ちょっとカッフェでもしようよ

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夜更かしのせいでまだ眠いが、空が晴れているのがカーテン越しに空が晴れ渡っているのが見えて、えいっ、と起きた。近所の人達はまだ眠っているのか、それとも早々に出掛けたのか、いや、昨晩帰宅しなかったのかもしれない、何にしろ物音ひとつしない静かな朝。眠い以外は文句のつけようもないほど気分が良く、健康に恵まれて朝を迎えられた喜びを噛み締めた。オレンジを絞ってグラスいっぱいに注ぐ。それから、もう20年以上も私達と付き合いのある古いモカで飛び切り美味しいカッフェを淹れた。モカは古ければ古いほどよい、と昔相棒が言っていたけれど、成程、そうかもしれないと頷く。シンプルでゆっくり。新しい年の朝はこんな風にして始まった。

午後、ちょっとカッフェでもしようよ、との相棒の誘いで外に出た。こんな天気の良い日に家に居るのも勿体ない話で、悪いアイデアではなかった。ところで1月1日に開いているバールなどあるだろうか。と、思いついたのが家と旧市街を繋ぐ大通りのちょうど中間地点にある店。あそこはどうだろう。其の店には一度も足を踏み込んだことは無かったが、バスの窓から見る限り、どんな祝日も開いているようだった。其れに人気がある。店の隣は私が贔屓にしているジェラート店。ジェラートを購入しに行くたびに、隣の繁盛ぶりに驚いていたのだ。良い常連客が居るのだろうか。それとも美味いカッフェをだすのだろうか。それとも。それとも。私の提案に相棒は疑問だったようだが、かといって何処が開いているか見当もつかない。それで小さな期待を抱いて車を走らせた。
ちょっとカッフェでもしようよ。そう誘われることが多かった私のローマ時代。旧市街に職場があったから、休憩がてら誘われるがまま外に出ることがあった。職場の近くには何と4軒のバールがあった。どれも歩いて30秒と掛からぬ場所に。あの頃、上司が誘ってくれることが多かった。相棒をボローニャに残してひとりでローマに暮らす私が不憫だったからだろう。私自身は大して不憫とも感じていなかったけれど、確かに友人も知り合いも居ない街で生活するのは緊張の連続だった。それからイタリア語も達者ではなかった。だから、社交、社交と思いながら人の誘いは断らずにひょいひょいとバールについて行った。上司はいつも僕の奢りだからと言って私の分まで払ってくれた。でも、回数が重なると心苦しくなった。だから、ある日、今日は私の奢りですからと支払おうとしたら、バールの店主が言うのだった。シニョーラ、こういうことは男に任せておけばいいんですよ。イタリアではこれは立派な男の仕事なんだから。そうかしら。そうですよ。ローマに暮らしていた頃は、家の中でカッフェをするのは朝だけだった。何処の街にもバールやカフェが点在するが、ローマはめまぐるしいほど沢山存在していた。それは興味深く、私を酷く喜ばせた。何処の店が美味いとか、色んな情報が溢れているが、私が覚えている限り、ローマはどの店に入っても失敗することが無かった。もう20年も前のことになるけれど、あの街で暮らしたことはよく覚えている。多分ローマが好きだったからだ。
店は開いていた。私が予想していた通り、そして私たちの期待通り、店は開いていた。そして店は酷く繁盛していて小さな店内に入るのもやっとだった。カッフェをふたつ。恐らく2,20ユーロ、若しくは2,40ユーロと予想をつけていたが、1,80ユーロだった。ということは、一杯1ユーロもしないことになる。聞き間違えかと思って、え? 何ですって?と訊き返したら、やはり同じ返事が返ってきた。こんなに手頃な料金でカッフェを楽しめる店がまだボローニャに存在するのかと、相棒と顔を見合わせて驚いた。ようやく出てきたカッフェの美味いこと、美味いこと。この値段でこのカッフェ? どうして今まで知らなかったのかと、もう一度相棒と顔を見合わせて驚いた。いい店発見。家からちょっと遠いけれど、ジェラートを買いに来たついでに寄るのも悪くない。
特別なことは何もないけれど、心穏やかな新しい年はこんな風にして始まった。

私達皆にとって、希望と恵みが溢れる、健康で笑顔を絶やさぬ一年となりますように。それが私の願い。
これからもお付合いお願いします。


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コメント

yspringmindさん、今年もどうぞよろしくお願いいたします。
またボローニャに行く日を夢見て。
そしてまた、美味しいトルテッリーニを食べる日を夢見て。

2016/01/02 (Sat) 03:21 | micio #O/XG6wUc | URL | 編集
おめでとうございます。

yspringmindさんへ。
新年あけましておめでとうございます。
素敵な店を発見して良かったですね。
1ユーロしない……って!日本じゃ考えられません(苦笑)
フランスもですけど、気軽にチョッとカフェ出来るのがいいですね。
そのうち、カフェのついでにジェラートになりますよ(笑)
健康で笑顔で……本当にそう思います。
このところチョッと荒んでいるような気がして……。
この一年が穏やかで実り多き年になりますように!

