色んなことがある

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ようやく5月に相応しい気候になった。窓の前の大きな栃ノ木は花をすっかり散らせてしまったが、近所の庭の薔薇の花が私の目を楽しませてくれる。そう言えば、数日前、仕事を終えて帰って来たら薔薇の花が飾られていた。相棒が誰かの庭から分けて貰ったらしい。食器棚の奥にあった大きなガラスの器にたっぷりの水を注いで、薔薇の花が無造作ながらうまい具合に投げ込まれていた。面と向かって花を渡すのが苦手な、相棒らしい心遣いだと思った。このところ、しょんぼりしている妻を喜ばせようと思ったのだろう。それとも単に誰かから分けて貰っただけなのかもしれないけれど、こういうことは良いほうに考えるのが得策だ。いつものことながら、猫は自分の為の花と思っているらしい。花を触ろうとする私の手を阻止するかのように、傍らから離れない。猫と私はよく似ている。何でも都合の良いほうに考えるところが、そっくりだ。
月の2週目の週末は、サント・ステファノ教会の前で骨董品市が開かれる。先月はうっかり逃してしまったから、5月のそれをとても楽しみにしていたのだ。特別なものはないけれど、それに何を買い求めるでもないけれど、見て楽しむ、店の人と話をして楽しむのが私にとっての骨董品市だ。昼を過ぎても雑用に追われていたから、今月も逃してしまうのかもしれないと思ったけれど、夕方になってようやく自由の身になり、外に飛び出した。

思えば夕方に骨董品市へ足を運んだのは初めてかもしれなかった。午前中とは少し違うのんびりした雰囲気が、とても良いと思った。陽が長くなったからかもしれない。古い書物を売る店にへばりついているのは眼鏡を掛けた初老の男性。こういうものに詳しいのか、それとも何か探しているのか。その横顔を眺めながら、映画の一場面のようだと思った。筋向いには小物を並べた店があった。その雰囲気は、昔アメリカで相棒と私が友人のブリジットと共に開いたガレージセールのようだった。勿論置かれているものはそれなりの年代物でガレージセールのレベルではないけれど、その雑然とした置き方が、私の記憶を呼び覚ました。
ガレージセールをしようと言いだしたのはブリジットだった。物が多すぎてどうしようもないし、売って小遣いでも得ようと言うのが彼女の言い分だった。相棒と私、それから私達の友人たちを巻き込んで、彼女は張り切っていた。新聞にも小さな広告を載せた。それが功をなして、其の週末は沢山の人が集まった。朝9時から開始と新聞に載せたのに、準備をしているうちから人が押し掛けた。ガレージセールハンターとはよく言ったもので、そう言う人達が朝一番に来たのである。兎に角そんな具合で、本当に忙しく、全く沢山の物が売れた。一番の売り上げを上げたのは私。あまりにもよく売れたのでブリジットが焼きもちを焼いた。いやなに、彼女の売ろうとしていた物が高級すぎただけだ。愛用していたが興味がなってしまったプラダのバッグとか。ガレージセールでそんなものを売るのかと、来た人々の話題の的にはなったけれど。ガレージセールの後は疲れでぐったりだったけど、案外楽しかった。それが良い証拠に、私達はあれから何度もガレージセールを開いた。ボローニャに引っ越してくる前にしたガレージセールのことは忘れない。ずっとガレージに眠っていたビンテージ車。動きもしない車でもマニアにはたまらないらしく、動かないのに高額で売れて行った。そんな動かない車でも、マニアまがいの相棒には愛着があるらしく、いや、この車を運転していた頃の思い出が染み付いていたのかもしれない、兎に角、悲しそうな瞳で車が引き取られるのを見守っていた。でも、ボローニャに持っていけないからね。彼は自分に言い聞かせるように言った。既に過ぎたことなのに、もう20年以上前のことなのに、今でもガレージセールの話が持ち上がると、あの車のことを思い出すらしい。多分あれは彼の若い頃の思い出がたくさん詰まったものなのだ。それとも、そうした物の象徴なのかもしれない。
骨董品市を見終えて、いつものバールへ行った。土曜日の午前中は酷く混み合っているが、夕方は適度に空いていて好都合だった。店主は最近丸坊主にしたらしく、まるで別人のようだった。多分多くの客から色んなことを言われているに違いなく、時折ちらりちらりと盗み見する私の視線を気にしている。色んなことがある。何があっても不思議ではない。人生とはそういうものだ。

土曜日が終わっていく。忙しくて穏やかで、楽しい土曜日。




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コメント

No title

yspringmindさん、こんにちは。

 >猫と私はよく似ている。何でも都合の良いほうに考えるところ

「猫に似ていますね」というのは一寸失礼な気がするのというのもあり、猫に似ていますね!とは言えません。もし猫だったら、こんなに、きちんと毎日Blogを書けません、と思うのです。猫ならば、「あー面倒だなー、もーやーめた!」と言って何処かへそそくさと消えてしまうと思うのです。だからyspringmindさんは犬派かな?と思うのです。勿論犬や猫の種類にもよりけりだとは思いますが、でも好きなことなら続けられる!というところは猫?

2016/05/08 (Sun) 02:48 | Tsuboi #- | URL | 編集
Re: No title

Tsuboiさん、こんにちは。私は簡単に言えば勤勉でもなければマメに何かをするタイプでもない。どちらかと言えば怠け者でなるようになるさ、そのうち何とかなるさ、のタイプなのです。嫌いなことは手も出さない。でも好きなものは人が驚くほど続けることが出来る。その点から見ると、やはり私は猫のようです。それから観察するのが好きなのも猫でしょうか。それから眠るのが好きなのも猫。ほら、私は猫によく似ている!

2016/05/08 (Sun) 20:43 | yspringmind #- | URL | 編集

こんにちは。
ガレッジセールはアメリカではよく行われるのですか。フリーマーケットというのがありますが、場所代が3,000円とか結構かかります。ガレッジセールは、利にかなってますね。
相棒さん、花を飾ってくれてやさしいですね。買ったのではなく、もらってきたというのが自然でうれしいですね。
写真の天井はすごい幾何学的なデザイン。

2016/05/09 (Mon) 14:14 | つばめ #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

つばめさん、こんにちは。ガレージセールは誰がいつ開いても良いと言う点が好きでした。だから週末は歩けば必ずガレージセールに遭遇しました。来る人と話すのも案外楽しいのですよ。
写真の天井は、つまりポルティコの天井です。回廊の幅が狭いのでこんな鋭い感じになっています。ポルティコの天井とひと言に行っても、びっくりするほど様々なものがあるんですよ。フレスコ画が施されているものだってあるんですから。

2016/05/10 (Tue) 19:08 | yspringmind #- | URL | 編集

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