ご機嫌

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雨降りで始まった祝日、エピファニア。昨日から正式に始まった冬のサルディで祝日でも店を開けると予告していたボローニャの店の人達は、さぞかしがっかりしていることだろう。雨風を遮るポルティコが旧市街を巡っているとはいえ、こんなに冷たい雨が降る日は外に出掛ける気も萎えるというものだ。店主でもないのに、そんなことを考えながら朝の時間を過ごした。こんな日は、家に居るのが一番。足元が濡れるのが嫌いな私だ。そうだ、今日は一日家に居よう。そうして昼になると、見る見る間に空が晴れて、いや、向こうの方に雨雲が待機しているけれど、太陽の光が降り注いだ。こうでなくちゃ。祝日に雨が降るのは残念すぎる。別に何をするでも、何処へ行くでもないけれど。明るい空を眺めながら、のんびり過ごす祝日が好きなのだ。

昨日の午後、電話が鳴った。出てみるとボローニャ旧市街の眼鏡屋さんだった。12月の末に頼んでおいたレンズの交換が終わったそうで、何時でも引き取りに来てください、とのことだった。それで雨も止んでいることだし、降りだす前にと思って家を出た。この眼鏡屋さんとの付き合いは10年近くになるだろうか。一番初めはこわごわだった。何しろ街の中心に古くからある店で、場所柄高いに違いない、と私も、同行していた女友達も確信していたからだ。ところが私達が持っていたこの店に対する印象は、単なる先入観、偏見だったと分かった。それ以来、眼鏡を作り替える時、レンズを交換する時は、この店に行くようになったと言う訳だ。店にはベテランの男性と私くらいの年齢の女性、それから店の地下で視力検査をしてくれる男性が居たが、皆感じが良い。眼鏡なんてそうそう交換するものではないから、行くにしたってせいぜい年に一度、又は2年に一度といった感じである。それで2年振りが今回のレンズ交換だった。前回まで居たベテランの男性の代わりに溌溂とした若い女性が居た。ベテラン男性は現役を退いて気ままな生活に入ったらしい。彼が店主だと思い込んでいたものだから、何時までも店に居ると思っていたから、ほんの少し残念に思った。
さて、眼鏡を引き取り、折角だからと街を見て歩くことにした。冬のサルディが始まったことだし。ひとつ目をつけていた物があった。かっちりとしたダンディな感じの靴だった。目当ての店に行ってみたら割引をしていたが、ショーウィンドウに並ぶそれを改めて見てみると、好みと一瞬違うように見えた。こういう時は、自分の印象を大切するほうがよい。急に購入意欲を失って、店に入らずに歩きだした。
小一時間歩いて特に刺激的なものもなく、それではと賑やかな食料品市場界隈で大きなオレンジを幾つも袋に入れて貰い、それを手にぶら下げながら歩いたら、思い出した。そうだ、手帳だ。沢山の用事があるでもない。でも、ひとつふたつ書いておかないと忘れてしまうことがある。ここ何年手帳を使わなかったけれど、手帳の代わりに携帯電話を利用していたけれど、今年は是非、と昨年の秋から思っていたのだ。それで数日前に閉まっていた文具店に行ってみたら、開いていた。中に入ると、客人が一杯。この小さな店がこれほど客人でいっぱいなことは初めてだった。それにしても皆辛抱強い。トップの二人連れは結婚を知らせるカードを作成するらしく、紙質を指で確かめながら、此れが良いあれが良いと時間が掛かった。紙を選び終えたら、字体。字の大きさ。そして字の色。20分待ったが決まらず、店の人は2人を店の隅に導き、じっくり検討して貰うことにしたので、待っていた客達はやれやれと、小さなため息をついた。店に入ってから40分も経つ頃、ようやく自分の番になった。私も辛抱強くなったものだ。多分待っていた客の誰もが新しい年に必要なものを求めていたに違いなく、私もそのひとりだった。手帳。それもできるだけ薄くて軽いものを。でも小さ過ぎては困る。私の沢山の要望に店主は耳を傾けながら、これはどうか、あれはどうかと引っ張り出して見せてくれた。私の後にはまっている客は無い。いや、例の二人連れが居るけれど、まだまだ時間が掛かりそうな気配だった。だからいくらでも時間を費やすことが許されていた。薄くて軽いものが出てきたけれど、ビニール製のカバーがしっくりこない。でも、革製は重いものねえ、と誰に言うでもなく呟くと、店主は人差し指を立てた。それは、ちょうどいい物がありますよ、とか、ちょっと待ってくださいね、といった風だった。そうして出てきたのが革製カバーの手帳だった。カバーは店特製。特性と言ったって、店の名前が目立たなくて探さなければ分らぬ程度には押印されているだけだ。でも、柔らかくて軽かった。中の手帳は毎年3ユーロほどで新しいものに取り換えられるようになっていた。もう2色しかありません、と店主は言った。訊けば、愛用者は案外多くて、毎年11月に入ると新しいものが出来上がり、あれよあれよという間に売れていくらしい。だからもう2色しかないと言う訳だ。私はそのうちの濃い色の方を選んだ。見開きの2ページにひと月分が書きこめるようになっていて、書くことが少ない私には充分だった。用事の多い人達が見たら、こんな手帳というだろう。でも、私はやっと自分らしい手帳を手に入れてご機嫌だった。店には店主夫婦の息子もいて、大きな力となって働いていた。夫婦は既に65歳を超えているに違いないが、こんな風に息子と一緒にこの店を続けていくのだろう。そうして外に出たら、すっかり空が暗くなっていた。