ブノワ。

2016/01/02 (Sat) 13:29 | ブノワ。 #kZkdgmoI | URL | 編集

今年もよろしくおねがいします。

ローマはカッフェがたくさんあるんですね。いいなあ。それほど、みんなよく利用するんですねえ。あたりまえなカッフェやバールの文化なんですねえ。
カッフェに合うお菓子もいろいろあるんでしょうね。

2016/01/02 (Sat) 14:16 | つばめ #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

micioさん、明けましておめでとうございます。
またボローニャで会いましょう。今度は冬の寒い時期に。冬に冬の良さがあります。
これからもお付合いお願いします。

2016/01/02 (Sat) 18:11 | yspringmind #- | URL | 編集
Re: おめでとうございます。

ブノワさん、明けましておめでとうございます。
この店、まさか90セントでカッフェを提供しているとは誰が想像できたでしょうか。リラ貨幣からユーロに変わってからの物価は驚くばかりで、1ユーロ以下でカッフェが出来る店は、ボローニャでは此処だけではないでしょうか。
バール、カフェ文化のヨーロッパは、とても性にあっているのです。ちょっとカッフェ。ちょっとカップチーノ。アメリカ暮らしが恋しいとは言いながらも、ここに来てよかったとも思っています。
良い一年にしましょう。今年もお付き合いお願いします。

2016/01/02 (Sat) 18:19 | yspringmind #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

つばめさん、こんにちは。
イタリアはどの町に行ってもバールやカフェが沢山ありますが、ローマの、私が仕事をしていた界隈のバールの多さは驚きでした。ローマはボローニャよりも料金が一瞬易くて、例えばあの当時、ブリオッシュという名の朝食用の甘いパンがボローニャで1000リラでしたが、ローマでは800リラだったんですよ。首都のローマの方がボローニャよりも安いのかと驚きましたが、ローマの人曰く、北の方はなんでも高い、のだそうです。そういうこともあって、ローマの人達はバールに自分の家のごとく通っていました。

2016/01/02 (Sat) 18:24 | yspringmind #- | URL | 編集

明けましておめでとうございます!
今年もyspringmindさんの心がほっこりするブログを楽しみにしています。

お元気にたくさんの事を楽しめる素晴らしい一年となりますように!

先日クリスマスにアメリカ・オクラホマ州に戻った時、冬の嵐が到来し、
樹氷も見れて、久しぶりに凍てつく冬を感じれました(笑

yspringmindさん、寒い冬も出来るだけ心地よく過ごされていてください。

2016/01/02 (Sat) 20:59 | るみこ #- | URL | 編集

リラという単位の時期があったんですね。
ローマ、首都より北の方が高いというのは、へーという感じですね。
ローマ、住んでみたいですね。
今の時代どうしても守りに入りがちですが、本来の人間の欲するところに元づけば、住みたい街の10位以内には入る街でしょうね。
私には想像もつかないローマの暮らし。
歴史的にも今の現代の生活の上でも醸し出す力がある街なんでしょうね。
ローマという響きだけで何か深いものがあるような。
人は一人づつ見ればちっぼけな存在ですが、ローマという歴史的にも世界の人を惹き付け動かした街はないでしょう。
世界の中でそういう街が生まれたこと事態稀有ですね。
何の違いかわかりませんが。
人、一人づつが持った力がローマに終結したのでしょうけど。
過去の話とはいえ、力がある町ですね。
不思議。
惹き付ける力。
ローマ、地名のびびきだけでもひかれますね。全ての道はローマに通ず。本当にそう思えてきます。それを、一時期にしかも大昔に作ってしまったシーザーってすごいですね。住んでいる人からしたら、ただの制ふくしゃかもしれないけど。
秀吉は私は、貧乏たらしくて大嫌いなんです。自分の思うがままに京都の街を変えて、田舎者みたいで。
シーザーのことはよく知らないのですが。
でも、世界の人を魅了するローマを作った人たち。想像もつかないけれど。
理想郷としての人が欲する何かがあるのかな。
私が訪れたのは、2006年の7月です。
イタリアがワールドカップでまさかの優勝をした年。おかげで、コロッセオに入れなかった、なぜなら、選手たちが帰ってきて大騒ぎになるからとツアーがとりあえず安全のためにとホテルに帰らされました。
またいつか訪れたい。
なぜなら、日本ほどこだわりがない気がしたから。世界中の人々がくる街なんてそうないですよね。ローマのひとにとっては、秀吉同様、シーザーに良し悪いがあるのかもしれないけど。観光地でしょうし。
なかなか、過去との退治はむずかしい。過去が偉大なほど。
今の世の中、シーザーなど、大それた大物は生まれにくいんでしょうね。世間が見張っている感じがする。
みんなの目がインターネットなどで行き届きすぎて、はちゃめちゃができない。間違ったことをしてはいけない雰囲気があるから。日本だけかしら。どうでしょう。レールを走っている気がする。人間が本来持っている欲求とことはなれている。人間の持っている欲求に答えられたのが、ルネッサンスのフィレンッエだったりローマだったのかな。本来の花が開くような。今は、複雑すぎて分かずらい。日本においてですよ。分かろうともしていない、日本。一部の共有でしか。
日本が島国でなかったら、もっと!たくましい国になっただろうに。とにかく、よくもわるくも繊細すぎる。やさしい国でいてほしいな。稲作の国だもの。
今は、パソコンやSNSに支配されている国になってしまった。でも、基本は稲
作の国。やさしい感情の国。
どうか、お金をいくら持っているとか、セレブがどうとか小さな見た目にとらわれない大きな理想郷、桃源郷の国になってほしい。わたしが、子どもの頃は確かにそれを感じられる国だったから。
ローマはいま、どんな空気が流れていますか。ボローニャはどんな空気が流れていますか。人々はどうしたいんだろう。おのずとそういう空気が出てきますよね。
ほんとかどうか知らないけど、全ての道はローマに通ず。理想郷としてのローマ。
いまはどんな空気があふれているのでしょう。ローマ、住んでみたいですね。
住めなくても、目を閉じて想像する力は一個人でもあります。わたしが、生まれ変わったら、有名でない絵描きになりたい。
自分のために描く。ミケランジェロのようにわがままでいい。
レオナルド・ダ・ヴィンチのように大勢の人に支持されなくていい。
そう考えると今の世の中、もっと、失敗してもいいんだよと誰か言ってくれたらいいのに。
日本という国にたまたま生まれてその価値観だけで生きて、人に迷惑かけないようにと教えられて、ルネッサンスのような生きている喜びを感じ得ずまま昇華している気がします。わからない。

