物事は良い方に考えよう

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驚くほど空が晴れた一日。先週末から今ひとつすっきりしなかったから、目に痛いほどである。窓ガラス越しに樹が揺れている。晴れてはいるが、日差しは強いが、日陰で受ける風は驚くほどひやりとしている。外の様子を伺っていると袖無しシャツのご婦人がひとり。そうか、外に出てみれば案外暑いのかもしれない、と思ったら、向こうからは木綿の長袖シャツを着たふたりが歩いて来る。風が吹かなければまだまだ暑いが、風に吹かれたらひとたまりもない。そんなところだろうか。何故こんなに外の様子が気になっているかと言えば、久しぶりに外に出るからである。実に6日ぶりのことである。夏風邪を引いたらしく扁桃腺と気管支を痛めてしまったために、この楽しい夏休みの6日間を家に閉じこもって過ごしてしまった。まだ抗生物質も飲み終わっていないけれど、もうこれ以上は家の中にはいられないよ、と相棒に宣言して、今日は外に出たいと思ったのである。気をつけるんだよ、ぶり返さないようにな。まるで小さな子供に言い聞かせるような口ぶりで相棒が言うのを、うんうんと頷きながら、明るい空に誘われるかのようにして外に出た。

街にはそろそろ人が戻りつつあり、先週とは比べると随分活気があった。勿論、連なる店の半分以上はまだしまっているし、私の好きなパン屋さんも青果店も休みだけれど。先週の今頃は通行人と言えば外国人ばかりだったというのに。それはボローニャに出稼ぎに来ている外国人だったり、旅行者だったり。しかし今日の街は、確かにここに暮らしている人達で賑わい、小麦色の腕を自慢するための真っ白なシャツに身を包んだ人々が、楽しかった休暇の報告をしながら、立ち話をしているのを何度も見た。彼ら、若しくは彼女たちがそんな素敵な夏を過ごしている間、私は熱を出して家に閉じこもっていたことを思うと、情けないような恥ずかしいような気がする。しかし元気になれたのだから、それだけだって有難いことではないか。その間のことは一切相棒任せだったし。物事は良い方に考えることにしている。そうすれば、ツマラナイことの裏側に大抵ひとつくらい小さな良いことが見つかる。
時間が時間で昼時だった。PIAZZA MAGGIOREの横に広がる食料品市場界隈は、昼食をとる人で一杯だった。何時の頃からこんなに店が出来たのか、記憶を辿ってみるが明快でない。それまでは青果店が並ぶこの辺りには一軒、2軒のバールがあるくらいで、後に小さな魚屋がアペリフィッシュなどと言って、それでなくとも狭い店内の傍らにカウンターを備え付け、魚介をつまみに食前酒を楽しめるようにた・・・多分その頃からだ。この界隈に少しずつワインを楽しみながらお喋りしながら食事をする店が出没して、今では青果店の数を追い抜くほどだ。その多くがこの路地にテーブル席を置くものだから、路の狭いこと狭いこと夥しい。でも路が煩雑で有ればあるほど人の心を惹きつけるのか、どの店も満席なのだからびっくりだ。此処ばかりではない。もうひとつの市場、広場のもっと向こう側にある、店の数ではずっと優っているエルベと言う名の食料品市場の中も、そして周辺も、ワインを楽しみながらお喋りしながら食事、を謳った店が一杯だ。どうしてなんだろう。どうしてなんだろう。いくら考えても分からないが、何処もが流行っているのだから、時代の波に乗ったとしか考えようがない。それとも、私達は皆、心の根底で、旧市街に行ったついでにワインを飲みながらお喋りしながら食事をしたいと思っているのかもしれない。ブームとしか言いようのないこの有様、しかし別に悪いことではない。
そんな人たちを眺めながら、私は例のごとく開いているだけで選んだ行きつけでない青果店で週末用の桃を数個購入して、その先で黒パンを購入して、本屋に立ち寄ろうと考えたけれど少々疲れはじめたので、バスに乗って帰って来た。たった1時間しか歩いていないのに。何だか随分弱ったものだと溜息をつきながら、そうだ、と思いつき、簡単なものを作って、購入した黒パンと、先日近所のシルヴァーノ老人から貰った赤ワインで昼食をとった。私もワインを飲みながら食事が好きだ。喋る相手は生憎いないが、しかし誰に気を使うでもなく、農家から買っているという混ぜ物のないワインとパン、これ以上何を望めと言うのだ。日本の家族が聞いたらば、抗生物質をまだ飲んでいるというのにワインを飲むのか、と窘められそうだけれど、良いではないか、何しろ純正のワインだからね。そうだ、物事は何でも良いほうに考えよう。

