黄金色の秋

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11月にしては温暖で、人間は11月であることをうっかり忘れてしまいそうだ。けれども自然はしっかりと季節に殉じていて、夜がやって来るのがとても早い。17時半には真っ暗だ。日差しの色にしても。日没前の日差しは黄金色に輝き、今日も良い一日だった、と言っているかのようだ。それから家の庭の周囲の樹木の葉が確実に落ちていくこと。周囲の家が見えない程に茂った樹木の葉がはらはらと落ちて、案外近くに隣りの建物が存在していたことを思い知らされるのがこの時期だ。地面に落ちた黄色い葉が夜露に濡れて渋く光るのを、どれだけの人が気付いただろう。そんな様子に秋を感じる。秋は確実に深まっていて、次なる季節へと移ろうとしているのだ。

少し前にトリュフ祭りに行った。思うにこの時期はイタリア中でこんな祭りが催されているに違いないのだ。秋の収穫祭りと言うのか、秋の味覚祭りと言うのか。それとも両方を兼ねているのかもしれない。以前は相棒や友達とこうした祭りに足を延ばしたものだけど、何時の頃からか疎遠になってしまった。疎遠になった理由は知っている。相棒が老いた母親の傍から遠くに行けなくなったから。この母と息子の絆は強い。どちらかと言えば母親が息子を必要としていると言った感が強かった。まあ、ふたりの娘が若い時に病気で逝ってしまったこと、それから何十年と連れ合った彼女の夫も数年前に他界して、寂しいのだろう。だから私は何も言わない。彼女が息子を必要としているのなら、それでいいではないかと思うからだ。82歳の母親なのだ。大切にしてあげるのは良いことなのだ。幸運なことに相棒は私を縛り付けることが無い。そしてもう一つ幸運なのは、私がひとりで何でもするタイプで、例えば旅行にしたってひとりで楽しむことを知っていることだ。上手く出来た夫婦と言えば聞こえがいい。兎に角、文句がある筈が無い。唯一、相棒と共に旅を楽しむことができない事が残念だけど。それからこの手の祭りに足が遠のいてしまったことも残念だけど。何しろ、私が思うにこの手の祭りは、ひとりで楽しむようなものではないからだ。
運よく仲間から声を掛けて貰った。トリュフ祭り、と聞いて断る理由などなかった。穏やかな天気の朝、目指したのはボローニャ郊外の丘の町だ。どんな規模のものだろうと思っていたら、なかなか大きな祭りで驚いた。トリュフはいい。トリュフを知らなかった頃はそんなことを考えたこともなかったけれど、トリュフを知ってからは、此れが生活の中に存在すると、なかなか美味しくて楽しい。祭りの中にあった即席食堂の料理に、ふんだんに白トリュフが使われていたことに感心した。ただ、胃袋が小さすぎて全部食べ切れなかったのが心残りとなった。この心残りが数週間経った今でも心の隅に残っているところみると、自覚している以上に残念だったということだろう。そんなところに話が舞い込んだ。相棒が家に帰って来るなり、君、白トリュフに関心はあるかい、と言うのである。愚問というものである。それで何の話かと訊いてみれば、相棒の知り合いから白トリュフが沢山採れたから買わないか、と話を持ち掛けられたのだそうだ。とてもいい匂いで、君なんてとろけてしまうだろうよ、とのことであった。こういう話はいい。店で買うと利益がたっぷり乗ってしまうために、高価なトリュフが更に手の届かぬ存在となってしまうからだ。それでは直径4,5センチほどのものをひとつ購入しようと言うことになり、相棒が家を出て知人のところに戻ってみたらすぐに完売だった。完売。あんなに沢山あったのに。相棒が電話でそう嘆いたので、次回は家に帰ってきたりせずに、その場で電話をしてくるようにと頼んだ。ああ、がっかり。手打ちのタリアテッレと白トリュフ、それから特別の日に開けようと言うことになっていた赤ワインの小さな夕食の夢が消えてしまった。でも、まあいいさ、簡単に手に入らないから良いのかもしれない、白トリュフは。

近所の常連客、シルヴァーノ老人に貰った何の添加物もない赤ワインで最近食が進む。夏の間は体温が上がるからと赤ワインから遠のいていた私にとっては、これからがシーズン。だから秋は好きだ。食事時にグラスに一杯。一杯だけだよ。此れが健康の秘訣なんだ。というのがシルヴァーノ老人の説である。確かに。85歳であの肌のつやの良さと元気は、食事時に頂くグラス一杯の赤ワインが一役買っているに違いないのだ。黄金色の秋。秋生まれは秋と相性が良いと、誰かが言っていたっけ。


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コメント

トリュフというのはそんなに素晴らしいものなのですね。私は感動するほどの量を戴いた事がないせいか トリュフの美味しさをまだ知らないのですよ。
白トリュフというのは 普通のトリュフよりも もっと貴重なのでしょうね。なんだか 食いしん坊さんたちが あっという間に その白トリュフの山に 吸い寄せられる風景が浮かんできましたよ。

秋は美味しいものが多くて大変。。お財布も おなかまわりも。。

2015/11/09 (Mon) 11:40 | kimilon #aKMr6UbQ | URL | 編集
Re: タイトルなし

kimilonさん、こんにちは。トリュフ、しかも上等の白トリュフは夢のような匂いです。と言いながらも、始めはどこかでガスが漏れているのではないかと思ったものです。微妙なんですよ、いい匂いとそうでない匂いって。
秋は美味しいものが本当に沢山ありますね。私も財布が軽くなって仕方がない、それが秋です。ウエストが厳しくなるのもやはり秋。ふふふ。

2015/11/11 (Wed) 00:23 | yspringmind #- | URL | 編集

ガスが漏れているような、とは また微妙な?香ですね。
いつかソレを体験してみたいものです。今の所は、椎茸で我慢、我慢。

2015/11/13 (Fri) 09:28 | kimilon #EtOHdKJs | URL | 編集
Re: タイトルなし

そうなのですよ。だから初めはトリュフに関心を持てませんでした。kimilonさんは椎茸で我慢? 私からしたら椎茸だって大変高価です。大体ここでは手に入りませんからね。

2015/11/15 (Sun) 00:18 | yspringmind #- | URL | 編集

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