15時から始まったサッカー戦、ミラン対ボローニャは0対1でボローニャが勝った。新年早々、凄い奇跡だと言おうものなら、バールに集まる男たちに文句のひとつも言われそうなものだが、本日に限っては誰もがそう思っているらしく、皆一様にご機嫌。バールでは今、祝いの酒盛りで大騒ぎだ。私の冬休みは今日で終わり。いい具合に終わろうとしている。


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コメント

初仕事

yspringmindさん、充実した冬休み眼鏡に手帳も新しくなり新たな気持ちでスタート、素敵な予定に、幾つもの目標が叶い、年末に良い一年になったと手帳を眺められたら良いですね。

随分前20年程前、友人と初めてフィレンツェに行った時の事、コットン素材のキャミソールを求めに入ったお店でストッキングもコットン混紡のあるよとマダムに薦められ購入しました。ネイビー色でデニールも選択ができ、履き心地も良く日本で入手できる限り愛用してました。言葉は伝わらなくとも、良い物をとても熱心に説明して下さった事は今でも鮮明に記憶しております。対面販売じっくり相談して選んだ物は大切に使いたい!と思いますよね。
時代が変わって行っても、伝統的なお品物には魅力を感じます。

今年もイタリア!
シチリア、ヴィテルボ行きたいと願ってます。
お会いできれば嬉しいですね♪♪♪

お仕事お疲れさまでした。






さて、昨年のお正月は珍しく雪が20cm程積もりましたが、今年は暖冬4月の気候~寒がりの私にはありがたく本当過ごしやすかったです。
ボローニャも暖かそうで何よりです。




2016/01/07 (Thu) 11:50 | すみれ #GYxcADzc | URL | 編集

こんにちは、yspringmindさん。
サッカーは本気でやっているから楽しいですね。
野球はありますか。
わたしは、野球好きでもありませんが、あるのかなと思って。

2016/01/08 (Fri) 02:24 | つばめ #- | URL | 編集
Re: 初仕事

すみれさん、こんにちは。今年は是非とも良い一年にしたいものです。古い一年を終わりにしたことで、気分がすっきりしました。此の薄っぺらい手帳にどれだけのことが書き込まれるのかは知りませんが、ひとつの記録となることでしょう。
ところで対面販売が面倒くさいと思う人が今の時代には多いかもしれません。私がイタリアに来たばかりの頃、言葉かわからないことで小さな店に行くのが大嫌いでした。でも、こうした店の人達は、自分の店のものに関する情報を沢山持っているばかりでなく、自信も持っているのですよ。言葉が分かり始めたら、対面販売にばかり足が向きます。
今年のイタリアはシチリア、ヴィテルボですか。いいですね。どちらも素晴らしいです。あー、シチリア、二私も行きたくなってきました。もう15年もシチリアの地を踏んでいません。

2016/01/09 (Sat) 20:19 | yspringmind #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

つばめさん、こんにちは。サッカーをしている人も応援している人もかなり本気ですね。
野球は存在しますが、あまり活発ではありません。日本は野球中継がごくあたりませですが、イタリアでは見たことが無いのですよ、少なくとも私は。

2016/01/09 (Sat) 20:30 | yspringmind #- | URL | 編集

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