そんな風にして一日が終わり、週末を迎え、夏休みがもうじき終わる。


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コメント

こんにちは、yspringmindさん。
おいしいワインがあるから、楽しく飲むのもいいですね。
そんなにワインをたって飲む場所がはやったるのですか。
それまでは、家で飲んでたのでしょう?
6日家にいるのもなかなかたいへんですね。ねこちゃんは喜んだでしょう。

2015/08/22 (Sat) 09:17 | つばめ #- | URL | 編集

わたしの家ではお酒を飲むことが悪いことにとらえられています。特に女性が。つまり、いい意味でまじめ、悪い意味合いで固いのです。
たぶん、西欧の人が飲む飲み方と日本の飲み方はちょっと歴史的にもちがうのかなと思うのですが。
最近では日本も女性が飲む人が断然増えています。
西欧の人が飲む飲み方は楽しんで仕事のあとの楽しみにという感じに見受けます。日本みたいに、たまったものを出すために酔いつぶれるまで飲むのとちがうのだと思います。
かしこく楽しくほどほどに飲むってなかなか日本ではむずかしいのかなと思うのです。
でも、yspringmindさんとイタリアでワインをいただいたら、どんなに夢見心地になれるでしょうね。
おいしいワインがあるんですからね。という私も、なんか月ぶりにいただきました。yspringmindさんといっしょで、親が聞いたらびっくりすると思います。そういう風習がない家ですから。
もちろんほどほどに。
いつか、イタリアで昼間はジェラートをいただき、夜はバールで地元の人と話しながから発泡ワインをいただきたい。星の降る夜に。

2015/08/22 (Sat) 10:03 | つばめ #- | URL | 編集

yspringmindさん、こんばんは。
愉しい会話と、美味しい料理を少しと、ワインが少しあれば立派な食事だと思いますが、会話の代わりに白ご飯を沢山欲しがる人がいて困っています。何でもちょびっとで良いのにな。イタリア料理にワインは外せないですね。

2015/08/22 (Sat) 11:51 | TSUBOI #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

つばめさん、こんにちは。この界隈の店は皆テーブル席に着席です。だから私は人と一緒の時にしか利用していません。わ問えば、この近くに私がよく行くフランス屋がありますが、フランス屋にしてもテーブル席がメイン。立ち飲みなどしているのは、フランス屋の身内か、顔なじみか、常連か、私くらいしかいませんよ。
ああ、猫はあまり嬉しくなかったみたいです。家に居るくせにちっとも遊んでくれないと言って、文句ばかり言ってました。

2015/08/22 (Sat) 22:45 | yspringmind #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

つばめさん、おもしろいですね、つばめさんの家ではお酒を飲むことが悪いことにとらえられて入るのですか、特に女性が? 日本では昔から男尊女卑みたいなことがありましたから、昔は良く、女のくせに、なんて言葉を耳にしました。面白い文化ですね。 でも確かに飲み方が違うのだと思います。日本ではお酒を飲むイコール酔う、酔い潰れる。イタリアだって酔い潰れる輩は居ますが、辛いから、気を紛らわせるために飲む、というよりは、食事を楽しくするために美味しいお酒をちょっと、若しくは、お酒を片手におしゃべりを楽しむ、と言った、楽しむが主体なんですね。
多分最近は日本でも楽しむためのお酒になって来たのではないでしょうか。そうだといいけれど。

2015/08/22 (Sat) 22:54 | yspringmind #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

TSUBOIさん、こんにちは。TSUBOIさんの家には白いご飯を沢山欲しがる人が入るんですね。ははは。少しづつがいいんですけどね、うちにも居ますよ、パンを山ほど食べる人が! 
ワインがある生活を、結構気に入っています。

2015/08/22 (Sat) 23:00 | yspringmind #- | URL | 編集

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