小さな拘り

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何時まで経っても窓の外が明るくならない朝。カーテンの隙間から目を凝らしてみたら、僅かに雨が降っていた。霧のような雨。降っているとも降っていないとも言い難い雨。そんな予報が出ていたから、ちょっとは覚悟はしていたけれど、いざそんな朝を迎えてみると残念であるには違いなかった。昨日までの明るい空は何処へ行ってしまったのだろうか。猫が窓の外を覗き込んでいたのは、向こうの木の枝に灰色の鳥が止まっていたからだ。。キーと鳥が声を出すと、猫がそれに答えるように声を発した。案外友達同士なのかもしれない。私はそんなことを思いながら片付けごとをした。

外に出たら驚くほど寒かった。気温は1度。もう昼だと言うのに。この雨が雪になったりはしないかと怯えながら、それは其れで良いかもしれないなどとも思う。本当の冬がやって来た、と思った。旧市街へ行くバスは空いていた。年末まではいつも満員だったと言うのに。この寒さで家の中に縮こまっているのだろうか。それとも新年を迎えて、どこかにスキーや旅行に行ってしまったのだろうか。旧市街では早くも冬のサルディが始まっていた。まだ、何処も正式にサルディを公表していないが常連客には何かの形で知らせていて、店の中に入て店員と話をすれば半額なりなんなりの割引が受けられるようになっているのだ。私も知らせを貰っていたが、この冬に限ってはあまり関心が無かった。ショーウィンドウを眺めながら歩く程度で充分だった。美しいもの、上質なもの。それらを眺めることで物を見る目を肥やすことが出来るなら。
価値観とは面白いものだと思う。誰かがメディアなどでこれが素晴らしいと言うと、それが素晴らしいと思う人が世の中には居るようだけれど、そういうことに惑わされずに自分の価値観を持つことが出来ると良いと思う。価値観とは、人それぞれ違って良いもの。いや、違うものなのだと思う。それは考え方やファッション、ライフスタイルにも相繋がるもので、他人と同じでなくてはいけないという物ではないのだ。私はシンプルなものが好き。良い素材で丈夫、そして色だ。それから微妙なライン。微妙な肩のライン、微妙な襟のラインに拘る。そのかわり、気に入って購入するものは、使っていくうちに更に愛着がわいて、平気で5年10年使い続ける。もっと華やかなものを身につけたらよいのに、と時々人に言われるけれど、シンプルで媚びないものが私らしいと思うから、これからも変わることは無いだろう。私の小さな拘りなのだ。
目的の店は閉まっていた。文具の店で、毎年新しい年を迎えるたびに手帳やらカードやらを求めて顔を見せに行く店だ。古くからここで店を営んでいる、この辺りでは古株的存在。昼休みだろうかと思えば、そうではなかった。クリスマス休暇ということだった。がっかりだったが、そういう自分も冬休みで6日まで家に居る身分だから、文句のひとつも言えるはずがない。老夫婦と、時々彼らの息子が店に居る。こんな店、経営が成り立っているのだろうかと初めて店に入った時は案じていたけれど、何年経っても潰れることもなく、それどころか地元の常連に愛されているらしい。日本には、餅は餅屋、という言葉があるけれど、文具は文具屋、ということだろう。その点イタリアはこの諺に相応しい国だ。勿論大きな総合店もあるけれど、そして便利であることは否めないけれど。野菜や果物は青果店に、肉は肉や、魚は魚屋と言った具合で、これから先も成り立っていくだろう。そうであって欲しい。少なくとも私はそう思う。これも私の小さな拘りなのかもしれない。

新年の恒例で、母と姉に電話をしたところ、どちらも嬉しそうに電話口に出た。母は近くに暮らす姉が親孝行してくれると言って喜んでいた。でも、だからと言って離れている私が親不孝と言う訳でもないらしい。海の向こう側に暮らす私が元気でいること。それが私が出来る一番の親孝行なのだと母が言って、私はうっかり心の中で涙をこぼした。母は何時までも母で、私は幾つになっても母の小さな娘なのだ。


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コメント

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2016/01/03 (Sun) 14:25 | # | | 編集

こんにちは、yspringmindさん。
いい写真ですね。
お母さんがお元気でなによりです。
わたしまで、うれしくなります。

2016/01/03 (Sun) 18:49 | つばめ #- | URL | 編集
Re: ゆったり新年をお迎えください。

鍵コメさん、明けましておめでとうございます。
楽しい旅のご報告有難うございました。
確かに今だからこそ笑って話が出来ることですね。多分、ボローニャからフィレンツェに向けて乗った列車は、フルチケットの1stクラスだったのでしょう。飲み物がサービスされるんですよ。しかしシャンパンだなんて、確かに驚きですね。
うまく行ったことも失敗も、旅はすべて良い思い出になりますね。だから旅はやめられませんね。
しかしストだけは問題です。列車にしても飛行機にしても。どうやらイタリアだけでなくて近隣国もそうみたいです。此れも文化と呼んでおきましょうか。
今年もイタリア? それは楽しみ。ボローニャに来ることがありましたら、声を掛けてくださいね。美味しいものでもご一緒に。
これからもお付き合いお願いします。

2016/01/05 (Tue) 00:05 | yspringmind #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

つばめさん、こんにちは。
私が元気なことが母の喜びならば、母が元気なことが私の喜びです。元気。これって本当に尊いことなのだと思います。

2016/01/05 (Tue) 00:07 | yspringmind #- | URL | 編集

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