃にかえりたい。

2016/05/29 (Sun) 09:08 | つばめ #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

つばめさん、こんにちは。あ、酔っ払っていますか。
夢がかなうかどうか、私にもわかりません。でも、夢があることは良いことで、夢があることで人は強く生きていけるのかなと思います。夢でなくてもいい。例えば情熱。私はこのところ大変な低迷期でして、自分が情熱を傾けるものを失ってしまったような気がして、茫然としているのです。昔から何かに向かって熱く生きていた私でしたから、こんなこと初めてで、まるで空気の抜けた風船です。だから一生懸命考えました。一生懸命考えて考えて、まだ今も考えていますよ。生きている間には色んなことがありますね。それでいいんだと思います。

2016/05/29 (Sun) 22:58 | yspringmind #- | URL | 編集
No title

まあ イタリアの学校はこの木曜日でお仕舞いですか?じゃあ 3ヶ月も夏休み?子供は良いけど 親は大変ですよね。それとも 親も3ヶ月の夏休みかしら?フランスは2ヶ月で それでも 長いな~と思うのですよ。親は2ヶ月も休むわけではありませんから。。

もう5月も末だというのに まだ 寒い雨が降ったりして 本当に日本の梅雨のようですね。今年の夏は暑くなるのかしら?

2016/05/30 (Mon) 09:27 | kimilon #aKMr6UbQ | URL | 編集
Re: No title

kimilonさん、こんにちは。イタリアの学校の夏休みは街や学校によっても若干差があるようですが、共通して夏休みは長いです。丸々3か月、というところが殆どでしょうか。子供が小さいうちはこの夏休みは親泣かせ、と言って間違いありません。働いている親は夏休みはせいぜい3週間なので、あの手この手で子供を楽しませていますよ。おじいちゃん、おばあちゃんのところに泊まりに行かせたり、教会関係が催す夏の学校みたいなものもありますし。子供たちの3か月間の夏休みを考えたら、私が首を長くして待っている3週間の夏休みは何と短いことか。
フランスは天候不順のようですね。イタリアも少し前までそうでしたが、一気に夏が開花しました。

2016/05/31 (Tue) 22:35 | yspringmind #- | URL | 編集
No title

この写真の遠近感すごいですね。奥まで物語が広がっていそう。私はも少しで仕事をしばらくお休みする日々がありそうです。語学学校に行くのもよし、バイトをするのもよし、こうやって街を散策するのもよし。夢のようです。いずれは仕事をしたい〜と騒ぎ出す自分には分かっているのですが・・・またボローニャいきたいなぁ。。

2016/06/05 (Sun) 07:19 | inei-reisan #pNQOf01M | URL | 編集
Re: No title

inei-reisanさん、こんにちは。ボローニャに来た時、この辺りは歩きましたか。もし歩いていなかったとしたら、ちょっと残念だなあと思って。
新しい生活が始まりますね。暫く仕事をせずに新しい生活を楽しむのは良いことです。新しい国で新しい言葉を学ぶのは素敵なこと。またひとつ財産が増えると思えば、こんな楽しいことはありませんよね。新しいチャンス。新しい挑戦。誰にでも与えられている物ではないですから。

2016/06/05 (Sun) 17:48 | yspringmind #- | URL | 編集

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する