彷徨い歩く

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12月初めの週末。旧市街はクリスマスを前にして贈り物を探す人が多いに違いない。其れから街のあちらこちらに立つクリスマス市場も賑わっているだろう。多くの国で12月8日が祝日のヨーロッパ。月曜日に仕事を休んで4連休で何か楽しいことをしましょう、と言う人が多いかと思えば思いの外少ない。例えば近所のクリーニング屋さん。悪いわねえ、連休させてちょうだいよ、と報告された。数年前まではそんな風に連休をとるのが実にイタリアらしかったけれど、不況の風が押し寄せてからはこうした連休に対する考え方も変わったらしい。休みを取ることに小さな罪悪感を感じたりするのだろうか。休みを楽しむことは決して悪いことではないと思うけれど。もっと自由でいいと思うけれど。
昨日はバスのストライキだった。こうした楽しい週末の前に限って、ストライキをするのが悔しい。例えば金曜日の夕方は仕事帰りにちょっと寄り道などしたいものなのに、19時半から24時までバスが無いと知れば、誰もが急ぎ足で家に帰りたくなる。まあ、私の場合は数日前の風邪が少々拗れて遊んでいる場合ではなかったけれど、それにしたって街中がクリスマスのライトで美しく、夜の散歩のひとつもしたくなるような晩にストライキだなんて、気が利かないなあ、と思うのだ。でも、このストライキだって数年前に比べれば随分と減った。此れも不況の煽り。ストライキなどしていたら職を失ってしまうかもしれない。そんなところなのかもしれない。

私はまた夢を見た。それは私が見たこともない、美しいクリスマスのライトに浮かび上がるパリだった。私の想像の賜物で、これが本当なのかどうかは行ってみなければわからない。何にしても、私は厚手のオーバーコートを着込み、襟巻を首にぐるぐると巻き付けて、人の少ない夕方に街を彷徨っていた。夕方と言っても17時を待たずに暗くなってしまうから、早くも橙色の灯りが燈っていた。地図を片手に、しかしその地図は単なる飾りで例のごとく道に迷っていた。明るい時間ならばまだしも、こうも暗いとお手上げで、心細いこと夥しかった。唯一私を支えていたのは、行く先々で遭遇する雰囲気のある古い店の存在や、看板や、ボローニャには存在しないであろう色だった。そういう物を見つけては心を躍らせ、そして、さて、これからどちらへ歩いたら良いのだろうと考えるのだ。夢の中でも沢山の人に道を教えて貰った。英語はあまりできないんだよ、と言いながらフランス語風英語で教えてくれた人々。多分私が10月の旅で、それを楽しかったことのひとつとして捉えていたからに違いない。道に迷わない一人旅は、人と言葉を交わす機会が少ない。自分が暮らしている街のように迷わず目的地に到着するのはスマートで格好いいけれど、私は野暮ったいといわれようが知らない人と言葉を交わしながら、迷って、無駄に時間を使いながら、行きたい場所に到着するのが好きだ。無駄な時間と表現したが、実はそれは決して無駄ではない。無駄なことなんてひとつもない。そのどれもが小さな経験で、小さな喜びだから。そうして橋の向こうにサン・ルイ島が見えると、私はほっと胸をなでおろして、自分の本当の家でもないのに、昔から住んで居た自分の家のように愛着をもって、先へと急ぐ。途中のグロサリー・ストアでいつものように水と果物を購入して、此れだけはフランス語で上手に言えると胸を張って、さようならと店の人に挨拶をする。相手も慣れたもので、この客が話せるフランス語は挨拶だけと心得ていて、無駄なことは言わず、機嫌よく挨拶を返してくれる。そうして青い重い扉を開けて中に入っていく。まるで昔から住んで居た自分の家のようにして。何度目かに見るパリの夢。これからもこんな風にして夢の中で街の人と言葉を交わし、街を歩き、時には何処かの店に入ってワインなどを頂いてパリを楽しむのだろうか。あれからパリの人々は平静を取り戻して、いつものように生活しているようだけど、早く本当の平和な生活が戻ってくればいいと思う。それはパリの人々の為だけではなく、パリの街に恋い焦がれている私達の為でもある。

昨日思い出したこと。肩の位置を直しに出したコートがそろそろ仕上がっているのでは、と。確か電話をくれる筈だったが、何の連絡もなかった。ストライキが始まるのを気にしながらも途中でバスを降りて立ち寄ってみた。前日に仕上がったらしい。着てみたら、まるでオーダーメイドのように肩の位置が合う。ぴったり。一寸の違いもないことに私は歓喜して、店の奥さんは満足そうだった。ご主人に宜しくね。素晴らしいの一言に尽きるわ。そう言い残して店を出て、大急ぎでバスに飛び乗った。


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コメント

こんにちは、yspringmindさん。
こちらは、薄曇り。
ぱっと晴れないかな。

パリは、落ち着いたんでしょうかね。

2015/12/06 (Sun) 02:04 | つばめ #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

つばめさん、こんにちは。冬の青空、そろそろほしいです。
パリは、落ち着いているふり、若しくは努力をしているだけかもしれません。だってそんなに早く不安感が拭えるはずがないですから。でも、みんな普通の生活をするようにして居るのではないでしょうか。自分たちは強いのだ、負けないのだ、と言う気持ちで。もし私がパリ市民だったらば、そう思うに違いありません。

2015/12/06 (Sun) 18:38 | yspringmind #- | URL | 編集

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