雨が沢山降ったから

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窓を開けずに過ごす一日。空がとても青く高いけれど、日差しがこんなに強いけれど、風がとても冷たいのはこの素晴らしい空の向こう側に低気圧が渦巻いているせいなのだろうか。それとも単に雨が沢山降ったからだろうか。長袖にジーンズ姿ならば窓を開けても良いのだろうけど、半袖に膝上丈のパンツ姿で居たかったから、必然的に窓を閉めて過ごすことになった。猫がテラスに出たがるので、時には少し大きな窓を開けたにしても。

ところで只今、うちの冷蔵庫にはトリュフがごろごろしている。それは直径3㎝程の黒トリュフで、ごろごろしていると言いながらも、実を言えば紙に包んでさらに広口の瓶に入れて保管されている。ただ、何時も存在しないものがあるものだから、ごろごろしているような感じがしてならない。数日前に相棒が持ち帰った。近所のタバコ屋のステファノは何時の頃からか私達の良い友人で、特に相棒とは気が合うらしい。幾度か彼の家の夕食に呼んでくれたのも、そんなことからだった。ステファノの幼馴染のマリーノはこの辺りは知られたトリュフ採りの名人。まだ時期が早いが雨が沢山降ったから、と山に犬を連れて行ってみたところ、案の定トリュフが沢山見つかったそうだ。トリュフが好物の幼馴染にとマリーノがステファノに紙袋にいっぱい持ってきたのは、年老いた彼の母親もまたトリュフが好物と知っていたからだった。そしてその袋から7個を取り出して、トリュフが好物な君の奥さんに、とステファノが相棒に分けてくれたらしい。幸運だね、僕たちは。そう言って包んであった紙をそっと開いてみたら、ぷーんといい匂いが立ち昇った。滅多に見ない、立派なトリュフで、うちにそんなものが存在すること自体珍しい。いつもはもっと小振りのものしか手に入らないからだ。それだって知人友人からのお裾分けなので、運が良いのだった。兎に角そんな訳でいいトリュフが手に入ったので手打ちパスタを購入してトリュフ和えを食した。調理方法は実にシンプルだが、何しろ素材が良いので頭が下がるほど美味しい。これに爽やかな冷えた白ワインと少し酸味のある黒いパン。私達には上等な食事だった。美味しいものはシンプルに調理するのが良いと思う。少なくとも私と相棒はそんなものが好きだ。食事をしながら、ふと思い出した。昔、アメリカで生活していた頃の私達のフラットには、招かずとも常に友人が立ち寄って夕食を共にしたこと。近所に暮らしていたロバートはひとり暮らしだったこともあって週に2度は食事を共にしたし、大型バイクで身軽に動く写真家のトーマスも、夕方7時ごろをめがけてうちに立ち寄った。何か足らないものはあるかい、などと言いながら階段を上がってきて、やあ、ワインが無いじゃないか、と言うや否や、再び外に飛び出しては近所のリカーショップで北カリフォルニアのワインを買ってきた。上等の夕食には上等のワインを、なんて言いながら。私達はそんな友人たちが突然現れることを嫌だと思ったことは一度だってなかったように思う。寧ろ、突然誰かが現れることを楽しんでいたのかもしれない。今まさにパスタを煮えたぎる湯の中に入れようとする頃に呼び鈴が鳴ると、誰だろうなんて思いながら私たちは笑っていたのだから。うちに立ち寄る友人達は皆、私達のシンプルな夕食とお喋りを堪能して、10時ごろになると邪魔したね、と言って帰った。時には一緒に外に出て月を眺めながら散歩をした。気ままで横のつながりだけが全ての私達の生活が、懐かしい。あの頃、こんなトリュフの夕食を堪能する日が来るとは夢にも思っていなかった。市販のパスタに熟れたトマトを煮込んで作ったソースにバジリコの葉を加えただけでも、充分ご馳走だった、あの頃の私達には。そんな自分たちを恋しく思う。すべてが素朴で自然だった。私達はあの町に大切な何かを置き忘れてきてしまったのではないだろうか。

生のトリュフもいいが、私はトリュフ入りバターが好きだ。何年も前にマリーノから分けて貰ったことがあるが、それはそれは美味しかった。愛情がたっぷり入っているからね、とマリーノは笑う。愛情。彼のトリュフに注ぐ愛情は本当に深いのだ。


