感覚

DSC_0048 small


すり抜ける風。落ち葉が風で踊りながらかさかさと乾いた音楽を奏でる夕方。この時期にしては暖かいが、確実に昨日より気温が低いのを感じる。薄手のトレンチコートの前のボタンをしっかり閉めて、絹の襟巻で首を覆う。折角の素敵な季節。風邪など引いたら大変、と思って。

久しぶりに旧市街をぶらぶら歩いた。パリから帰ってきてからずっと、時間の割り振りがうまくいかなくて忙しい毎日だった。いや、時間的な余裕がなかっただけじゃない。多分、気持にも余裕がなかったのだろうと思う。それだから、こんな風にして歩いたのは久しぶりのことだった。マッジョーレ広場では水曜日から始まるらしいチョコショウの準備に追われていた。大きな白いテントが幾つも立ち並び、年々規模が大きくなるこの祭りの成長ぶりに驚く。初めはサント・ステファノ教会の前の広場から始まったように覚えている。出店数もごくわずかで、チョコショウと言う名すら知られていなかったから、通りかかる市民が、一体何の騒ぎだい、と興味半分で覘いていく、そんな感じだった。いつの間にか大きくなり、場所も街の中心に移った。毎年ほぼ同じ。なのに、ちょっとくらいは覘きたい、それがチョコレートの魅力というものなのである。そんな白いテントを横目で眺めながら、ポルティコへと逃げ込む。風の吹く日はポルティコの下がいい。風の日ばかりでなく、雨の日も雪の日も、それからカンカン照りの夏の日も。と、店のショーウィンドウの中に見つけた。昔、私がまだ若かった頃、自分で自分の衣類を縫っていた頃、生地を選んで丁寧に縫い上げたシンプルな形のパンツとよく似たものを。冬用のそれは、深緑をベースとしたシンプルなチェックで、黒の、かっちりとしたマニッシュな感じの靴を合わせるととても格好良かった。あれと同じようなものにもう一度で会うなんて。もう、あんなパンツの流行はとっくの昔に終わって、二度と見ることもないだろうと思っていたのに。
店の前を去って路地へ。私はこれを見たかった。先週見つけたこれ。ある店のウィンドウの中に置かれた何気ないものと色の組み合わせが、私の心をぎゅっと握って放さなかったからだ。何が動機に行ったのか分からないけれど。シンプルで美しいとは、こういう物のことを言うのだろう。

美しいものを美しいと感じる感覚を忘れないでいたい。何気ない生活の中にも沢山あるはずなのだ。ただ、私達が気が付かないだけで。


人気ブログランキングへ 

コメント

こんにちは、yspringmindさん。
きれいな色合いの写真ですね。
器の水色、ザクロの赤、おぼん?の黒、壁の赤茶色。
フランスは大変ですが、ボローニャでもそういう話になりますか。

2015/11/15 (Sun) 02:38 | つばめ #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

つばめさん、こんにちは。器の色を水色と見ますか。私は鼠色と思ったのですよ。人によって感じ方も表現の仕方も違う。其れで良いと思うし、そういううことを知るのが私の楽しみでもあります。
ボローニャでもパリの事件のことは大事なのです。私達は皆フランスが好きなのですから。それから多分、みんな、心を痛めて沈んでいます。

2015/11/15 (Sun) 19:16 | yspringmind #- | URL | 編集

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する