そうだ、外に出掛けてみよう。

DSC_0046 small


寒い朝だった。だから昼過ぎに出掛けることにしたわけではない。単に少しでも長く眠っていたかったからだ。それに、2週間前に体を冷やして風邪を引いてしまってから、外に出るのが億劫になってしまった。始めのうちは風邪を完全に治すために、と。次第に、寒いから、まだ体調が今ひとつだから、と言い訳して家から出るのをぐずるようになった。大好きな散策をすることすら拒んで。唯一の救いは毎日の仕事で、これが無かったら私は家に閉じこもってしまったに違いない。遅くにベッドから抜け出して、猫共々遅い朝食をとり、家の中が何となく片付くと外の空が明るいのが気になりだした。そうだ、外に出掛けてみよう。そう思いついて、気が変わらぬうちにと急いで身支度をした。
バスに乗る前にクリーニング屋に立ち寄った。気に入りのセーターを何処かで引っ掛けてしまったからだ。誰か上手に直してくれる人は知らないだろうか、とそれを持ち込むと、知り合いがそういう仕事を請け負っているからと言って、口利きを引き受けてくれた。大成功。女店主は顔が広く、困ったことがある時にはまず彼女に声を掛けることにしている。それにしても寒いわねえ、と言う私に、だって明日はサンタ・ルチアだもの、と彼女は笑みを返した。えっ? と目を丸くする私に、彼女はこんな風に説明してくれた。12月13日はサンタ・ルチアの日で、この日は一年で最も昼間の時間が短いと言われているのだそうだ。つまり夜の時間が一番長いと言うことで、だから寒くて当然なのだ、とのことだった。こういう聖人聖女の名前が付いた日の話をイタリアの人達は昔からずっと信じていて、この話だって、訊けば1500年代半ばから続いていて、彼女も彼女の祖母から受け継いだ話なのだそうだ。そういった古い話を信じるとか信じないとかは別にして、昔から孫に、そしてその孫に引き継がれてきた話を聞くのが私は大好きだ。私には祖父、祖母が存在しなかったから、尚更なのかもしれなかった。祖父、祖母は存在しなかったけれど、幸運なことに私の周囲にはそんな存在の人たちが沢山いる。そうして彼らは喜んで様々な話をしてくれる。私はそれに喜んで耳を傾けるのだ。へえ、サンタ・ルチアの日なのか。と目を輝かせる私に、彼女は付け加える。勿論、そう言い伝えられているだけで本当かどうかは分からないのよ、と。そして、そういうことにしておきましょう、と私達は同意して、別れた。
旧市街はクリスマスの準備に忙しく、人々は贈り物探しに余念がない。中央郵便局前の広場のフランス市場、そして七つの教会群前の骨董品市。何処も賑やかで明るかった。寒くて顔の肌がチリチリと痛かったけれど、思い切って外に出てきてよかったと思った。骨董品市には目新しいものが並んでいて、店の人と言葉を交わしながら物色するのが楽しかった。何を購入するでもないけれど、そんな風に眺めて楽しむ、言葉を交わして楽しむのも私の気に入りである。そんなシンプルな楽しみを持っていることを幸運に思い、やはり家の中に閉じこもってばかりいてはいけないのだと我に言い聞かせた。
骨董品市を抜け出した先にある小さな店。女性の衣服を置く店で、この店に初めて入ったのは、以前、交流のあった友人と。10年程前のことだ。一瞬違った感覚の服を置いていて、どんな人が購入するのかと思ったのを覚えているが、その後、其の店は私の気に入りになった。見るだけのことが多いけど。購入する時だって、シャツ一枚程度のものだけど。そしてまた足が遠のいて数年経つ。自分にはシンプルでスタンダードなものが似合うと気が付いたからだ。でも、店のショーウィンドウだけはいつも楽しみにしている。見て楽しむのだ。今日はこんな華やかなドレスが置かれていて、どんな女性が購入するのかしらと、好奇心が芽生えた。美しい杏色のふわふわのドレス。このショーウィンドウの前に足を止める人は一体どれくらいいるだろう。

3時間も歩いた。外に出たくないとごねていたくせに。家に帰って来たら猫がクリスマスツリーの中腹で昼寝をしていた。こんなところ、居心地がいいのかしら、と思いながら、そっとしておくことにした。そのうち疲れて降りてくるに違いない。


人気ブログランキングへ 

コメント

猫ちゃん、クリスマスツリーが気に入ったようですね。
こちらは、今日は、18度の気温、最高気温の更新記録となりました。
あと十日で、クリスマスというのに、暖かい雪のないこの天候と気温。なんだか、カリフォルニアの気温みたいです。数日前までは、SFのように、深い霧が発生したりして、まるで、SFみたいだ、バークレイみたいだって、騒いでいたんです。
お写真、とても綺麗なドレス。まるで、ボウルパーテイに行く時のような華やかなドレスですね。私が、もう少し若かったら、着たいなーって思うのですが、今の私には、お隣のシックなドレスの方が、顔に合いそうな感じ。でも、私、パーテイーが苦手なんです(笑)
クリスマスは、のんびりと、ここで過ごします。NYへ行く予定にしていたのですが、ちょっと不安なので、、、、、、。NYは、逃げたりしません(笑)でも、行きたい。

2015/12/14 (Mon) 22:09 | キャットラヴァー #mQop/nM. | URL | 編集
Re: タイトルなし

キャットラヴァーさん、こんにちは。猫は毎日クリスマスツリーの下で過ごし、人の目を盗んでツリーに登り、おかげでツリーは少しお疲れ気味です。気に入ったと言うよりも、自分のものだと思い込んでいる節もあります。
ところでそちらは18度ですか。それ、凄いですよ!12月ですからね!まさにカリフォルニアのようで、うーん、羨ましい。ボローニャもこのところ温暖ですが、其れでも昼間も10度に届きませんからね。
写真のドレス、とても綺麗なんです。ボウルパーテイに行く時のような華やかなドレス、まさにその通りなのです。私はシックなドレスを着るのが苦手なのです。かと言ってこのドレスはどうかなあ。やはり見るだけが丁度よいのかもしれません。私はパーティが大好き。でも、最近そんなパーティに参加する機会が無くて残念です。其れにアメリカのパーティとイタリアのパーティは少々感じが違うのですよ。
NYもパリも逃げません。と言いながら、やはり行きたいですよね。気持ち、よく分かります。

2015/12/16 (Wed) 23:47 | yspringmind #- | URL | 編集

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する