2016/01/03 (Sun) 01:31 | つばめ #- | URL | 編集

yspringmindさん、こんにちは

新年、明けましておめでとうございます

本年も、よろしく御願いいたします

京都は、初春から

異常なほど、暖かいです^^;

2016/01/03 (Sun) 23:19 | 高兄 #eP1cGWnA | URL | 編集
Re: タイトルなし

るみこさん、明けましておめでとうございます。
引っ越し先の新しい生活は如何ですか。新しい生活というのは響きが良いですが、思い通りにならないことも多いことでしょう。そういうことも含めて、楽しめると良いですね。オクラホマ州に戻った時に冬の嵐ですか。それは大変でしたね。でも、樹氷を見ることが出来たと言うことですから、それは其れで良かったと言うことでしょう。こちらボローニャは暖冬でしたが、ようやく冬らしい冬がやってきました。これから2ヶ月半ほど寒さと共存することになりますが、そういうことも楽しめるようにならなくてはね。もうそろそろ。今年もお付き合いお願いします。

2016/01/04 (Mon) 23:42 | yspringmind #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

つばめさん、こんにちは。イタリアはざっくりと二つに分けられます。フィレンツェを境に北と南。文化も経済も食生活も人の考え方も、大まかにこんな風にふたつに分けられるとイタリアに来た頃イタリア人に教えて貰いました。どちらが良いとかではなくて、客観的に見てそう言うことだそうです。日本では、どちらが良くてどちらが悪い、どちらが勝ちでどちらが負けと決めたがる節があるようですが、良いも悪いもその人の感じ方次第なので一方的な見方で決めることは出来ないからです。それでですね、南の方は気候が良くて太陽の恵みが溢れているので食文化が素晴らしいのです。それから物価も安い。カッフェ一杯、ブリオッシュひとつにしても分かるように。勿論ローマは首都なので家の価格は驚くべきですが、ひと月の食生活にかかるお金は、ボローニャよりもずっと安いと思われます。
> イタリアはどの町も素晴らしいのですが、ローマはあの広さ、遺跡がごく普通に残されている様子、気候、どれをとっても飛び抜けているように思います。もっともこれは私が感じていることで、他の人がどう思っているかは分かりません。
> 私はつばめさんのようにあれこれ比較してみたり考えることはあまりないのです。実に単純で、まずは受け入れてみる。それで自分に合うか合わないか。其れだけなのですよ。

2016/01/04 (Mon) 23:55 | yspringmind #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

高兄さん、明けましておめでとうございます。
京都が暖かいとは。驚きですね。京都の冬は寒いもの、雪が降るものと思い込んでいましたから。ボローニャには、やっと本来の冬の寒さがやってきました。寒いのは嫌。でも、これがあるから春の暖かさが嬉しいのですよね。
今年もお付き合いお願いします。

2016/01/05 (Tue) 00:11 | yspringmind #- | URL | 編集

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