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コメント

こんにちは、yspringmindさん。
トリュフを食べたことがありません。松茸とも違うんでしょうね。
パルミジャーノのキノコ版みたいな感じでしょうか。木の根っこの辺りの土の中から出てくるらしいから、松ヤニの香りとゴボウの泥臭さを合わせたような香りかな。トリュフなんでしょうね。
きっと、深い香りなのだろうと想像します。
とても楽しそうなアメリカでのひととき、なんて、幸せそうな空気がただよっているんでしょう。月を見ながら友達と歩くなんて最高ですね。
私も、そんなときがあったかな。
アメリカかあ。その当時のアメリカは特にきっと家庭的な雰囲気も色濃く残りながら、いい時だったのでしょうね。
yspringmindさんが、いつかきっと願えばかなうでアメリカに行くかもう一度住めることを願っていますよ。
そう、願えばかなう。
あー、私も、海外に暮らしたい。ほんとに。私の場合、何歳になってもこれはいい続けてそうです。おばあさんになっても、いいのかわるいのか。
だめなのは分かっていても、広い世界につながりたーい。安心したいのです、世界は広い、考え方はいろいろあっていいのだと。
そして、それを発進していいのだと。ようは、すごーく議論したりしたい。議論する前に日常に追われながら人の目を気にして生きているのにほとほとつかれるのですよ。
議論というか、なんというか、考えが違う人がいて当たり前なのに、みんな一緒でないとという意味がさっぱりわからん女性の性格に私はようついていけない。みんなと違ったことをしたらおかしいみたいな、この空気は日本だけですか、世界でもあるのでしょうか。
すみせん、また、いいはな話を聞かせてくださいね。

2015/06/23 (Tue) 15:27 | つばめ #- | URL | 編集

ここ数日雨模様が続くらしいと・・・梅雨だから仕方ないと諦めてるものの矢張り雨の日はパットしませんね。
クセ毛が湿気に反応したりしてます(笑)

さて、トリュフ冷蔵庫に入ってるなんて☆とっ~ても優雅な気持ちにさせて貰えますね。
イタリアでは、季節の食べ物を食べれたら良いな~
例えば、白アスパラガスに卵トリュフをさっと削って頂いたり、ポルチーニのグリル焼き、栗の手打ちパスタ等など。。。一人妄想しながら夢を描いてます。

最近暑さのせいか、食いしん坊が低下中。お弁当は米よりパスタ。
ブロッコリーにカラスミパスタが気に入りです。

トリュフバター見つけたらゲットしてみます。

2015/06/26 (Fri) 07:50 | すみれ #GYxcADzc | URL | 編集
Re: タイトルなし

つばめさん、こんにちは。返事が遅くなってごめんなさい。
トリュフは思うに、キノコ類なんですよ。匂いは一瞬、何処かでガス漏れがあるのではないだろうか!と思わせるような匂いで、昔は大嫌いだったのですが、一度味わったら後に戻ることは出来ません。美味しいのです。ガス臭いと言っていたあの匂いが良い匂いに感じるのですから、呆れたものです。
私が知っているアメリカは80年代後半から90年代半ばまでですが、私が見た限りでは今のアメリカよりもう少しのんびりと豊かだったように思えます。日本やイタリアと同様、時代が進むにつれて様々な形に変化していきます。だから私が住んで居たあの町のあの界隈も、あの時と同じ空気が流れているなんてことはありえないでしょう。だから私は昔のことを夢見ているだけなのかもしれません。
といいながら、それでいて私はやはりいつかあの町に戻りたい。その気持ちだけは本当なようです。

2015/06/27 (Sat) 20:37 | yspringmind #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

すみれさん、こんにちは。こちらボローニャは今日から気が狂ったようにカンカン照り。夏。やっと夏が安定しそうです。
トリュフは順調に進んでいまして残りひとつとなりました。さあ、どのように調理するか。結構、真剣に考えています。季節の食べ物を食べるのが健康の秘密と言ったのは、私のアメリカの友達です。アメリカ人がそんなことを言うことに少し驚きを感じましたが、それを聞いた時、成程と感心したものです。
それで栗の手打ちパスタ、それはまだ食したことがありません。確か誰かにそのことを聞いたことがありますが、さて、一体何処の誰だったかしら。とても美味しいらしいけど。それにしたってカラスミのパスタだなんて豪華ではありませんか。カラスミ、そう言えばしばらく頂いていませんよ。何しろ高級品だものね。

2015/06/27 (Sat) 20:44 | yspringmind #- | URL | 編集

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