考えたこと

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屋根から突き出る筒のような煙突。そのどれもから白い煙が立ち上る。何処の家も暖房を焚いているのだろう。外はこんなに寒くても、どの家も中はとても温かい。それを幸せと呼ばなければ何と呼ぶのか。家のない人や小動物たちはどうしているのだろう。何かで寒さをしのいでいればいいけれど。

昨日、旧市街の角で大きな犬を連れた男性に声を掛けられた。年の頃は40代後半くらいの、クマのような髭を生やした痩せた男だった。一見して一匹狼風だった。その男が口を開いたら、ぷーんと酒の匂いがした。どうやら宿無しの、若しくは宿はあるが職無しのアルコール依存症と見た。犬は大柄だが気が小さそうで、おどおどしていた。奥さん、1ユーロ貰えませんか。男はそう言った。私のコートのポケットの中には小銭が入っていた。先ほどバールでカップチーノを頂いた時のつり銭が入っていたのだ。それを取りだすのは簡単だったけれど、私は思い留まったのだ。いいえ。あなたはまたお酒を飲むんでしょう? すると男は当然と言わんばかりに頷いていった。勿論です、私から酒をとったら何が残る。それを聞きながらふと思った。男には何か辛いことがあったのだろうか。其れで酒を飲まなくてはやっていけなかったのだろうか。依存症になるまで飲んだこの男を肯定するつもりはないけれど、事情も知らずに男を判断できるほど、私は偉い人間ではなかった。人を良いとか悪いとか評価するほどの偉い人間ではないのだ、私は。それでポケットから小銭を幾つか取り出して、彼の掌に乗せながら言った。お酒を飲むのもいいけれど、あなたの犬にも美味しいものを。男は一瞬化け物でも無るような表情で私を見つめ、その後何かを考えるような顔に変わり、うん、うん、と頷きながら私の元から去って行った。でも、去っていく時に彼が呟いた言葉を私は確かに聞いた。È vero. (その通りだ。) 後から、近くで私達の様子を見ていた通行人が男に何かされなかったかと心配して声を掛けてくれた。何もない、心配ない、と答えると安心して去って行った。傍から見たら危険そうな男に見えたのかもしれないけれど、私にはそんな風には思えなかった。男に対する嫌悪感すらなかった。彼にも犬を思いやる心が残っている。多分、悪い人ではない。多分、多分。

クリスマスまであと少し。もう二週間もない。聖なる日に誰もが暖かい食事を得られれば良いと思う。暖かい場所に居られればよ言うと思う。人間がもっと他人にも優しくなれればよいと思った週末だった。


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コメント

こんにちは、yspringmindさん。
yspringmindさんの自分は人の事情も知らず決めつけられないという心持ちに、そうだそうだと思いながら、わが身はできていないなとはずかしくなりました。
日頃、ふつうに生活していて、自分が人を見て、この人はこういう人だからとか見た目がこうだからこうと決めつけているときがある。
ほんとは、決めつけて態度や言葉でこうだからと言い切る人を目の当たりにしたとき、とっても窮屈な感じを受けるのに。
yspringmindさんが、この度、このように接せられたことは、ふと、yspringmindさんらしいなと思いました。ニュートラルな気がします。そして、その男性も、確かに良心が多々あるから、犬のことを言われてどきっとはっとしたのでしょうね。
なんだか、このクリスマス前という時期に、yspringmindさんらしいといったらおかしいかもしれませんが、そのような経験をされたような気がしてなりませんね。
今のわたしだったら、こわくなって逃げると思います。同じ人でありながら、金銭的な勝ち負けで判断する人がなんと多いことか。

2015/12/14 (Mon) 15:46 | つばめ #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

つばめさん、こんにちは。私がこんな風に考えりようになったのは、そんなに昔の事ではないのです。率直に言えばここ最近の事で、陽とのことをあれこれ言う前に自分のことはどうなのかしら、と思うようになったからなのです。他人を批判、評価するのはとても簡単で、同時に無責任なことだと思います。何故なら人には外から見えないことを沢山秘めているからです。見える所だけで判断してあれこれ言うことは、人を勝手に傷つけるだけなのかなとも思うようになりました。相手を自分に置き換えたら、どんな気持ちがするのかしらと思ったら、そんなことは出来なくなりました。長い年月を経て、やっとそういうことに気がつきました。ああ、やっと気が付いた、と言う感じなのです。

2015/12/16 (Wed) 23:38 | yspringmind #- | URL | 編集

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